シスコ前会長の松本氏がベンチャーキャピタルを設立

2001年04月16日 18時01分更新

文● 編集部　佐々木千之

シスコシステムズ(株)の創業者で前取締役会長の松本孝利氏は16日、大学などの研究機関における革新的なIT関連技術をベースとした起業の促進を目的とするベンチャーキャピタル“アカデミーキャピタルインベストメンツ株式会社”を3月19日付で設立し、業務を開始したと発表した。


ACI代表取締役社長の松本孝利氏

シスコシステムズ(株)の創業者で3月まで代表取締役会長であった松本孝利氏(※1)は16日、大学などの研究機関における革新的なIT関連技術をベースとした起業の促進を目的としたベンチャーキャピタル“アカデミーキャピタルインベストメンツ株式会社”(ACI)(※2)を3月19日付で設立し、業務を開始したと発表した。同社には、大前研一(株)大前・アンド・アソシエーツ代表取締役、村井純慶應義塾大学環境情報学部教授らが取締役(非常勤)として参画している。

※1 松本氏は'66年に法政大学工学部電気工学科を卒業後、日本電子開発(株)、日本ディジタル・イクイップメント(株)を経た後、'84年に独立して、UNIXと人工知能の技術コンサルタントを行なうインサイト・インターナショナル(株)を設立。UNIX開発者のビル・ジョイを初めて日本に招くなどした。'86年にサン・マイクロシステムズ(株)を設立、'90年に(株)システム・ソフトウェア・アソシエイツを設立、'92年に日本シスコシステムズ(株)(現シスコシステムズ(株))を設立し、いずれも社長に就任。'96年に米シスコシステムズアジア担当副社長、日本シスコシステムズ代表取締役会長に就任、2001年3月に退社した。現在は日本インターネット協会評議員、(株)スクール・オン・インターネット研究所取締役、慶應義塾大学政策・メディア研究科教授、日本銀行政策委員会顧問。

※2 アカデミーキャピタルインベストメンツ:本社東京都千代田区、資本金5000万円、代表取締役社長松本孝利氏。

記者発表会で挨拶した松本氏は「かねてから、日本からサンやシスコのような企業が出てこないかと考えていた。世界のリーダーシップを取れる、世界に通用する企業は日本からもっと出てきてよいし、その力はあると考えている。そのためには大学や研究機関でユニークかつ革新的な技術をベースとした起業を促進し、育成することが必要だと感じ、大前研一氏や村井純氏らと話していくうちに、“よし、やろうか”ということになりACIを設立した」と設立経緯を説明した。そしてACIの事業について「米国のベンチャーキャピタルの手法をモデルに、起業時からEXIT(※3)まで、資金だけでなく役員の派遣など徹底的なインキュベーションを行ない、日本におけるベンチャービジネスの質的向上、国際化、活性化を目指す」とした。またシスコにおけるアジア担当副社長としての経験でできたつながりを生かし、アジア環太平洋地域でも日本と同様の活動を行なうとしている。

※3 EXIT:ACIはIPO(新規株式公開)、またはM&Aまでをサポートする。


日興リサーチセンター理事長/ジャーナリストの野中ともよ氏

ACIの活動では、特に企業の戦略構築支援を積極的に行なうとしており、経営戦略、資本政策、技術開発、ビジネスモデル構築、マーケティング、営業、人事についてコンサルティングを行なうとしている。ACIのアドバイザーとして、清成忠男法政大学総長/日本ベンチャー学会会長、鈴木幸一インターネット・イニシアティブ代表取締役社長、野中ともよ日興リサーチセンター理事長/ジャーナリスト、エド・コゼール元米シスコシステムズ上級副社長兼最高技術責任者、マイク・ボルピ米シスコシステムズ上級副社長兼最高戦略責任者らがコンサルティングを行なう。


(株)大前・アンド・アソシエーツ代表取締役の大前研一氏

非常勤取締役として参加する大前研一氏は「日本の場合、学校が産業に与える影響が間接的であり、直接影響を与えることができないかと考えていた。ACIの話を松本氏から聞きこれはと思い参加した。日本で戦後大きくなった企業はすべて1人の人物だけで大きくなったのではない。松下幸之助氏も本田宗一郎氏も、井深大氏も相性の良いパートナーとなる人物共に企業を育てた。渋谷のビットバレーなどの人たちはそれがわかっておらず、お金がどんどん集まるから一人で舞い上がっている。経営の勉強よりも経営を語っている時間が長いのではないか。アメリカのベンチャーも、20、30も年の違う百戦錬磨の経営者と破壊力のある若者が組んで立ち上げている」と、日本のベンチャー企業に苦言を呈し、ACIでは徹底的に経営を教え込むという姿勢を見せた。