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放送機器の展示会“Inter BEE 2001”開催――ハードはまだまだ進化する!! それとも、これからはコンテンツの時代!?

2001年11月19日 00時18分更新

文● 編集部 中西祥智

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一方のソニーは、IEEE802.11bで映像と音声を伝送するシステムを参考出展した。

カメラ本体とバッテリーパックの間にあるのが、IEEE802.11b伝送機
カメラ本体とバッテリーパックの間にあるのが、IEEE802.11b伝送機

従来、放送用の映像伝送は、FPU(Field Pickup Unit:可搬型無線送受信装置)という装置を使用して、マイクロ波で行なっていた。しかし、FPU伝送は指向性が強く、アンテナ同士の向きを正確に調節する必要があり、またアンテナ間に障害物があると伝送できなかった。そのため、中継車から先端にパラボラアンテナを取り付けた10m程度のポールを上方に伸ばしたり、上空のヘリコプターを経由したりする必要があった。

ユアサ工機の伸縮ポールを搭載したワゴンユアサ工機(株)の伸縮ポールを搭載したワゴン。ポールの先端には、FPU伝送用のパラボラアンテナが乗っている

今回の伝送システムは、送信するカメラ側は無指向性で、受信側は左右120度まで受信できる。伝送可能距離は、現在の10mWの出力の場合、見通しで約500mだが、2002年に予想される規制緩和で80mWの出力が可能になれば、約1.25kmに拡大する。

アンテナの長さは約50cm無指向性のアンテナの長さは約50cm
こちらは受信機
こちらは受信機。左右60度まで伝送可能であり、実際にはほとんど指向性を意識する必要はない

映像は、カメラ内部でMPEG-2にエンコードし、OFDM(直交波周波数分割多重)方式と呼ばれる変調方式によって送信する。ただし、現行ではSDTVの解像度までで、HDTVは伝送できない。ソニーでは、マラソンなどのスポーツ中継やバラエティ番組向けにこの伝送システムを提供したいとしているが、放送局の機材がHDTVに置き換わりつつある中、どこまで普及するかは微妙なところだ。同社では、まずSDTVで提供したあと、HDTVに移行したいとしているが、IEEE802.11bではHDTVを伝送するのに帯域が不足しており、そういった課題を克服するにはまだ時間がかかるという。

また、ソニーはニュースの制作・放送システム“NewsBase”や、ウェブ上のストリーミング配信を代行するサービス“トータルストリーミングサービス”なども出展した。同社は、放送の世界もハードからネットワーク、そしてコンテンツへ比重が移りつつあると考えており、個々のハードウェアよりも、コンテンツをいかに蓄積・利用するかというシステム全体の提供に、今後注力するとしている。

“NewsBase”システム
“NewsBase”システム

NewsBaseシステムは、取材した映像をビデオテープではなく、低解像度および高解像度の2種類のサーバーのハードディスク上に保存する。低解像度サーバーにはMotion JPEGで、高解像度サーバーにはMPEG-2で映像を保存し、編集作業は低解像度側で行ない、その編集データに従って高解像度側で放送または制作を行なう。実際の放送に使用するのは高解像度側の映像であり、低解像度側の画質は放送とは関係なく、一般のパソコンなどで編集作業を行なえるという。

ニュースシステムの概念図
ニュースシステムの概念図

また、DTF(Digital Data Format)テープに映像を長期保存する“ビデオアーカイブシステム”との連携も可能。ビデオアーカイブシステムも、NewsBaseと同様に高解像度ライブラリーと低解像度サーバーに分かれており、低解像度側で検索し、高解像度ライブラリーから放送用の映像を引き出す。

負荷の軽い低解像度な映像なら、専用の編集機でなくともパソコンで編集することができ、HDDやDTFに映像を保存することで迅速に検索・編集が行なえるというのが、同システムのメリットになる。すでに、国内で1例、海外では多数の導入事例があるという。

一方のトータルストリーミングサービスは、放送局などの代わりにソニーがウェブ上でのストリーミング配信を行なうもの。主にローカル局をターゲットとしている。

トータルストリーミングサービス用のサーバートータルストリーミングサービス用のサーバー。複数のフォーマット、複数のビットレートに自動的に変換して配信する

放送局が制作した番組を、ソニーが同社のサーバーから複数のフォーマット、ビットレートで配信する。放送局側は、番組を制作し、ソニーの配信サーバーに自社のウェブサイトからリンクを貼るだけで、ストリーミング配信が行なえる。2002年春にサービスを開始する予定で、料金は月額100万円程度を予定しているという。

HDTV対応編集卓
ソニーのブース内にあったHDTV対応編集卓
会場内でステディカム発見!
会場内で“ステディカム”発見! もっとも、ステディカム(STEADICAM)は米Tiffen社の登録商標であり、展示していたザハトラー・ジャパン(株)では“カメラバランスシステム”と称していた。ステディカムと同じく、ブレのない映像を撮影できる。価格は590万円
米COPTERVISION社の“ROLLVISION”米COPTERVISION社の“ROLLVISION”。水平方向は360度、垂直方向には180度回転する。カメラの制御は無線で行なう
ROLLVISIONを制御するコントローラーROLLVISIONを制御するコントローラー
アップルコンピューターは初めて出展
アップルコンピューター(株)は今回、Inter BEEに初めて出展した。展示内容は、サードパーティー各社の、Macintoshを使ったストリーミング配信やDVD制作システムなど

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