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ソーテック、企業向けパソコンの戦略に関して説明――安かろう悪かろうのイメージを払拭

2006年01月25日 16時15分更新

文● 編集部 小林久

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(株)ソーテックは25日、都内で記者会見を開き、同社が今後重視していく“法人向けビジネス”と“シンクライアント市場”に対する事業方針を説明した。同社は企業向けパソコンの新ブランド“e-Three”(イースリー)を新規に立ち上げるほか、BTO体制の整備やサポート体制の強化を行なう。

会見から
握手を交わすソーテック代表取締役社長の山田健介氏(中央右)とネクスターム代表取締役社長の鵜飼信行氏(中央左)

出荷前に全製品をエージングテスト
サポート体制の強化で顧客満足度回復を目指す

ソーテックは、昨年夏に創業者で会長を務めていた大邊創一(おおべそういち)氏と代表取締役社長の平沢潔(ひらさわ きよし)氏が退任。代わって、2004年9月にソーテック入りした山田健介氏が代表取締役社長に就任した。山田氏は、シャープ(株)の常務取締役などを経験。2年越しで社内の改革を行なっている段階にあるという。

ソーテックは、1984年に(株)工人舎の技術部門が独立して設立された。1980年代から1990年代前半にかけてポータブルパソコンやノートパソコンのOEM開発などを手がけたのち、“WinBook”“PC STATION”など、自社ブランドのコンシューマー製品を市場投入した。1998年に発売した9万9800円のデスクトップパソコンで“低価格パソコンメーカー”としての地位を確立。その後は、生産拠点を持たず設計のみを手がける“ファブレスメーカー”として、韓国メーカーや台湾メーカーとの協業のもと、徹底した低コスト化を図ってきた。しかしながら、パソコン市場の縮小と競争の激化などにより、低迷を続け、事業規模の縮小を余儀なくされていた。

山田氏はこういった旧来のソーテックの体制を痛烈に批判する。

ソーテックは“価格破壊者”として市場に広く認知されたものの、品質管理やサポート体制の不備から、結果として“安かろう悪かろう”のブランドイメージを市場に定着させてしまったためだ。山田氏は会見で「ファブレスはバブル期以降の経済低迷でもてはされたが、製造を台湾などのサプライヤーに委ねてしまったことは、他人任せで腰が据わらない状態を招き、結果として無責任な企業文化が根付く原因を作ってしまった」と述べ、「こういった企業文化から決別していきたい」と決意表明した。

法人事業に関して、ソーテックが重視するのは、500人以下の中小規模企業、教育市場、政府市場など。システムインテグレーターなどを介した“中間流通”、ソーテックの法人営業部隊による“直接営業”、ウェブサイトなどを通じた“法人ダイレクト販売”という3つのチャネルを利用し、2006年度に24億8000万円、2008年度までに50億円の売り上げを実現するのが目標。量販店を通じた個人向け製品の販売に関しても引き続き注力していくが、2008年度までに法人向け/ウェブダイレクト販売の割合を高め、個人向けの量販店販売とほぼ半々の比率にしていくという。

業績目標 BTO
会見で示された売り上げ目標。今後は法人事業の比率を高めていくBTOに対応するとともに、納期の短縮も進める

ソーテックの法人向け製品には“e-Three”のブランド名が採用される。“e”はEnterpriseの略で、Threeには企業向けパソコンに求められる“コストパフォーマンス”“高い品質”“充実のサポート体制”を満たすこと、量販/直販に続く3番目の柱であることなどがこめられているという。

また、保守/サポートおよび製造部門の関連会社(株)ソーテック・イー・サービス(以下SeS)と協力して、BTO対応と納期の短縮、品質管理の強化、サポートメニューの拡充などを通じて顧客満足度を高めていくようにする。同時にパソコンとシナジーが得られる周辺機器の販売なども行なう。製品ラインナップは、B5ノートの『HS300』(価格15万6450円から)、スリムデスクトップの『HC300』(6万3000円から)、A4ノートの『HA300』(9万5000円から)に加え、HDDを持たないノートタイプのシンクライアント『TS201』(14万1900円から)の4種類を用意する。全機種がBTOに対応するほか、マシンに添付されているエンブレムを企業や団体の名称に変更したり、セキュリティー強化のために光学ドライブやFDDの取り外しやUSBポートをふさぐといった小ロットのカスタマイズにも対応していくという。

デスクトップ シンクライアント
省スペースデスクトップのHC300TS201

山田氏は「まだ実現できていないが」と前置きした上で、受注から納品まで3~6日間で行なえる体制を実現していきたいとした。SeSは横浜に自社の組み立て工場を持ち、海外のサプライヤーから納品されてきた半完成品の最終組み立てと梱包を行なう。また、初期不良品を排除するために、すべての製品で6時間のエージング試験を実施した上で出荷する体制にするという。

品質管理基準はパソコンメーカーによって異なるが、通常は台湾や中国などの生産拠点で抜き打ち試験を行なうことが多く、すべての製品を通電して試験するケースはまれであるという。SeSはサポート業務も行ない、年中無休の法人専用テクニカルサポート窓口を設置するほか、標準で3年間の保証(1年目は無償引き取り修理、2~3年目は主要部品を無償保証)も提供する。保証期間は、最長5年まで延長できるほか、出張修理サービスなども提供するという(ともに有償)。

ラインナップに新たに加わった、シンクライアント『TS201』は、512MBのコンパクトフラッシュメモリーに組み込み版のWindows XP(Windows XP Embedded)を搭載している。OSイメージの制作やカスタマイズに関しては、企業向けWindows Based Terminalの開発運用の経験を持つ、(株)ネクスタームが担当する。ネクスタームはドライバーやアプリケーションの追加、指紋認証などと組み合わせたユーティリティーの開発、ログオン画面の変更など法人のニーズにあったカスタマイズなどにも対応するほか、システムインテグレーターとソーテックの架け橋となる形で、Citrix Presentation Server、KitASP Go-Globalなどと連携するSBC(Server Based Computing)システムの開発なども行なう。

ソーテック営業本部本部長の村井誠氏は「コモディティー化が進むパソコン市場において差別化は難しくなっているが、品質とサービスの強化によって顧客満足度の向上を図るとともに、高いコストパフォーマンスを実現できる販売/価格体制を作るために努力していきたい」と述べたほか、今後は個人向け製品に関してもBTO対応を進めていく考えがあることも紹介した。

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