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【ジャパンエキスポ 2009 #02】日本アニメのDVD販売会社ディレクターインタビュー

違法ダウンロードユーザー遮断法とフランスのアニメDVD事情

2009年07月23日 06時00分更新

文● 聞き手=遠藤 諭、取材協力=エチエンヌ・バラール(Etienne Barral / SYSTEM B www.system-b.com)

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ファンサブがなくならない限り
有料ストリーミングは厳しい

―― 広告モデルで回りそうですか?

レヴィ 『鋼の錬金術師』みたいに人気のあるシリーズは、広告の可能性はありますが、アニメのイメージにピッタリの広告がつかないといけませんよね。しかし、これはやるしかないと思っています。問題は、そこまでの人気がないシリーズで、そこで得られるPPM(サイトが見られた件数に応じた支払い方式=Pay Per Impressionで1000件単位の支払い)収入は、DVD販売とは全然違うものになってしまう可能性があります。

―― 有料モデルの可能性はないのですか?

レヴィ もちろん検討中ですが、まだきちんとしたビジネスモデルを組めていないのが実情です。違法なファンサブが完全になくならない限り、有料モデルには無理があるのではないでしょうか。いくら合法的にストリーミングをやっても、お客さんは無料のほうがいいでしょう。それを絶滅しない限り、有料モデルは成立しないと思います。

―― ファンサブを作っている人は、実際には非常に限られた数の人たちだといわれています。そのあたりに、ビジネスを成立させるヒントがあるのではないですか?

ドラゴンボールのコスプレイヤー

会場には、日本アニメのコスプレをした来場者も多数。

レヴィ いろいろな方法はあると思いますが、問題は、やはりユーザー側の意識が薄いことなんですよ。1日に20ユーロでダウンロードし放題などのサービスも可能ですが、儲かるのはプロバイダーなどパイプ側だけですよね。

―― フランスでは5月に、ネットで違法コピーをした人を処罰する法律が通りました。あれは、どのように影響してくるのでしょう。

レヴィ ハドピ」(Hadopi※2)と呼ばれているものですね。

―― 違反者はネットへのアクセスができなくなるという点で、行き過ぎという指摘もあります。

レヴィ われわれのビジネスという観点からいえば、Hadopiはよい法律だということになります。

―― たしかに、米国では個人に対して訴訟が起こされることで、コピーが減ったという経緯があります。その結果、映像や音楽配信のビジネスが成立するようになったという見方もある。そういう点では、こうした法律は必要であるということでしょうか?

レヴィ 今回の法律は、まだ最初の試みというべきですよね。もちろん期待していますが、最終的にはどうなるか見えない部分があります。それは、これからの動きで判断するしかない。何からの規制をやっておかないと、いまのビジネスモデルは続きません。いまのままでは、映画館はなんとか営業を続けられるでしょうが、DVDの販売やテレビの有料放送は、インターネットによって商売にならなくなるでしょう。



※2 Hadopi:違法ダウンロードを取り締まるフランスの法律「Projet de loi favorisant la diffusion et la protection de la creation sur Internet」の俗称。警告を2回受けたにもかかわらず、さらに違法ダウンロードを行ったユーザーのネットアクセスを遮断することから、「スリーストライク」法とも呼ばれる。サルコジ大統領肝いりの法案で、5月に可決されたが、ネットアクセスはもはや基本的な権利であるとして議論を呼んでいた。6月には、仏憲法評議会がネット遮断に関する部分を認めない判断を出し、6月下旬から国民議会で審議が始まっている。


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