P2Pによるアダルトビデオの普及
「90年代末~21世紀初頭がA片の絶頂期だった」。中国で人気の日本製アダルトビデオ(AV。中国の隠語でA片)、その海賊版販売業者は語る。「だが、2007年前後からの政府の取り締まりと、ネットの普及で私たち業者は奈落の底に落とされた」。代わりに台頭したのが、「BitTorrent」をはじめとしたP2Pソフトの台頭である。今や3億人超が利用するネット回線のほとんどがブロードバンドだ。
CNNIC(China Internet Network Information Center)が今年3月に発表した「2008~2009年中国青少年ネット行為研究報告(2008-2009年中国青少年上網行為研究報告)(関連サイト)」によれば、2008年末時点で2億9800万人のインターネット利用者のうち、全体の55.9%にあたる1億6700万人が6歳~24歳以下の利用者である。
さらに細分化すると、6~11歳の小学生世代が4.7%、12~18歳の中学生高校生世代が50.9%、19~24歳の大学生大学院生フレッシュマン世代が44.4%となっている。「12歳から利用者が急増」は、前回紹介した初めてのアダルトビデオ視聴の年齢とリンクする。
中国人の初アダルトビデオは中学生か高校生か。これ以上は統計データがないが、どうやら調べていくと高校生デビューが多いようだ。後付けとして理由を考えるに、中学校までは学校の宿題が多く、とにかく忙しいため、テレビを見るなどの娯楽にすらあまり時間を割けないこと、また高校生になってパソコンを買ってもらう家庭が一般的であることなどが挙げられる。高校生になってパソコンを持つと、中国人中高年層はパソコンをそもそも使わないことから両親は使わず、友達からの口コミでアダルトビデオの入手方法(ダウンロード方法)を知るというのが、(都市部における)一般的なアダルトビデオデビューである。
「アダルトビデオのダウンロードで感じる日中の経済差」というニュースメディアへの投稿があった。なんだか難しそうな話だが、ごく短くまとめれば「日本の動画サイトは数メガbpsでストリーミング配信をしていて驚いた。中国の回線速度ではあり得ない。日本はなんと発展していることか!」なる内容であった。
中国では公にはアダルトビデオの動画ファイルを持ったり配信したりすること自体が違法なので、「優酷網」(Youku)などの人気動画共有サイトでも掲載されていない。P2Pでひっそりとユーザー同士で共有するというのが、イマドキの中国人のアダルトビデオ入手方法だ。
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