ドラゴンシステムズは、音声認識ソフトでは老舗中の老舗(1997年から製品を発売)で、海外で発売中の各国語版ではシェアNo.1を誇る。それらの製品と基礎はまったく同じ音声認識エンジンを搭載した日本語版が「ドラゴンスピーチ セレクト Ver.5.0」(以下ドラゴンスピーチ)だ。
動画と音声でわかりやすいチュートリアル
ムービーと音声による解説を見た後、「トライ」ボタンをクリックすると、実際にエディタを使った体験ができる。ドラゴンスピーチの操作が簡単に覚えられる。 |
音声認識ソフトを初めて利用する場合、慣れない操作方法にマニュアルと格闘してもなかなか操作が覚えられず、イライラすることがある。
しかし、本ソフト搭載の「チュートリアル」なら、基本的なマイクのオン/オフ操作はもちろん、文章の入力や単語の修正方法まで簡単に習得可能だ。ひとつひとつの操作を音声と動画で丁寧に説明してくれるうえ、各説明の後には実際にドラゴンスピーチを使って、説明文どおりに進めていくだけで自然と操作方法が身に付く。そのため、起動後すぐに使い始められるというわけだ。ヘルプメニューからも呼び出せるので、いつでも何度でも操作が学べる。
ただ、ウィンドウの操作方法やマウス(矢印)の音声操作などがチュートリアルに含まれていないのは残念なところ。次バージョンではこれら機能もチュートリアルに入ることを期待したい。
ストレスのないエンロール
やや硬めの文章で、1文が長い気はするが、やり直しを要求されることはほとんどないので、サクサク進められる。 |
チュートリアルの紹介が先行してしまったが、もちろん本ソフトもエンロール作業は必要だ。文章を読み上げていく作業中、文章とまったく違う単語や言い回しをしない限り、多少のつかえや間違いはやり直すことにならないので、ストレスなく進められる。
わかりやすい操作と使いやすい編集作業
一番上が「Dragonバー」で、現在音声入力中のエディタは「Dragonエディタ」だ。文字の修正は、「選択○○」と発声してリスト表示される中から正しい語句を選べばOK。発声した言葉は、チップヘルプのように表示される。 |
アプリが起動すると、ドラゴンスピーチのメインにあたる「Dragonバー」が画面上部に配置される。このバーは、タスクトレイに格納できるほか、アクティブウィンドウのタイトルバー上部に貼り付いたようにすることも可能。後者を使用すると、どのウィンドウに対して音声による操作や入力を行っているかが一目瞭然だ。
音声による文字入力は、専用エディタ「Dragon エディタ」と、直接起動中のアプリに直接入力できる「インライン入力」を装備。どちらを使っても、文字の修正や文章の編集作業が非常に楽にできるように設計されている。
文字の修正方法は、エディタでのみ使える「クイック修正リスト」と、インラインでも使える「修正」コマンドを使う2つの方法があるが、手順自体はほぼ同じなので、一度覚えればまず間違えずに操作できる。その手順は、エディタ使用時なら「選択○○」と言うと誤認された文字に一致する可能性の高い文字候補がクイック修正リストに一覧表示されるので、「2番を選択」という具合にいえば正しい語句に置き換わる。インライン入力時の場合は「選択○○」という代わりに、「修正○○」と発声するだけで、後はほぼ同じだ。
編集機能が秀逸のデキ。長い文章も「選択 ○○ から △△」と言うだけで、その文章が一度に範囲選択できる。 |
音声操作による文章編集のしやすさにおいては、今回紹介するソフトの中でも群を抜いている。たとえば長文を範囲選択する場合、ほかのソフトでは「9つ右の文字を選択」などと細かく指定したり、長文すべてを読み上げる必要があるなどの手間がかかるのに対し、ドラゴンスピーチでは「選択○○から△△」と発声すると一度にその範囲の長文を選択できるのだ。同様に、任意の文字の前にカーソル移動させたいときは、「前にカーソル○○」と言うだけで任意の文字の前にカーソルを一気に移動できる。これらのコマンドは本当に便利で、この方法を知ってしまうと、ほかのソフトがかなり使いづらく感じられるくらいだ。
アプリやウィンドウの操作も楽々
InternetExplorerを起動してみても変化はないが、ページ内に同じ読みのリンク先があるときのみ、番号タグが付く。「クリック とっぷ」と発声した結果、画面右端(上寄り)の「トップ」を含むリンク先に番号が付いた。 |
文字入力や編集機能だけでなく、音声コマンドの利用も非常にスムーズにできる。音声でメニューやウィンドウ、アプリを操作するには「クリック編集」のように「クリック」と言った直後に音声コマンドを言って指示する方式だ。そのため、音声コマンドのつもりが文章として入力されてしまったということもほとんどなく、快適に音声コマンドが使える。ドラゴンスピーチは、Windows上で動作するアプリなら、音声による文字入力や音声で操作が可能なので、メーラも専用ソフトは必要なく、一般的に使われているメーラで新着メールのチェックや、新規メールの作成、送信が行えるのも特徴だ。
Webサイトの閲覧だけは、InternetExplorer 4.0以上のみ(Netscape Navigatorは未対応)が対応になる。一見変わったところはないが、表示中のページのソースを読み取り、テキスト中のハイパーリンクや注釈付きのGIFボタンなら、「クリック」の後ですぐに“表示されているテキスト”もしくはその一部分を読み上げるとリンク先に飛べる。同じ読みで異なるリンク先の場合はリンクテキストに番号タグが付くので、その番号を読み上げることで飛び先を選択できる。「ページアップ/ページダウン」と言えばページのスクロールも可能だ。
このほか、ソニーのICレコーダ「ICD-MS2」などに対応した音声データのテキスト化や、HTML/テキスト/Wordの文書ファイルを読み込ませて辞書に未登録の単語の追加や、語句の組み合わせの使用頻度を学習させ、ユーザーの文章スタイルをドラゴンスピーチに覚えさせる「ボキャブラリ ビルダー」といったツールも搭載する。
唯一残念なのは、音声合成による文章の読み上げ機能が搭載されていないこと。しかし、マイクをいちいちオフにしなくても雑音が入力されることがなく、音声でテキパキとウィンドウ操作が行えるのは使っていて非常に気持ちがいい。大量の文章やデータの入力を行う場面が多い人や、軽い動作が好みの人は、ドラゴンスピーチがオススメだ。
製品名 | ドラゴンスピーチ セレクト Ver.5.0 |
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価格 | 1万8000円 |
会社名 | ドラゴンシステムズ |
問い合わせ先 | 03-5645-7602 |
URL | http://www.dragonsys.co.jp/ |
動作環境 | |
CPU | PentiumII-266MHz以上 |
メモリ | 64MB以上 |
空きHDD容量 | 170MB以上 |
対応OS | Windows 98/Me/NT 4.0/2000 |
仕様比較 | |
導入後最初の起動時間 | 11秒48 |
簡易エンロール時間 | 1分14秒07(12文) |
フルエンロール時間 | 4分51秒54(45文) |
音声認識辞書(最大) | 約20万語 |
登録可能語句数 | 3000語 |
音声読み上げ機能 (音声合成エンジンの搭載) |
× |
Webブラウズ機能 | ○ |
メールチェック機能 | △(メーラの機能を音声で使うことは可能) |
音声コマンドカスタマイズ機能 | × |
句読点の自動挿入機能 | × |
声によるマウス操作 | ○ |
声によるキーボード操作(押す) | ○ |
語彙のまとめ登録機能 | ○ |
ICレコーダ対応 | ○ |
WAVEファイルからの書き起こし | ○ |
付属アプリ、もしくは 別途インストールが必要なソフト |
特になし |