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【IDF Japan 2006 Vol.2】“Viiv”の利点をアピールした“デジタルホーム”基調講演――変形合体ノートパソコン“Montevallo”も日本初公開

2006年04月07日 21時29分更新

文● 編集部 小西利明

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米インテル モビリティー事業本部副社長兼チップセット事業部長のリチャード・マリノウスキー氏
米インテル モビリティー事業本部副社長兼チップセット事業部長のリチャード・マリノウスキー氏

米インテル モビリティー事業本部副社長兼チップセット事業部長のリチャード・マリノウスキー(Richard Malinowski)氏による基調講演は、タイトルもずばり“モビリティー”で、ノートパソコンや携帯端末など、インテルが関わっているさまざまなモバイルプラットフォームについての最新情報が語られた。

マリノウスキー氏はまず、ここ1年ほどのインターネットのトレンドについて触れたうえで、ビデオダウンロードの普及やRSS、Ajaxなど最新技術の登場により、インターネットのパーソナル化が進んでいるとの見解を示した。しかしマリノウスキー氏はブロードバンド接続はまだ世界的に普及はしておらず、さらにインターネット自体がモバイル環境に適応していないと問題を提起した。そしてインターネットの真のパーソナル化を実現するインテルの取り組みが、3月に発表された“Ultra Mobile PC(UMPC)”やノートパソコン、無線データ通信のWi-Fi/WiMAXであるとして、この3つのキーテクノロジーについてそれぞれ、同社の最新の取り組みについて語った。

まずマリノウスキー氏はインテル製CPUを搭載するW-ZERO3を使い、自宅のパソコンからゴルフのマスターズ選手権の放送を転送して視聴するデモを披露し、次世代のスマートフォン向けプラットフォーム“Monahans(モナハンズ)”を紹介した。Monahansはすでにメーカー向けのサンプル出荷を開始しているという。CPUにはXScaleコアを採用し、「消費電力当たりのパフォーマンスを上げる」として、“ワイヤレス Intel SpeedStep II with Music Max”“インテル VideoMaxテクノロジー”“インテル ワイヤレスMMX IIテクノロジー”などメディアアクセラレーションに効果のある技術を導入する。これにより既存のXScaleアーキテクチャーのCPUと比べて、MP3再生では80%の消費電力で実現するほか、H.264デコードも低消費電力で実行可能であると述べた。

次世代の携帯端末向けプラットフォーム“Monahans”に搭載される技術。低消費電力でのビデオやオーディオ再生能力を重視している Monahansと現在のXScaleアーキテクチャーCPUの消費電力を比較したグラフ。MP3再生時間は倍、ビデオデコードも大幅に低消費電力で実現可能という
次世代の携帯端末向けプラットフォーム“Monahans”に搭載される技術。低消費電力でのビデオやオーディオ再生能力を重視しているMonahansと現在のXScaleアーキテクチャーCPUの消費電力を比較したグラフ。MP3再生時間は倍、ビデオデコードも大幅に低消費電力で実現可能という

UMPCについては簡単に紹介するに留め、マリノウスキー氏はMeromなどで採用されるCoreマイクロアーキテクチャーの特徴と、2007年登場予定のプラットフォーム“Santa Rosa(サンタロサ)”についての説明を行なった。すでにCore Duoプロセッサーで導入された統合2次キャッシュ“スマートキャッシュ”、動作状態に応じてバスへの電力供給のオン/オフを切り替える“インテリジェント・パワー・ケイパビリティー”。1サイクル当たりの命令数を増加したり、μOpsへの変換効率を向上する“ワイド・ダイナミック・エグゼキューション”などが簡単に説明された。そして2006年後半に登場するノート向けCPUのMeromは、現行のノート向けプラットフォーム“Napa(ナパ)”をベースにした“Napaリフレッシュ”を採用すること、そして2007年にはより進化した新プラットフォームであるSanta Rosaが登場すると述べた。

Pentium M世代から現在のNapa、Napaリフレッシュを経てSanta Rosaへと至るロードマップ デモを披露したSanta Rosaの試作ボード。巨大なボードとCPUファンが付いているが、あくまでデモ用の試作品
Pentium M世代から現在のNapa、Napaリフレッシュを経てSanta Rosaへと至るロードマップデモを披露したSanta Rosaの試作ボード。巨大なボードとCPUファンが付いているが、あくまでデモ用の試作品

Santa Rosaでは、新しいCPUに加えて“第4世代”のグラフィックス機能(チップセットはCrestline:クレストライン)、IEEE 802.11nとMIMO(Multiple Input/Multiple Output)をサポートする無線LAN(Kedron:ケドロン)、そしてインテルのNAND型フラッシュメモリーを使った新しい技術“Robson(ロブソン)”が導入されるという。マリノウスキー氏は「誇りを持って紹介する」と述べて、Santa Rosa試作ボードによるデモの数々を披露した。またSanta Rosaでは東芝松下ディスプレイテクノロジー(株)が開発した液晶ディスプレーの低消費電力化技術“D2PO”も採用されるという。D2POは液晶ディスプレーの表示状態に応じて、動きの少ない映像表示時はインターレース表示に切り替えることで、低消費電力化を実現するという。

Santa Rosaで採用される新無線LANモジュール“Kedron”。新たにIEEE 802.11nをサポートする D2POのデモと説明。表示状態に応じて動的にノンインターレースとインターレース表示を切り替えることで、表示品質を損なわずに消費電力を減らす
Santa Rosaで採用される新無線LANモジュール“Kedron”。新たにIEEE 802.11nをサポートするD2POのデモと説明。表示状態に応じて動的にノンインターレースとインターレース表示を切り替えることで、表示品質を損なわずに消費電力を減らす

Robsonのデモでは、フラッシュメモリーを載せたRobsonモジュールを搭載する試作機と、一般的なノートパソコンを使い、Windowsやアプリケーションの起動時間比較を行なった。Robsonはフラッシュメモリーをある種のディスクキャッシュ的に扱うことで、低速なHDDからの読み込みを抑制して高速化を行なううえ、消費電力の低減にもつながる技術という。これらの技術を複合したノートパソコンにより、2008年には1回の充電で8時間のバッテリー駆動が可能なノートパソコンが実現されるとしている。

Robsonのイメージ図。Crestlineチップセットと協調して動作するフラッシュメモリーモジュールが、具体的な仕組みについては述べられなかった Robson搭載ノートでは、利用頻度の高いアプリケーションをキャッシュして、高速起動させることも可能になる。Robson搭載ノートは3.3秒でアプリケーション起動したところを、非搭載機では16.3秒かかっていた
Robsonのイメージ図。Crestlineチップセットと協調して動作するフラッシュメモリーモジュールが、具体的な仕組みについては述べられなかったRobson搭載ノートでは、利用頻度の高いアプリケーションをキャッシュして、高速起動させることも可能になる。Robson搭載ノートは3.3秒でアプリケーション起動したところを、非搭載機では16.3秒かかっていた

3つめのキーであるWiMAXについては、インテル製のモジュールを使ったIEEE 802.16-2004対応機器がすでに多数登場していると述べたうえで、WiMAXの本番と言えるエンドユーザー向けの2~2.5GHz帯を使うモバイルWiMAXカードが、2006年後半には登場するとした。PCカード風のモバイルWiMAXカードを披露したマリノウスキー氏は、インテルが1円玉の半分より小さい“WiFi/WiMAXマルチバンドRF IC”を開発していることを発表した。これを使うとWi-Fiの拡張であるIEEE 802.11nと移動体通信に適したWiMAXを1つのモジュールで対応可能になり、冒頭で挙げられた「インターネットはモバイルに適応していない」という問題の解決に大きく貢献すると期待される。場合によってはCentrinoモバイル・テクノロジ登場時以上のインパクトを与えそうだ。

マリノウスキー氏はPCカードタイプのWiMAXカードを披露。カードスロット外の露出部分はけっこう大きい 開発中の“WiFI/WiMAX RF IC”では、IEEE 802.11nとWiMAXの通信機能を小さなモジュールで実現する
マリノウスキー氏はPCカードタイプのWiMAXカードを披露。カードスロット外の露出部分はけっこう大きい開発中の“WiFI/WiMAX RF IC”では、IEEE 802.11nとWiMAXの通信機能を小さなモジュールで実現する

最後にマリノウスキー氏は、米国で開催されたIDF Spring 2006で披露された、2006年版のコンセプトノートパソコン“Montevallo(モンテヴァロ)”を披露した。Montevalloは14インチ液晶ディスプレー搭載タイプと12インチ液晶ディスプレー搭載タイプがあり、いずれも液晶ディスプレー部分が本体から動けるようにすることで、従来にない本体とディスプレーの配置や、使い方が可能になるとの提案を行なうものである。Montevalloをどこかが商品化するかどうかは分からないが、ディスプレーと本体がヒンジでつながった当たり前のノートとは違った魅力があり、製品に応用するメーカーの登場を期待したいものだった。

14インチ液晶ディスプレー搭載の“Montevalle 14”。こう見ると一見ただのノートパソコンだが…… 液晶ディスプレーと本体は、このようなスライド機構で接続されていて、ディスプレー部が前後にスライドして動くのだ!
14インチ液晶ディスプレー搭載の“Montevalle 14”。こう見ると一見ただのノートパソコンだが……液晶ディスプレーと本体は、このようなスライド機構で接続されていて、ディスプレー部が前後にスライドして動くのだ!
ディスプレー部をキーボード上に寝かせて、スピーカー搭載のドックに差し込むと、タッチパネル付き液晶一体型パソコンに早変わり!
ディスプレー部をキーボード上に寝かせて、スピーカー搭載のドックに差し込むと、タッチパネル付き液晶一体型パソコンに早変わり!
こちらはよりモビリティーを重視した“Montevall 12”のモックアップ。液晶ディスプレーは幅の狭いアーム状のヒンジに接続されていて、上下に向きを変えられる 通常のノート風、ディスプレーを浮かせて狭い座席でも使える“エアラインシート”モード、ディスプレーを手前に持ってきた“プレゼンテーション”モードに変形できる。ディスプレーはもちろんタッチパネル
こちらはよりモビリティーを重視した“Montevall 12”のモックアップ。液晶ディスプレーは幅の狭いアーム状のヒンジに接続されていて、上下に向きを変えられる通常のノート風、ディスプレーを浮かせて狭い座席でも使える“エアラインシート”モード、ディスプレーを手前に持ってきた“プレゼンテーション”モードに変形できる。ディスプレーはもちろんタッチパネル

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