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制作現場で活きるワークステーション

不毛地帯はこうして生まれた

2009年10月26日 09時00分更新

文● 遠竹智寿子

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戦闘機1台だけは本物を用意してほしい──

 役者たちの撮影がクランクインしたのは7月初旬だが、冨士川氏からは「それまでに予想できるCG制作物をすべて用意してほしい」というリクエストがあった。

 4月の時点で、CGチームはリサーチを開始し、背景や細かいパーツの制作に取り掛かかり始めた。

 「小説に出てくる時代背景やシーンを想定した“街並み”や“当時の乗り物”など。これらの制作を進めるにあたって、資料探しから始めました。とにかくたくさん調べましたね」と語るのは、CGデザイナーの山田健介氏と川上将史氏。二人は当時を知らない世代だが、国会図書館や地方の資料館・展示館などを訪れてリサーチを続けたという。

 パーツは30種の建築物とそれぞれの昼/夜用、遠/近(ハイポリ)用を用意した。当時の乗り物として乗用車10台、バス2台、都電3台、トラック2台、ミゼット(オート三輪)など、約20種もCGで再現している。愛知のトヨタ博物館、石川の日本自動車博物館の協力を得て、実際の乗り物をリサーチするだけではなく、CGに使用するテクスチャ撮影も実施した。

MAYAを使用した制作風景。画面は「飛行機工場」を制作している

 制作を担当したメンバーに「敢えてCG制作での思い入れのあるシーンを上げるとしたら?」とお聞きした。

 その答えは「ストーリーの展開のカギになる戦闘機“F-104”が登場するシーン」だった。

 物語に登場するのは、あくまでもF-104の試作機だ。手を尽くして資料があると分かっても極秘情報で参照できなかったり、写真が見つかっても白黒だったりと、かなりの苦労があったようだ。

 第1話では、F-104戦闘機がずらりと並ぶ工場のシーンが登場した。その場面の制作にあたっては、主人公が戦闘機に近づいて触るシーンがあるため、どうしても1台は本物がないと成立しないと判断したという。そこで「実機を1台だけは欲しい」「1台あればそれを100台にはするから」と無理を言って用意してもらった、と冨士川氏は話す。

F-104戦闘機の制作風景

 そのために条件に合う戦闘機を探し出し、雨ざらしの状態だった本体の塗装許可ももらって補修した。このF-104戦闘機の3D制作には、スクラッチからモデリング、レンダリングまで1ヵ月の期間をかけた。しかし、その努力が視聴者にあからさまに伝わっては困る。

 「苦労を見せないで、自然にシーンになじませることが重要」と冨士川氏は語る。

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