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山谷剛史の「中国IT小話」 第64回

中国が主張する「言論の自由」とは

2010年02月09日 12時00分更新

文● 山谷剛史

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Google 中国版のトップページ

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 先月Googleが「中国でこれ以上検閲を受け入れられない」と発表したことは、IT系メディアに限らず、ニュースでも取り上げられるほど大きな話題となった。正体不明の「中国当局」が謎の「検閲」をするというイメージを持つ読者もいることだろう。

 そうしたことから「暗黒大陸」と中国を揶揄する書き込みも見られる。一方で中国政府は「中国は言論の自由を保証している」とアピールするが、多くの日本人は「言ってることとやっていることが違うだろう」と疑問に感じるだろう。中国のいう「言論の自由」とはなにか。

 Googleの中国撤退の可能性について、検閲を理由として書く中国国内の報道はない。いや「なくなった」がより正しい。Googleが発表した直後は、勘ぐろうと思えば文中から勘ぐることのできた記事もあったが、それも中国国外メディアが「中国当局がこの件についての報道を控えるように命じた」という報道が流れたあたりから、パッタリととまった。検閲を表だって出したくないからという政府の意図があると推測できる。

 「検閲の実態を表に出したくはない」とはいえ、昨年のフィルタリングソフト「グリーンダム」の強制インストールにより、検閲の存在が政治に興味のないインターネット利用者にまで認知されてしまった。

 「2ちゃんねる」などの日本の掲示板では、政府や民主党に対するネガティブな書き込みに対して「友愛されちゃうよ」という書き込みが見られるが、一方で中国の掲示板では、グリーンダムの件以降、中国政府の目指す「和諧社会(調和のある社会)」から「和諧されちゃうよ」という書き込みをよく見るようになった。

 今回のGoogleの件においても、(中国においては)グレーゾーンの書き込みがあると、おそらく皮肉であろう「んなこと書くと和諧されるぞ」といった書き込みも目にとまる。

 グリーンダムはローカルなパソコンの上で動くフィルタリングソフトなので、NGワードのリストはソフトを構成するファイルにある。これらは一部の恐れ知らずの中国人ハッカーが解析し、NGワードやアクセスできないサイトを暴いてしまった。その具体的なNGワードについては解析のページで確認できる。

 そうしたNGワードが書き込まれたページはどうなるか。ブログはよほどしつこくない限りは、該当の記事が消されるのが一般的で、アカウントが消されることはない。ウェブメディアの記事であれば消去され(ただし百度などのキャッシュに残る)、掲示板はNGなコメントだけが消去される。

 各メディアは検閲スタッフを抱えていて、彼らが各メディア各サービスのコンテンツ管理を中国政府の方針に従って行なう。NGワードが含まれた海外のサイトに関しては、アクセス禁止という処置をする。

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