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【IDF Fall 2001 Vol.1】インタラクティブの先にある“Proactive Computing”

2001年08月28日 23時55分更新

文● 塩田紳二

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27日(米国時間)から30日まで、米国カリフォルニア州サンノゼ市で、米インテル社が主催する開発者会議“Intel Developer Forum Fall 2001”が開催されている。その初日のレポートをコラムでおなじみの塩田紳二のレポートでお届けする。

初日の最大の目玉は、『Pentium 4』2.0GHzの正式発表である。すでにPentium 4-2.0GHzを27日に発表するというアナウンスは広く伝わっており、驚くような内容ではないのだが、ついにパソコンのプロセッサーが2.0GHzに到達したわけである。

副社長兼デスクトッププラットフォームグループゼネラルマネージャーのルイス・バーンズ氏Pentium 4-2.0GHzを発表する副社長兼デスクトッププラットフォームグループゼネラルマネージャーのルイス・バーンズ氏

2000年の3月に米AMD社の『Athlon』が初めて1GHzに到達、その後、追いかけるようにインテルもPentium III-1GHzを発表したが、それから1年と5ヵ月、今度はインテルが最初に2GHzに到達したわけだ。

もともと、Pentium 4は、クロックを高速化しやすく設計したCPUである。というのも、Pentium IIIでは、すでに限界近くまでクロックが上がっており、Athlonに比べると高クロック化が難しく、AMDとのクロック競争では厳しい状況にあった。

同じシステムの2年後の比較として、Pentium IIIとPentium IIの同等クロックでの性能を比較
同じシステムの2年後の比較として、Pentium IIIとPentium IIの同等クロックでの性能を比較。アーキテクチャーが変ることで、同程度のクロックであっても、より高い性能が出せることを提示。高い性能を買うことが資産(つまりパソコンである)を守ることになると主張

Athlon以前にAMDは、インテルへの対抗策として『K6-III』というインテルCPUよりもクロックあたりの性能が高い製品を出していたが、一般の顧客はやはりカタログスペックで単純にクロック値で比較してしまうため、ちょっと不利な状況にあった。Athlonはその挽回策として、クロックを高めやすいCPUとして作られたのである。

さて早々に2GHzに到達したインテルだが、米国の景気が下降傾向にあり、ビジネスが好調かというとそうでもないところがある。パソコン全体の売上が減っているのだ。メモリーなどにはその傾向がはっきりと現われており、かなり価格が下がってしまった。

デスクトップ用チップセットの今後の展開
デスクトップ用チップセットの今後の展開。下期にはIntel 845チップセットが登場し、現在のIntel 815系列(つまりPentium III用)を置き換えていく。このようにしてインテルは、主力をPentium 4に移行したい考え

このIDFでの発表会だが、全体のデモンストレーションはいつものとおり派手なものの、プレゼンテーションの内容をみると過去のPentium II-450MHzとPentium III-500MHzでかなりの速度差があったという話から、今、高性能なCPUを買うことが資産を守る(つまり目減りしない)ことだと主張する。

いままでは“高性能”と主張し、性能の使い道としてビデオやオーディオの編集・加工といった例を挙げるのみだったのだが、不況の世の中に合わせて主張も変ってきたわけだ。

さて、対するAMDはどうするのか? まだ、AMDに対する取材は終わっていないのだが、まっとうに考えるに、この不況に対しては“コスト”を主張する(例えば「Pentium 4並の性能がこの値段で手に入る」)しかないような気がする。

会場には、Pentium4-2GHz搭載のマシンが展示されていた。これは、NECが米国で販売予定(Packard Bellブランド)の『iDesign』という機種。
会場には、Pentium4-2GHz搭載のマシンが展示されていた。これは、NECが米国で販売予定(Packard Bellブランド)の『iDesign』という機種。

初日のデビッド・テネンハウス(David Tennenhouse)副社長兼リサーチ部門ディレクターによるキーノートスピーチは、インテルの研究開発についてであった。インテルが社内で行なっている研究や、大学などとの共同研究が紹介されるキーノートスピーチは、昨年の初日のキーノートスピーチなどに比べるとちょっと地味な感じ。ある意味、こんな時期でもちゃんと研究しているんだよというサインなのかもしれないが、研究テーマをいくつもいくつも紹介されるのは、聞くほうにとってはちょっとつらいものがあった。

これまでのコンピューターの歴史を振り返り、テープやカードを使ったコンピューターの利用が、現在では“インタラクティブ”なコンピューティングになったという。そしてその先にあるのは“Proactive Computing”なのだという。Proactiveとは“先を予想する”という意味だが、インテルでは、これを“予想される困難や期待を取り扱うためにあらかじめ行なうこと”だとしている。そして、このProactive Computingを組み立てるための研究をインテルはしているということだ。まあ、研究開発の基本コンセプトということか。

そこでさまざまな研究テーマが紹介されたわけだが、いくつかのデモも行なわれた。そのメインとなったのは、多数の小さなノードが通信を行なう“Ad Hoc Network”である。

実は、キーノートスピーチ会場の椅子の下には、超小型の無線通信機能を持ったマイクロプロセッサーが取り付けられていた。大きさは10円玉ぐらいで、2つのLEDとひげのようなアンテナが付いているものだ。このコンピューターは、ほかのコンピューターと通信することができる。ステージのパソコンで指示を出すと、指定されたノードのLEDが点灯する仕組みだ。

ステージには小型無線ノードを持った人が多数登場
ステージには小型無線ノードを持った人が多数登場

まあ、世間でいわれているのは、これからかなり大量のノードがネットワークに接続されることになり、あまりにコンピューターの数が多すぎて、サーバーのように多くのクライアントから接続される形態では、通信が不可能になってしまうということである。そこで注目されているのが“Peer-to-Peer”ネットワークのような、ノード同士が直接あるいは、ほかの任意のノードを経由して通信を行なう形式である。

それぞれのノードの通信状態が表示されている画面
それぞれのノードの通信状態が表示されている画面

実際IPv6になると家電全部がIPアドレスを持つなんてことがいわれている。いずれそう遠くない時期に、そういう時代がくるのは間違いない。そのための研究を行なっているということなのだ。

この無線ノードは、基板が10円玉大。裏側には電池があり、アクリルの透明ケースに入っている
この無線ノードは、基板が10円玉大。裏側には電池があり、アクリルの透明ケースに入っている

さて、明日2日目のキーノートスピーチは、“インテルのコンピューティング戦略”と題して、現在ナンバー2の地位にいる、ポール・オッテリーニ(Paul Otellini)上級副社長兼インテルアーキテクチャーグループゼネラルマネージャーが話す予定。まあ、こちらが例年初日に行なわれていた社長によるプレゼンテーションに近いものだろう。また、このIDFの期間中にはサンノゼの某所でAMDのブリーフィングも行なわれる予定(インテルの人には内緒だよ)。Pentium 4への対策などを聞いてみたいところである。

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