Mail User Agent
Mail User Agentについてのセッションでは、Mewについて山本和彦氏が、muttについて滝澤隆史氏が、Wanderlustについて寺西裕一氏が、Sylpheedについて山本博之氏が紹介した。
右から山本和彦氏、寺西裕一氏、滝澤隆史氏、山本博之氏 |
Mew
Mewは電子メール、MIME、PGPの操作に対応したインターフェイスで、Emacs上で動作する。メールを一覧表示させながらメッセージを読むことができるなど、動作が軽快なツールだ。現在の最新バージョンは2.1。このバージョンからはXMLにも対応している。対応しているEmacsはEmacs 20.7および21.1以降、XEmacs 21.1.14以降。
Mutt
Muttはテキストベースのメールクライアントで、MIMEやPOPなど多くのプロトコルに対応している。ELMやslrnなどを手本に開発されているため、インターフェイスや操作性に共通した部分が多いという。メールの作成と送信の機能はなく、外部プログラムを利用する。現在の最新バージョンは1.2.5i。日本語にはパッチを当てることで対応する。
Wanderlust
Wanderlustは、Mew同様Emacs上で動作するメールインターフェイス。IMAPに対応しているほか、Wordファイルなどからテキストだけを抜き出す「パートフェッチ」機能を搭載、Web上のニュースサイトからニュースを収集する機能などがある。現在の最新バージョンは2.6.1。
Sylpheed
SylpheedはGTK+を利用した、GUIベースのメールクライアント。軽快な動作と洗練されたインターフェイスを提供することを目指すと同時に、ユーザビリティにも配慮してキーボードのみでの操作も可能だ。最新バージョンは0.6.5。XMLでのデータ保存に対応したほか、国際化も進められている。
自由討論
討論では、文字コード変換の実装や、BSDやLinuxでのアプリケーションのありようなどについて論じられた。
文字コードの変換については、MewとWanderlustではEmacsの機能を利用しているという。Sylpheedでは、Libjconvを使用して多言語に対応しているが、将来的にはiconvを直接使用するようにするそうだ。
また、この発表ではCUIとGUIのアプリケーションが紹介されたこともあり、伝統的なUNIXの小さいプログラムを組み合わせて機能を実現するアプリケーションのあり方と、複数の機能を持つ大きな1つのアプリケーションのどちらがよいのかという議論も行なわれていた。結論としては、ユーザーが必要な機能を利用できるのであればどちらでもいいのではないかといった意見でまとまっていた。
Mail Transfer Agent
Mail Transfer Agentについては、Sendmailについて中村素典氏が、qmailについて前田敦司氏が、postfixについて荒木靖宏氏がそれぞれ紹介した。
右から前田敦司氏、中村素典氏、荒木靖宏氏 |
Sendmail
Sendmailについては、セキュリティホールや動作の遅さなどさまざまな問題が指摘されているにもかかわらず、多くのユーザーに利用されている。現在の最新バージョンは8.12.1。次期バージョンからは設定ファイル作成ツールがCF-3.xからm4に移行するという。
qmail
qmailは、最初に開発したD.J.Bernsteinの影響もあり、信頼性、性能に関しては定評あるメール配送サーバ。モジュールを相互に信頼しない設計にし、セキュリティを高めているという。セキュリティホールに対して賞金がかけられているが、これまで一度も支払われていないという。最新バージョンは1.03だが、安定しているため3年半にわたりアップデートされていない。
Postfix
PostfixもSendmailへのオルタナティブとして開発された。Sendmailからの移行が容易で、設定や管理が容易。プログラムは機能ごとに分割されており、それぞれ異なる権限が与えられている。現在の最新バージョンは20010228。
自由討論
討論では、それぞれのMTAの設定方法や特定のエラーなどについての質問が多くなされた。
Sendmailについては、設定ファイル作成ツールがCFからm4に移行することが発表されたが、現在Sendmailを使っているユーザーからはCFを何とか使うことはできないかという質問がなされた。中村氏によると、警告メッセージを無視して使うことは可能だとのことだ。SPAM対策などをきちんと行なった上で、警告メッセージの出る問題を解消すれば、特に問題はないだろうとのことだ。現在のところ移行のノウハウなどが公開されていないため、不安に思うユーザーが多いようだった。
qmailについては、携帯電話などに配信する際にメールボックスがいっぱいになったエラーがパーマネントエラーと同じ扱いになる問題や、エイリアスした際にReceivedヘッダのサイズが大きくなる問題などが指摘されていた。