AIRは、「リッチインターネットアプリケーション」(Rich Internet Application:以下、RIA)をデスクトップアプリケーションとして実行する環境です。RIAという言葉の意味と合わせて、この概念を理解しましょう。
RIAとデスクトップアプリケーションを理解する
RIAは、統合前の旧マクロメディアが2002年に提唱した概念で、現在ではFlashに代表されるGUIベースの高度なユーザー体験をもたらすインターネットアプリケーションを意味します。
一般的な特徴として、RIAはWebアプリケーションであるため、Webブラウザー上で実行されます。そのため、通常Webサーバーに接続してコンテンツをダウンロード/アップロードします。したがって、RIAコンテンツを実行する場合、Internet Explorer(IE)やFireFox、SafariなどのWebブラウザーが使用されます(ただし、インフラによってはブラウザー不要の実行形態をサポートするものもあります)。
RIAの特徴をまとめると、次のような機能を持つアプリケーションということになります。
- HTMLベースではなく、Flashコンテンツと同様のGUIベースである
- ページ更新を行なうためにWebサーバーにアクセスしなくてもよい
- サーバーからデータを取得する場合、必要なデータのみを取得でき、ページ全体を更新する必要がない
つまり、RIAとは「GUIベースの美しいレイアウトによる、ユーザフレンドリーかつ高機能、高パフォーマンスなWebアプリケーション」です。技術的には次のような定義になります。
- GUIによる高い操作性や視認性(リッチなユーザーインタフェースと表現力を提供)
- クライアントマシンで多くの処理を行なうので、サーバーの負荷が軽い
- ネットワークの負荷が軽い
ちなみに、RIAのようにクライアント側で多くの処理を行なう形態を「Fat Client」、逆にサーバー側で多くの処理を行なう形態を「Thin Client」と呼びます。Fat Clientが発展してきた背景には、パソコンの基本性能が大きく向上したことが挙げられます。
デスクトップRIA――AIRの場合
AIRの定義2.は、「リッチインターネットアプリケーション(RIA)をデスクトップアプリケーションとして実行させることができる」ということでした。ここで「デスクトップアプリケーション」とあえて宣言するのは、「ブラウザー上で実行しない」という意味です。AIRの場合はRIAでもあり、同時に「デスクトップアプリケーション」でもあります。これは、AIRが次のような特徴を持つことを指します。
- デフォルトでWebサーバーにアクセスする機能を持つインターネットアプリケーションである
- 実行にWebブラウザーは必要なく、OSにインストールされたアプリケーションとして動作する
実際には、AIRアプリケーションには上記の基本機能だけでなく、その他の多くの優れた機能を持たせることができます。本連載の後半ではそれらの一部もご紹介いたします。