仕事柄、以前から録音・再生が可能なMDを取材に愛用していた。残念ながら私がこれまで使っていた録音・再生対応MDでは、MDからパソコンに楽曲やその他録音したデータをデジタルのまま取り込むことができなかった。しかし、今回の“Hi-MDウォークマン”ではそれが可能になっている。詳細は後述するが、Hi-MD対応機器または録音対応ネットワークウォークマンで録音した曲(音声)ファイルを、付属ソフト「SonicStage Ver.2.1」を使って1度だけパソコンに直接取り込むことができるわけだ。ただし、Hi-MD対応機器ではHi-MDモードで録音した曲のみという条件がついている。もちろん音楽CDの曲をSonicStage経由で同ソフトのライブラリに取り込み、保存することは、従来同様に可能。また、パソコンからMDウォークマンやネットワークウォークマンに転送することもできる。この場合は、著作権保護のため転送回数や転送方向に制限がかかることがある。いずれにしても、長時間の楽曲が録音できるHi-MDのメリットを生かす、大きな特徴といえるだろう。
従来なら、たとえ80分録音対応のMDメディアを使っても、長時間にわたる取材や楽曲の録音を行なうのは不安が付きまとった。いつメディアがいっぱいになってしまうか気になって、予備のMDメディアをもう1枚買って携帯することもしばしばあった。今回は1枚のHi-MDメディアに多くのアルバム(楽曲)を録音した上、さらに同じメディアを長時間の取材にも使用でき、残り時間はまったく気にならない。
ちなみに音声圧縮はATRAC3のほかATRAC3plus、リニアPCMに対応する。それぞれの方式でHi-MDのディスク1枚に録音できる時間は下表のようになっている。同社のCMやパンフレットでは「1枚のMDに45時間録音、Hi-MD誕生」とうたっているが、この45時間録音とはATRAC3plus(ビットレート48kbps)で圧縮しながらパソコンからHi-MDディスクに転送した場合のことであるのがわかる。なお、本製品の録音動作には“MDモード”と“Hi-MDモード”が用意されており、動作モードは挿入したディスクに応じて自動的に切り替わる。当然ながら、Hi-MDに対応していない機器で再生する場合は、MDメディアを使う(MDモードで録音する)必要がある。
録音モード | コーデック/ビットレート | Hi-MD規格専用1GBディスク | 80分対応MDディスク |
---|---|---|---|
PCM | リニアPCM/1.4Mbps | 約1時間34分 | 約28分 |
Hi-SP | ATRAC3plus/256kbps | 約7時間55分 | 約2時間20分 |
Hi-LP | ATRAC3Plus/64kbps | 約34時間 | 約10時間10分 |
コーデック/ビットレート | Hi-MD規格専用1GBディスク | 80分対応MDディスク |
---|---|---|
リニアPCM/1.4Mbps | 約1時間34分 | 約28分 |
ATRAC3plus/256kbps | 約7時間55分 | 約2時間20分 |
ATRAC3plus/64kbps | 約34時間 | 約10時間10分 |
ATRAC3plus/48kbps | 約45時間 | 約13時間30分 |
ATRAC3/132kbps | 約16時間30分 | 約4時間50分 |
ATRAC3/105kbps | 約20時間50分 | 約6時間10分 |
ATRAC3/66kbps | 約32時間50分 | 約9時間50分 |
リモコンでの録音モード選択は、停止中にジョグダイヤルを長押しする | 録音設定で録音モードを選ぶ | PCM、Hi-SP、Hi-LPのなかから好みのモードを選ぶ |
録音モードの選択は上記写真の手順で行なう。録音レベルは手動調整が可能だ。また、Hi-MDメディアはファイルシステムにFATを採用しているため、パソコンの外部ストレージとしてデータの書き込み/読み出しも可能だ。 Hi-MDモードで外付けストレージとして使用した場合の容量は下記の通り(本体およびSonicStageで初期化した場合)。
ディスクの種類 | 総容量 | ディスク管理容量 | 空き容量 |
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60分ディスク | 219MB | 832KB | 218MB |
74分ディスク | 270MB | 832KB | 264MB |
80分ディスク | 291MB | 832KB | 290MB |
Hi-MDディスク | 964MB | 832KB | 963MB |
■MDを仕事で使う上で欠かせない“マーキング機能”
外部マイクを使って録音するときに必須と思われるのが、“T MARK機能”だ。確かにテープレコーダーに比べると録音データの検索はMDの方が格段に便利になっている。しかし、1時間ぶっつづけで単純に録音したのでは、後で聞き直したいところを探す際に骨が折れる。目的の部分が見つかるまで早送り/早戻し再生を続けるのは疲れるし、誤って最初/最後まで戻してしまった時はため息が出る。そこで、録音中に一定間隔で自動的に、あるいは任意の場所に頭だしを行なうポイントを設定する“マーキング機能”が欠かせないのだ。MZ-NH1はサイドにある“T MARKボタン”を押すことで任意のポイントにマーキングができるほか、1~60分まで1分単位での自動マーキング設定が可能となっている。