松下電器産業
オープンプライス(実売価格:2万円前後)
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国内で最初に登場したPLCアダプター、松下電器産業の「BL-PA100KT」 |
家屋内の電力線に高周波信号を流して通信を行なう“高速PLC(Power Line Communication)”が、2006年10月に解禁された。この仕組みを使う第1号製品が、松下電器産業(株)のPLCアダプター『BL-PA100KT』だ。このアダプターを家屋内の壁や廊下にあるコンセントに差し込むと、電気の配線がネットワーク配線に変身する。その動作原理と使用感について紹介しよう。
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アダプターの裏には総務省による形式指定を受けた証である指定番号がある。 |
電気配線がネットワークになる
高速PLCっていったいなんだ?
まずPLCについて簡単に触れておこう。PLC(電力線通信)とは、家屋や建物に引き込んで照明や冷暖房・電気機器、コンセントに電気を供給している電力線に、ネットワーク信号を流して通信を行なうものだ。従来から周波数の低い(10kHz~450kHz)信号を流して、通信速度9600bps程度の低速PLCを行なうことはあった。これに対して高速PLCでは、2MHz~30MHzという高周波信号を用い、最高200Mbps程度(※1)の高速通信が可能になっている。
※1 理由は後述するが、実効データ転送速度はそこまで速くない。
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ネットワーク信号を2M~30MHzの高周波信号にし、電力線(50/60Hz)の波形と合成して流す。PLCモデムが信号の合成と分離を行なう。 |
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配線がつながっているすべての電力線にPLCの信号が流れるため、無線LANの電波が届きにくい場所でも、情報機器や家電の宅内ネットワークを容易に構築できる。引き込み線から電柱のトランスまでは流れるため、集合住宅などでの利用は注意が必要。 |
高速PLCでネットワークを構築するには、専用のPLCモデムが2台以上必要になる。PLCモデムは親機と呼ばれる“マスターアダプター”と子機側になる“ターミナルアダプター”で構成され、1台の親機に複数の子機(最大15台)を登録・接続できる。今回紹介するBL-PA100KTは2台のPLCモデム『BL-PA100』をセットにした製品で、あらかじめ1台が“親機モード”、もう1台が“子機モード”になるよう、出荷時に設定されている。ただし親機も子機も機能的にはまったく同じで、PLCモデム背面のスイッチで親機/子機の動作モードを切り替えられるようになっている。
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製品を構成する2台。マスター側は上部に“MASTER”シールが貼ってあるが、機能的には同じ。 |
箱を開けて驚いたのが、PLCモデムのサイズ。広報写真を見ても大きさがなかなか把握できず、利用時に邪魔になるのではと考えていたが、実物を手にすると意外とコンパクトにまとまっている。これなら例えば普段から鞄などに入れておき、急にネットワーク環境が必要になったときなどに取り出して使っても重宝するだろう。なお現時点では、PLCモデムの使用は、屋内配線のみに限定されている。
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前面(左)と背面。前面に3つのインジケータランプ、背面に電源コネクタとLANポート、MASTER/TERMINAL切り替えスイッチと、設定初期化ボタンがある。 | | 上面(上)と下面。上面には自動設定、自己診断を行なうSETUPボタンがある。 |
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ノートPCの横に置いてみた。コンパクトカメラ程度の大きさで余計な凹凸もないので邪魔にならない。 |
BL-100KTの主なスペック |
製品名 |
BL-PA100KTスタートパック |
通信方式 |
HD-PLC方式 |
利用周波数 |
4M~28MHz |
変調方式 |
Wavelet OFDM |
通信速度 |
最大190Mbps(物理層) |
実効速度 |
最大80Mbps(UDP)、最大55Mbps(TCP) |
暗号化方式 |
128bit AES暗号化 |
通信距離 |
最大150m(電力線の長さ) |
LANポート |
10/100BASE-TX×1(Auto MDI/MDI-X対応) |
接続仕様 |
1台のマスターに、ターミナルを15台まで接続可 |
本体サイズ(W×D×H) |
121×40×70mm |
重量 |
約240g |