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ジョージルーカス教育財団の映画“Learn & live”も日本語化――NECAカンファレンス開催!(後編)

2000年09月04日 12時51分更新

文● 船木万里

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8月31日、山王パークタワーのNTTDoCoMoセミナールームにおいて、NECA(Nippon Educational Computing Association)の主催する“NECAカンファレンス”が行なわれた。NECAは、全米最大規模の情報教育カンファレンスであるNECC(National Educational Computing Conference)への参加、情報の窓口として活動している。昨年に引き続き、今年は日本から2人の教員がNECCに参加して事例発表を行なった。

文部省大臣官房政策課長の寺脇研氏、はこだて未来大学教授の美馬のゆり氏によって、総合的教育のあり方や情報教育の意義などについての講演が行なわれた後、ジョージルーカス教育財団理事、山田治氏から教育用映画についての説明に続いて、NECCへの参加報告があった。

ジョージルーカス教育財団の教育用映画を日本語化

寺脇氏、美馬氏の講演の後、NECA事務局代表の今野恵理子氏より、教育用オムニバス映画“Learn & live”の紹介と、その冒頭部分の上映が行なわれた。

ジョージルーカス教育財団の教育用オムニバス映画“Learn & live”の一場面

ジョージルーカス教育財団理事の山田治氏はサンフランシスコ在住で、財団の仕事に携わって10年になる。ジョージ・ルーカス氏本人に直接依頼されて、この財団理事を務めるようになった。

ジョージルーカス教育財団理事の山田治氏。“Learn & live”への日本語化の協力を要請

「ジョージ・ルーカスは映画監督として名を成したが、特に教育に大きな関心を持っている。彼自身、子どものときに満足な教育を受けられなかったという思いから、学校に行かない子供、特にマイノリティーの子供たちの将来を案じ、何とか教育を与えてやりたい、とこの財団をつくった。面白い教育用映画を製作し、学校で活用することによって子供たちに学習への興味をもたせたい、という考えから、“Learn & live”を製作した。この映画はアメリカ教育界でも高い評価を受けており、教材としても利用価値の大きい作品となっている。今回NECAのほうからぜひ日本語化したいというお話を受けて、ここでご紹介させていただいたが、実際の協力企業などは、何も決まっていない状態。お集まりの方には、ぜひお力を貸していただきたい」とアピールした。

先に講演を行なった美馬のゆり氏はこの映画について「これを見た日本の教育関係者は、まずコンピューターがふんだんに使われた授業に目を奪われるようだが、それよりも教師と生徒の関係性を見てほしい。教師が生徒に知識を与えるのではなく、生徒をガイドし、さまざまな事を通して、ものの見方を学ばせようとしている姿勢を見習いたい」と語った。

ウェブ・ポートフォリオと“みかんネット”――NECC参加報告

次に、本題であるNECC参加報告およびNECAの活動報告があった。

今年、NECCで発表したのは、玉川学園全人教育研究所の大谷千恵氏と、熊本県の天水町立玉水小学校勤務、吉冨一樹氏。大谷氏は、玉川学園で英語を受け持ち、ウェブ・ポートフォリオ作成の授業を行なってきた。

玉川学園全人教育研究所の大谷千恵氏。「オンライン授業は単なる教材としてではなく、可能性を広げるもの」

ウェブ・ポートフォリオは学習の蓄積であると共に、外部への公開により、外部世界との新たな交流が生まれるという大きな利点がある。eメールを利用して世界の人と交流を持つことによって、生徒たちは異文化に興味を持ち、また自分自身の文化、多様性についても関心を高めることができるようになった、と大谷氏は発表。生徒へのアンケートでは、最初は“日本人”に対してもネガティブなイメージをもっていた生徒たちが、1年間の授業後は、人間の多様性を認めるポジティブな姿勢へと変化し、さらには困難にチャレンジする積極性も身に付いたという回答を寄せたという。大谷氏は、単なる教材としてではなく、さらに可能性を広げるものとして今後もオンライン授業を実践、研究していきたいとしている。

吉冨氏は'95年からITコーディネーターの仕事を始め、アップルの援助による天水町の学校間ネットワーク“みかんネット”の構築と運営を行なってきた。今回の発表はその活動を中心に、地域ネットワークについて報告した。

学校間ネットワーク“みかんネット”の構築と運営をしている、熊本県の天水町立玉水小学校勤務、吉冨一樹氏

吉冨氏はごく一般的な公立小学校の教員ではあるが、今回海外研修としてNECCに参加。これまで、校長や職員の理解を得てさまざまな活動をしてきた。

「先進的な活動を実際に見たり、海外の人々と直接会って話すことで、大きなメリットを得られた。公立校では、先生が現場を離れることに異議を唱える人もいるし、旅費も自費であれば、なかなか海外研修などに出ることは難しい。文部省などの援助があればありがたい」と、教員研修への公的支援を求めた。また現在、吉冨氏は全国で開かれている教育イベントにできるだけ参加しているが、日本でもNECCのような複数の教育団体による総合的大会が開催されれば、地方からも参加しやすくなる、と語った。

次に所沢西高等学校家庭科教諭の西澤廣人氏によるビデオメッセージを上映。西澤氏は昨年はNECCツアーに発表者として参加、今年はスタッフとして同行した。西澤氏は、さまざまな先生たちとの出会いや、アメリカで発表したことによる自信が、その後の自分自身に大きな影響を与えたと語った。

所沢西高等学校家庭科教諭の西澤氏のビデオメッセージ

最後に、NECA事務局代表の今野恵理子氏がNECAの活動について報告を行なった。NECAは現在、アメリカのNECC参加への窓口として活動している。今後は日本の教育団体とゆるやかな連携を保ちながら、アメリカのインターフェースとして交流を深めていきたい、と今野氏は語った。

NECC事務局代表の今野恵理子氏。NECAはアメリカのNECC参加への窓口として活動

今後事務局は、NECC参加教員の推薦委員会設置、ジョージルーカス教育財団の映画“Learn & live”の日本語化、さらには在日米軍基地内の学校交流など、デイリーな活動を開始する。またNECCへの参加も恒常的なものとし、来年はできるだけ多くの先生方に参加していただけるよう活動していきたいとした。

マイクロソフト、アップルなど今回のカンファレンスの協力企業関係者が挨拶と声援を送り、カンファレンスは終了。その後、希望者は会場となったNTTDoCoMoの最新設備見学に参加した。

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