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【WPC TOKYOレポート Vol.5】“ノートでパソコンは真にパーソナルに”――ノートパソコンの拓く未来を語ったインテル基調講演

2006年10月18日 20時04分更新

文● 編集部 小西利明

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講演にて日本メーカーの薄型軽量なノートパソコンを称賛する、米インテル 副社長兼モバイル・プラットフォーム事業部長のムーリー・エデン氏
講演にて日本メーカーの薄型軽量なノートパソコンを称賛する、米インテル 副社長兼モバイル・プラットフォーム事業部長のムーリー・エデン氏

“WPC TOKYO 2006”の初日である18日には、米インテル社副社長兼モバイル・プラットフォーム事業部長のムーリー・エデン(Mooly Eden)氏による基調講演が行なわれた。“デュアルコア、マルチコアが創り出す新世代コンピューティングと新しいライフスタイル”と題された講演では、パソコンのユーセージモデルや技術の変革と、インテルの新しい技術についてのさまざまな話題が語られた。

エデン氏はCore 2 Duoに採用されたCoreマイクロ・アーキテクチャーやPentium Mなど、同社のモバイル系CPUの開発を担当したイスラエルチームを率いていた人物。ユーモアと各種のデモを交えた講演はノートパソコンを軸とした話題が多く、冒頭もノートパソコンの隆盛についての話題から始まった。エデン氏はCentrinoモバイル・テクノロジーの登場以降、元々ノートの割合の高い日本だけでなく世界的にノートの割合が急拡大したと調査会社のレポートを挙げながら示した。そしてノートの拡大がもたらす意味を、据え置き電話が携帯電話に切り替わることでパーソナルな道具となった例に挙げて、パソコンも真の意味で“パーソナルなものとなること(personalization)”だと述べた。「ノートパソコンは“自分のコンピューター”である。“自分のライフスタイル”であり“自分のカラー”であり、“自分のスクリーン”である。自分のウェブポータル、写真、動画。まさに“パーソナルノートブック”こそがパソコンだ」(エデン氏)。

日本および世界でのノートパソコン市場の変化を予測したグラフ。アメリカや欧州で急拡大しているのが分かる
日本および世界でのノートパソコン市場の変化を予測したグラフ。アメリカや欧州で急拡大しているのが分かる

またパソコンのパーソナル化によってユーセージモデルも変わってきているが、それをより楽しくするものがCore 2 DuoのようなデュアルコアCPUであるとした。エデン氏はデュアルコアCPUの利点を“人の脳と同じ”並列性にあるとした。その例としてCore 2 DuoベースのシステムとCeleronベースのシステムとで、HD品質のビデオ再生を行ないながらビデオトランスコードとファイル圧縮を同時に行なうデモを披露。Core 2 Duoが圧倒的に速い処理性能を持つことを示した。

Core 2 Duo対Celeronのデモの様子。Core 2 Duo側はなめらかなビデオ再生をしながら他の処理もこなしたが、Celeron側はフレーム落ちだらけ
Core 2 Duo対Celeronのデモの様子。Core 2 Duo側はなめらかなビデオ再生をしながら他の処理もこなしたが、Celeron側はフレーム落ちだらけ

Core 2 Duoの利点は処理性能だけでなく、低消費電力による筐体の小型化や騒音の低減などにも有益であるとしたエデン氏は、日本メーカー各社の軽量ノートを披露したうえで、「来年にはもっとたくさん出てくる」と述べた。さらにノートにとって重要なバッテリー駆動時間についても、インテル自身での技術開発にも取り組んでいるほか、日本のバッテリーメーカーとも協力して、さらなる長時間駆動を目指しているとした。

バッテリー駆動時間を伸ばすための技術についてのスライド。後述のRobsonなどさまざまな技術が開発されていて、2007年のプラットフォームに実装される技術もある 将来のノートのコンセプトデモとして、台湾ダイアローグ社の変形ノート“Flybook VM”を披露。狭いエコノミーシートでも長時間仕事ができます!?
バッテリー駆動時間を伸ばすための技術についてのスライド。後述のRobsonなどさまざまな技術が開発されていて、2007年のプラットフォームに実装される技術もある将来のノートのコンセプトデモとして、台湾ダイアローグ社の変形ノート“Flybook VM”を披露。狭いエコノミーシートでも長時間仕事ができます!?

Robson、Kedronなど2007年のノートパソコン向け技術を披露

2007年第1四半期に登場する次世代Centrino“Santa Rosa”プラットフォームを構成するコンポーネント。システムバスの高速化、内蔵グラフィックスの強化のほか、Robson、Kedronなど新技術が投入される
2007年第1四半期に登場する次世代Centrino“Santa Rosa”プラットフォームを構成するコンポーネント。システムバスの高速化、内蔵グラフィックスの強化のほか、Robson、Kedronなど新技術が投入される

次世代プラットフォームに使われる技術についても言及された。2007年第1四半期登場予定の次世代Centrinoプラットフォーム“Santa Rosa”に搭載される技術については、“Robsonテクノロジー”と新しい無線LANモジュール(コード名Kedron)が紹介された。RobsonはNAND型フラッシュメモリーを活用した技術で、パソコン内に内蔵することである種の不揮発性ディスクキャッシュとして機能する。これにより、現在はHDDに書き込んでいる休止状態(ハイバネーション)への移行が高速化されたり、よく使うアプリケーションをフラッシュメモリー上にキャッシュしておくことで起動を高速化するなど、それぞれ2倍ほど高速化できるという。HDDアクセスを低減することで、バッテリー駆動時間にも良い影響を与える。

Robson用のフラッシュメモリーモジュール。インテル自身のフラッシュメモリー事業の売上増も期待した技術だ
Robson用のフラッシュメモリーモジュール。インテル自身のフラッシュメモリー事業の売上増も期待した技術だ

KedronはIEEE 802.11nとMIMO技術に対応した無線LANモジュールで、現在のIEEE 802.11a/b/g対応のモジュールより、5倍以上のスループット、到達範囲の拡大を実現しながら、低消費電力であるという。インターフェースはPCI Expressで、モジュールは片面実装のミニカードとして提供されるもようだ。

次世代無線LANモジュール“Kedron”では、IEEE 802.11n対応による高速化に期待が集まる
次世代無線LANモジュール“Kedron”では、IEEE 802.11n対応による高速化に期待が集まる

ノートの話題が主を占めた講演だったが、デスクトップにも言及された。特に一体型のオールインワンパソコンが日本で人気があることについて触れ、ノートと同様に日本で流行った流れは世界に広がると述べた。またスタイリッシュなオールインワンパソコンは、“デスクトップはつまらない物ばかりじゃなくてもいい”という考えを広げたと評価した。

11月に登場予定のクアッドコアCPUについても、デモを披露してそのパフォーマンスを実演してみせた。デモで使われたのは来年登場予定の“Core 2 Quadプロセッサー”で、(株)ペガシスの『TMPGEnc 4.0 XPress』を使ったビデオ変換にかかる時間を、Core 2 Duoのシステムと比較してみせた。Core 2 Duoが40秒かかり、変換中のCPU使用率が各コア100%近くだったのに対し、Core 2 Quadでは27秒と約1.5倍の速さで変換を終え、CPU使用率も各コア80%前後と、まだ余裕があった。シンプルなデモだが、Core 2 Quadのパフォーマンスに期待を抱かせる内容だった。

Core 2 Quad(左)とCore 2 Duoのトランスコード速度対決。Core 2 Duoは全力で動いているが、Core 2 Quadはやや余裕を残しつつ、1.5倍近く速い
Core 2 Quad(左)とCore 2 Duoのトランスコード速度対決。Core 2 Duoは全力で動いているが、Core 2 Quadはやや余裕を残しつつ、1.5倍近く速い

講演のまとめにエデン氏は、パソコンがデスクの下の箱から“リビングPC”やノートへと変わり、パソコンのパーソナル化がさらに進展することで、新しいライフスタイルが生まれる。それに必要なパワーを、同社はデュアルコア~マルチコアCPUで提供していくと述べて、講演を締めくくった。

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