レトロゲームファインで、ドット感のある映像を
さて、ゲーマーがプレイするゲームは、何もPS3やXbox 360というHD画質のゲーム機ばかりではない。WiiやPS2といったSD画質のゲーム機(最大でもD2端子でつないだ480p出力まで)で遊ぶ機会もあるだろう。そこでZ9000では「レトロゲームファイン」「ポータブルズーム」という2通りのモードを新開発した。
レトロゲームファインとは何か。これは、ズバリWiiのバーチャルコンソールをターゲットにしたモードだ。これは1970年代生まれの筆者としてもうれしい。小さいころ、ブラウン管画面に表示して遊んだファミコンのゲーム。それこそかじり付くようにプレイした。テレビに近付くとドットの見えるグラフィックスに熱中していた。
アナログのSD画質とはいえ、当時に比べれば映像は高精度になっている。しかし、大画面向けに滑らかにするのでは雰囲気が出ない。そこでドット感を残した映像を目指したのが、レトロゲームファインだ。
実際の成果は、写真を見ればすぐに分かる。画面撮影したWiiバーチャルコンソール『がんばれゴエモン!からくり道中』(コナミ)の画面を見れば分かる。画面全体はドット感そのまま。スケーリングレスのため斜め線もガタガタのまま。レトロゲームの質感を最新の大画面で再現とは、なかなか感慨深いものがある。
技術的なポイントは、スケーリングの際に映像を滑らかにするフィルタを外すことにある。ブラウン管とは異なり、固定画素のスケーリング処理は必ずボケる。このボケがドット感をなくしてしまうのだ。
WiiバーチャルコンソールのD2出力の信号は720×480ドット。縦横を単純に2倍ずつ拡大すれば1440×960ドットの信号となる。(1080ドットには若干足りないが)垂直方向については、同じ信号を2回ずつ書けばフィルターレスにできる。
一方、水平方向は単純に2倍にしてしまうと真円率が確保できない(720×480ドットを、16:9の横長に引き伸ばして表示するため)。そこで水平方向は、約2倍のオーバーサンプリングでスケーリング・レスとした。A/Dコンバーターのサンプリングクロックを調整することで、真円率100%が得られるからだ。
分かりやすく説明するならば縦方向はゲーム内の1ドット相当のものを単純に2ドットとして表示。水平方向はそう単純ではないが、スケーラーではなく内部の信号処理レベルで高画質してドット感を維持している。なお、PSPの画像は480×272ドット(ほぼ16:9のアスペクト比)なので、単純拡大でも真円率100%が得られる。「ポータブル」の設定を選ぶと左右振幅が切り替わり、PSPにも対応可能だ。
PSPの映像入力に特化した「ポータブルズーム」
ゲーム機特化の設定は他にもある。「ポータブルズーム」の設定だ。ポータブルズームはレトロゲームファインとは全く違った志向のゲーマー向けに開発した」(住吉氏)もの。簡単に言うと、D端子映像出力に対応したPSP(PSP-2000以降)のゲームを大画面で楽しむためのモードだ。だ。
「ポータブルズーム1」(画質も維持しつつ大画面)と「ポータブルズーム2」(とにかく画面いっぱいに)の2種類がある。
PSPの映像出力信号は480×272ドット。「ポータブルズーム1」はこれを縦横3倍に拡大して、1440×816ドットのdot by dot表示にする。水平方向には、3倍オーバーサンプリングを使用。垂直表示は、レトロゲームファインとは異なり、スケーラーを用いる。「垂直フィルターレスのライン3度振りにしようかと思い、検証もしました。ただ、実際の映像を見ると、このガタガタは許容できないなと判断してフィルターを入れました」(住吉氏)とあくまで実機の結果を見た画質調整が行われている。
「ポータブルズーム2」は、2倍オーバーサンプリングの2倍拡大で、縦横4倍表示にする。このとき問題となるのが、480×272ドットのうち、縦の2ドット。4倍に拡大すると1088ドットとなり、大画面にはなるもののフルHDのパネル(1920×1080ドット)では、8ドットぶんがはみ出してしまう。
このため「大画面に魅力はあるけど、文字欠けがいやだったら“1”、そんな事より大画面で感動したいなら“2”」(本村)と2種類の選択肢を用意したという。