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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第15回

老舗ATI、R100コアで羽ばたき、RADEON 9700で飛躍

2009年08月24日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/)

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R100~RV 360までのATI GPUロードマップ

R100~RV 360までのATI GPUロードマップ

DirectX 9対応「R300」で
大きな飛躍を達成

RADEON 9700

RADEON 9700

 その後R200は「RADEON 9100」という名称に切り替わる。メインストリーム向けGPUが9000番台をつけているのに、ハイエンド向けが8000番台では辻褄が合わないからだと思われる。ただこの改称が行なわれる前の2002年6月に、「R300」コアの「RADEON 9700」が登場したため、RADEON 9100のポジションは非常に微妙な事になった。スペック的にはR300コアベースのRADEON 9500と同等以下の性能で、消費電力はそれなりに高く、コストも高止まりとあっては、そう売れるはずもないのは明白で、発売はされたものの、あまり広く普及することなくひっそりと消えている。

 R300コアのRADEON 9700シリーズは、性能も競合製品である「GeForce FX 5800」を上回り、消費電力も低く、カードの厚さも1スロット分。お値段も相対的に安いとあって、爆発的に売れた。NVIDIAはあわててハイエンドの「GeForce FX 5900 Ultra」を投入する事でこれに対抗したが、ATIもR350を投入してこれに対抗といった感じで、このあたりでは両社の性能はほぼ互角と言ってよかった。

 R300は引き続き台湾TSMC社の150nmプロセスを使いながら、パイプラインを倍増。メモリーバス幅も倍増して、性能をR200のきっちり2倍まで引っ張り上げたうえに、シェーダーをDirectX 9対応に仕上げてきた。

 R300を搭載したRADEON 9700シリーズとほぼ同時期に登場したのが「RADEON 9500」だ。こちらはR300コアをそのまま使いながら、シェーダーとメモリーバス幅を制限することでメインストリーム向けとした製品である。当時ATIはR300の改良に専念しており、R300のバリュー向けとされていた「RV300」はスキップされてしまった。そのため、間を埋めるべくR300コアを流用してRADEON 9500が投入された形だ。

「RADEON 9500」搭載カードの例

「RADEON 9500」搭載カードの例

 一方で、バリュー向けは引き続きRADEON 9200シリーズが発売されていた。バリュー向けにもDirectX 9をインプリメントする必要性はこの時期薄かったから、これは正しい判断だったといえる。


改良版コアのメインストリーム向け「RV350」が
RADEON 9600シリーズで広く採用

「RADEON 9800 Pro」搭載カードの例

RADEON 9800シリーズのバリエーションのひとつ、「RADEON 9800 Pro」搭載カードの例

 R300コアに続き、2003年3月には「R350」コアが、「RADEON 9800」シリーズとしてハイエンド向けに投入される。基本的な内部構造はR300と同じで、プロセスも引き続きTSMCの150nmを使うが、内部回路の見直しでノイズを減らして高速動作を可能にしたほか、いくつかの機能強化が施され、性能が若干引きあがった。

 このR350コアをベースにパイプラインを半減させ、かつTSMCの130nmプロセスを使ったのが「RV350」。こちらはメインストリーム向けの「RADEON 9550/9600」シリーズとして発売された。メインストリーム向けということで動作周波数やメモリーのバリエーションはかなり豊富で、例えばRADEON 9600だけでもこれだけのバリエーションがある。

  • RADEON 9600
  • RADEON 9600 Pro
  • RADEON 9600 SE
  • RADEON 9600 Pro EZ
  • AIW 9600
  • AIW 9600 Pro
「RADEON 9600」搭載カードの例

「RADEON 9600」搭載カードの例

 ほかにも、やや動作周波数を抑えたRADEON 9550シリーズや、CG制作向けの「FireGL T2」なども、同じRV350を使っている。そのうえ、カードベンダーが独自にオーバークロックしたり、逆に“クロックダウンでファンレス”した製品を投入したため、全体を網羅する気をなくすほど製品種類は多い。

 このRV350コアが、R300コアベースのRADEON 9500を置き換える形でメインストリームで広く利用される。さらに2003年12月には、このRV350をTSMCの130nm Low-Kプロセスで作り直した「RV360」が登場、こちらは「RADEON 9600 XT」として発売される。これは恐らく、TSMCの同プロセスの評価も兼ねて製造されたのだと思うが、動作周波数はRV350より上がったものの、劇的な向上とは言いにくかったようだ。こののち、同プロセスはRV380でもう一度使われるものの、そこで打ち止めとなっているあたり、思ったほどの効果は無かった(それよりプロセスを微細化したほうが早い)と思われる。

 RV350コアはこのあとも使われてゆくのだが、その話題はまた次回に。

今回のまとめ

・1985年創業のATIは、1990年代は性能面で苦戦するも、テレビチューナーや動画再生支援といった独自色で健闘する。

・2000年登場の「R100」コアでDirectX 7に対応。チップセット内蔵型やモバイル向けなど、バリエーションも豊富に展開。

・続くDirectX 8世代の「R200」コア世代は、メインストリーム向けに性能・機能面で優れた「RV250/280」をリリースして成功を収める。

・DirectX 9世代の「R300」は、NVIDIAの競合製品より性能、消費電力ともに優れて大ヒットとなった。

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