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デジタルカメラ撮影の“基本のキ” マクロ撮影で接写をしてみよう

デジタルカメラ撮影の“基本のキ” マクロ撮影で接写をしてみよう

2002年06月01日 07時46分更新

文● 周防克弥

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マクロ撮影のワンポイントアドバイス

作例3 マクロ撮影で被写体に近くなればなるほどピントの合う範囲(被写界深度)は浅くなる(狭くなる)。絞りを開放した状態(上)では、周辺部しかピントが合わず、レンズに近い真中あたりはピンぼけだ。絞りをF11まで絞ると背景にはピントが合わないが、花は全体的にピントが合っている(下)。絞ればいいというわけではないが、花のディティールを出すなら絞ったほうが良い。
 では、マクロ撮影を実際に行ってみよう。レンズの撮影モードを「マクロ」に切り替えて、近くの被写体を撮影しよう。マクロ撮影でまず気をつけなくてはならないのは手ぶれだ。以前の連載で、手ぶれを防ぐためには最低でも「1/焦点距離」秒のシャッター速度が必要ということを書いたが、残念ながらマクロ撮影ではこの常識は当てはまらない。通常撮影では1/焦点距離という数値でもよいが、マクロ撮影ではもっと手ぶれが発生しやすくなる。できるなら1/焦点距離よりも1段(2倍の速度)か、2段(4倍)くらいは速いシャッターを切るように心がけたい。また、シャッター速度だけでなく絞りも要注意だ。マクロ撮影では極端にピントの合う範囲が狭くなり、中央にピントが合ったとしても手前や奥はぼけた状態になる。ピントを合わせたい位置をしっかりと確認するほか、ピントの合う範囲も確認し、必要ならば絞りを絞り込んでピントの合う範囲を広げよう(作例3)。マクロ撮影では画面に映し出される被写体が大きくなるので多少のピントのズレさえも大きく感じてしまう。

 手ぶれしやすく、かつ絞りも絞り込んだほうがよいとなれば、できるだけ三脚の使用をお勧めする。持っていないという人もいるかもしれないが、三脚を持っているかどうかで撮れる写真(例えば夜景)の幅が大きく変わってくる。大きな立派で高額な製品でなくても、小型で安価な製品でも十分だ。デジタルカメラ並みに小さなポケット三脚も2000円前後で売っているので、普段からカバンの中に入れておけば、必ず重宝するはずだ。

 手ブレを防ぐためのもう1つの手段がフラッシュをたくことだ。少々暗くてもフラッシュを使えばシャッター速度は速くできる。しかし、マクロを使うくらいの近い距離でフラッシュたくと意外と光が強すぎて露出オーバーになってしまう。また、フラッシュとレンズが同じ位置にないことから、被写体が近すぎると光が斜めから当たって不自然な影が生じてしまう(作例4)。

作例4 マクロ撮影の注意。曇りの日にフラッシュを使用しないで撮影すると色の出方がくすんだ感じになる(左)。フラッシュを普通に焚くだけでも発色はかなり改善する(中)。また、普通に発光させた状態では影が強くでてしまい、コントラストも強めになるが、フラッシュ前面にデュフューザを入れることで影を柔らかく、コントラストを下げることができ、質感の描写力も上がる(右)。

銀塩カメラ用のディフューザ。フラッシュの前にベルクロ(マジックテープ)で固定する。
 マクロ撮影時にフラッシュの光をきれいに当てるには、ディフューザ(diffuser)を使うのが基本だ。ディフューザとは、フラッシュの光を和らげる(diffuse)するためのもので、フラッシュの発光部の前に装着する乳白色のガラスやアクリルの板だ。これによりフラッシュ光が拡散し、均一に広がった光源となる(写真1)。カメラ用品として売られているものを購入しなくても、トレーシングペーパーをハガキ程度のサイズに切っておいて、いざというときにフラッシュの前にかざすだけでもかなり効果がある(写真2)。そんな用意がないときには、1枚のティッシュペーパーをフラッシュの前にかざすだけでもそれなりに使えるのでやってみるといい。もっとも、ティッシュだと耐久力もないうえにちょっと風があると使えないというのが難点なのだが、そのあたりは努力と根性でカバーだ。



トレーシングペーパーを使った簡易ディフーザの例。フラッシュ発光面とペーパーが間があるほうが光が散乱しやすい。
 最後に、マクロ撮影で小物を撮る際のちょっとした工夫をひとつ。被写体を引き立てるために背景を自分で作るのも有効な手段だ。雑誌掲載用のブツ撮り(製品写真の撮影)ではカラーペーパーを敷いた上にモノを置いて撮っているが、同じように適当な紙を用意して背景を隠すと被写体を強調できる。接写で小物を撮るなら写る範囲も狭いので、ハガキ程度の黒い紙を1枚持っているだけでも意外と使える。花などを撮るときにはかなり使えるので、一度やってみよう。



接写のススメ

 腕時計などの小物にしろ、花や虫などの自然にしろ、被写体をアップにして細部のディテールまで表現するのは、遠景の風景写真に比べてデジタルカメラの解像力が問われる撮影であり、いかにきれいに撮るか撮影者の腕の見せどころである。高性能なデジタルカメラをお持ちの人もそうでない人も、ぜひともマクロ撮影にチャレンジしてカメラの限界とともに撮影の腕を磨いてみてほしい。

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