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“Media KEG” HD30GA9

“Media KEG” HD30GA9

2005年11月30日 16時50分更新

文● 編集部・小林 久

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音質を落とさずにファイルサイズを小さくするKLS

 HD30GA9で新たに対応したKENWOOD Losslessは、非圧縮のWAVファイルに格納された情報をすべて保ちつつ、ファイルサイズを3~4割程度抑えられる圧縮方式である。圧縮率ではWMAやMP3のほうが高いが、これらの非可逆圧縮では、エンコード時に、大きな音と一緒に鳴っている小さな音や人間の耳に聞こえにくい高域成分などが削ぎ落とされてしまうため、オリジナルと聞き比べると、どうしても音質面で劣ってしまう。

KMAの変更点
KENWOOD Media Playerに追加された“KENWOOD Lossless”用のオプション。

 KLSファイルの作成は、KMAを使ってWAVEファイルをHD30GA9に転送する際に自動的に行なわれる仕組みとなっており、使い勝手はシンプル。転送時にKLSへの変換を行なわない設定も選べるが、逆にWAVファイルをあらかじめKLS形式に変換しておいて、一気にHD30GA9にコピーすることはできない。また、WAVファイルにはMP3などと違って楽曲情報を埋め込めないので、KLSのタグ情報はユーザーがあとから手動で入力しなければならない。KMAを使い、HD30GA9に暗号化して保存された楽曲データ(KXD形式)を直接編集して曲情報を追加できるが、自動的に曲情報などを付加できる機能も欲しいところだ。

 このあたりはWMAやMP3形式を使えば済む話ではあるのだが、高ビットレートなMP3/WMAファイルでも非圧縮の音源と比べるとハッキリとした音質差を感じる。せっかくの高音質ならソースからこだわりたいという人も多いだろう。この点はぜひ改良してほしいポイントだ。



音質はより落ち着き、ゆったりとした空間を感じる

 音質に関しては、標準ヘッドホンのほか、“SHURE”の「E4c」、“AKG”の「K171 Studio」など複数のヘッドホンを使い、ポップスの女性ボーカル、クラシックギターのソロと協奏曲など、何種類かの音源ソースを試した。基本的にはWAV形式を選択したが、音の傾向はWMAやMP3を選択した場合でも変わらない。

付属ヘッドホン 同時発表されたヘッドホン
付属ヘッドホンも変更なし。標準添付の製品としてはかなり高音質なものだ。カナルタイプで“Media KEG”シリーズ用にカスタマイズしたフィルターが付属するという

 HD70GA7との比較で、まず感じたのは味付けの違いだ。ずば抜けて高い分解能や個々の楽器をしっかりと聞き分けられる音の純度の高さはHD20GA7と変わりないが、ピンと張り詰めたような中高域の緊張感は多少ソフトになり、HD30GA9はより丸みが出た。全体に落ち着いた雰囲気である。また、歌手のボーカルも心なしか遠い位置から発せられている印象だ。Supremeをオンにすると、ごくわずかだがこの傾向が強くなる印象があった。

 HD20GA7では一部高性能なカナル型(耳栓式)ヘッドホンとの組み合わせでホワイトノイズが目立つという指摘があったが、HD30GA9ではその聞こえ具合も和らいだようだ。ただし、無音部分などでは依然としてホワイトノイズを感じるのも確かで、ここにデメリットに感じるユーザーもいるかもしれない。とはいえ、標準添付のヘッドホンやオーバーイヤータイプの製品では、ほとんど感じないレベルであることも付け加えておく。

 中高域が前に出るぶん、HD20GA7の音は華やかで、より強い臨場感を感じるが、中域から高域にかけてのつながりはHD30GA9のほうが自然で、感じる空間も広い。例えば、トライアングルのキラキラとした輝き、クラシックギターの弦がこすれる音はHD20GA7のほうがより前に出てきて、金管楽器もよりハリのある音で聞こえるが、HD30GA9では、客席と少し離れた位置にあるオーケストラとの間の少しくすんだ空気感も味わえる。同じリアリティーの表現でも臨場感と雰囲気のどちらを重視するかで好みは分かれそうだ。音質面では甲乙付けがたいところである。

サイズ本体はやや大きめだが、なんとかポケットにも収納できるサイズ

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