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制作現場で活きるワークステーション

不毛地帯はこうして生まれた

2009年10月26日 09時00分更新

文● 遠竹智寿子

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ほんのわずかでも速いものを

 機種選定にあたっては「コストパフォーマンスを重視」するよりも、「今ある中で一番いいもの」「とにかく少しでも“スピード”が出るもの」を最優先にしたという。

 人間がどんなに作業をがんばっても、レンダリングの部分は機械ががんばってくれないとダメだ。

遠山 「ほんのわずかでも速くなれば、それに越したことはないというリクエストを出した」

導入するシステムを検討した新井氏、中山氏、遠山氏

 また、ブレード選定の理由については以下のように話す。

遠山 「システム室がもうかなり手狭になってきていて、置き場所がない中で台数を揃えたかった。また、ブレーカーの容量も上限まできてしまうという問題もあった。設置スペースと電源容量の問題から、ブレードワークステーションを選びました」

CG制作を担当した川上将史氏と山田健介氏

 一方山田氏・川上氏らCG制作チームでは「グローバル・イルミネーションなどの技術を使わず、テクスチャーそのものに陰影を仕込んでしまおうと考えていた」という。

 リアルな表現が可能になる代わりにテクスチャー枚数が莫大になり、使用メモリーが厳しくなる。1枚あたりのポリゴンも相当な数となるため、制作作業時にもレンダリング処理時にもパワーが必要だった。そこで今回の選定には「64bitOSと8GBのモデルを選択した」とのことだ。

山田 「従来のマシンでは、レンダリング自体ができませんでした。データ量が圧倒的に違うので、前回の32bitベースのマシンではデータを開けないことなどもあったのです」

遠山 「そこで今回は、64bit/8GBメモリーのマシンにトライしてみました」

山田 「最大のデータで窓外の街並みの絵が524万ポリゴンは、今回のマシンだからできたことです」

 街並み部分のCG制作では「スキャンライン」という形式でレンダリングしているが、現環境でのシーン1枚あたりのレンダリング作業は5~10分とのことだ。

 また川上氏も「システムやPCの性能は、作業効率にかなり影響がある」と話す。MAYAで作成した1400万ポリゴンのシーンは、Z800になって実質10倍速くレンダリングが終了した。

 当然信頼性も求められる。新井氏は「何も問題もなく最後のオンエアを迎えるまでは、システム運用も含めて緊張は続きます。制作時間も、ドラマの回を追うごとに厳しくなってくるので、半年終わるまでは気が抜けない。ブルースクリーンを出すわけにはいかないですから(笑)」とコメントした。

冨士川 「難しいCGが絡むシーンは先に撮影したいとリクエストを上げています。とはいえ役者さんのスケジュールなどもあり、都合良くはいかない。マシンが以前よりずっと速くなったと言っても、オンエアまでの緊迫感は変わりません。我々もプロだから、そこはやるしかないと考えています」

 結果は「どれくらい多くの方に番組を観てもらえるのか」。それがすべてだ。番組の中では「目立たないこと」、そして「最終回を乗り切った時点まで、無事故でいられれば成功だ」と話す。

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