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価格競争にあえて挑んだ個人ショップの秘策とは? (2/2)

2009年12月04日 20時21分更新

文●三浦たまみ

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セット売りで客単価アップ、徹底したコスト削減策

 低価格戦略の後、片岡さんが少しでも客単価を上げるために考えたのが「3ペアなら1000円」というセット販売でした。

「当然、400円の単品よりも3ペア1000円を購入されるお客様がほとんどですから、セット売りは正解でしたね。セット売りにすると、その分、数をこなす必要がありますが、私は1日に最大200ペア作ることができるので、その点に関しては大きな不安はありませんでした」

 自身の手で企画やデザインすることについても、幼い頃から長い間作り続けているため、一定のデザインの“パターン”がすでにインプットされているという片岡さん。ゼロから何日も考えて生みの苦しみを味わうという感覚ではなく、スムーズにデザイン、制作ができているようです。

 仕入れに関しても当然、工夫しています。ピアスは核になるビーズ部分のほか、フック(ピアスの留め具部分)やビーズとフックをつなぐ金具などで構成されていますが、それぞれを別々の仕入れ先で大量購入することで、コストダウンを図っています。

「特にフックや金具などのパーツは、あらかじめ大量購入しておいても、使う機会が多いものですから無駄になりません。製造しているメーカーまで遡ってたどっていき、少しでも安く仕入れるように工夫しています。ビーズに関しては、人気のあるデザインや色はかなりバラつきがあるので、まずは小売店で購入して試し売りしてみて、お客様の反応がよかったパーツだけを、大量仕入れするようにしています」

 ただし安く販売するからといって、ピアスのデザインや品質に対して妥協はありません。

「うちのようなショップは、『安物買いで損した』と思われたら終わり。『安いけど、センスがあった!』『安いけど、上品に見える!』などのサプライズがあることが重要なんです」

 そのための工夫については、次回の連載で詳しくお伝えしましょう。


――ネットショップのエキスパートが斬る!――

株式会社ドリームエナジーコンサルティング代表の水上浩一さんに、「安さ」をポイントにショップ展開をしていく際のポイント、特に客単価をアップするためのコツについてお話を伺いました。



“松竹梅方式”で客単価アップを目指せ

 片岡さんが設定した「1ペア400円」という価格は、それがいかに安くて価値があるか、比較対象となる他の価格帯の商品も積極的に導入してアピールするのが効果的。なぜならユーザーは、「1ペア400円」という価格の妥当性、お得感を片岡さんのショップページからは認識しにくいからです。比較対象が存在しないため、良い商品が安く販売されているのか、それとも、もともと安い商品をそのままの価格で販売しているのかが分かりにくい。

 そこでオススメなのが、「松竹梅方式」と呼ばれる、3つの価格帯の商品ラインアップを用意する方法です。たとえば、3000円台と7000円台の2種類の価格帯のワインを用意しているお店があるとします。この場合、3000円台の方が購入されやすいのですが、ここに5000円台の価格帯のワインを加え3つの価格帯を用意すると、一番売れるのは5000円台のワインになる確率が高くなるのです。

 日本人の場合、特に「中間を取る」習性があるせいか、「竹」が売れる傾向が顕著のようですが、片岡さんのお店も、たとえば8000円台の商品があり、次いで3000円台の商品があり、そして1ペア400円・3ペア1000円のピアスのラインアップというように、価格帯を3段階に設定しておくと、中間の「竹」である3000円台の売れ行きがグンと伸びていき、同時に、400円という価格がいかにお得で価値があるのかはっきりと認識させることができます。

 こうして400円のお値打ち感を出すことができれば、最初は松竹梅の「竹」である3000円台の商品を購入した人が、次に購入するときは、最も価格帯の高い「松」の8000円の商品を友人のプレゼント用に購入するなど、リピーターの客単価アップは容易になります。一度お店のファンになった人は、そのお店にどんどん投資したい、すなわち、より高いものを買いたいという顧客心理が働いているんです。特に片岡さんはオリジナル商品を扱っているお店ですから、その傾向は顕著なはずです。仮に2800円の商品が売れるようになれば、現在の1ペア400円の7つ分です。経営的にもうんとラクになるのではないでしょうか。


水上 浩一株式会社ドリームエナジーコンサルティング代表取締役・戦略的eコマース導入コンサルタント。 1964年8月5日 東京生まれ、神奈川鎌倉育ち。オープン80日で月商1100万円等、ジャンルを問わず短期間で劇的なネットショップの売上アップ実績多数、大手企業から地域活性化まで「戦略的eコマース導入→成果」を得意とする他、複数のIT系上場企業にて人材育成研修を担当、CS向上と業績向上を実現。2005年3月よりオールアバウト「IT業界トレンドウォッチ」ガイドとして数多くの著名人、経営者にインタビューを行う他、テレビ・ラジオ・雑誌等各種メディアや全国各地での講演・セミナーなどで積極的に情報発信している。


協力:佐川フィナンシャル株式会社(http://www.sagawa-fin.co.jp/

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