このページの本文へ

3次元画像を作成する先端技術を紹介――3Dコンテンツ制作セミナーより

1999年05月21日 00時00分更新

文● 編集部 原武士

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

21日、東京・六本木のメディアヒルズにて、(株)ジェネックスが主催する3Dコンテンツ制作セミナーが開催された。内容は、写真データから3次元データを作成するソフトの紹介と、3次元スキャナーを利用した3次元の顔データ作成ソフトの実演。

今回紹介した両ソフトウェアとも、米MetaCreations社の提唱する3次元画像用のファイルフォーマット“MetaStream”によるファイル出力に対応している。Windows 2000は、MetaStreamに標準で対応しており、ブラウザーを利用して3次元コンテンツの表示が可能になる。今回のセミナーは、製品の紹介だけでなく、今後のインターネットにおける3次元コンテンツの普及を進める目的も含まれている。

写真から3次元データを作成する『CANOMA』

はじめに、MetaCreations社、東京支社のジェネラルマネージャー、吉原周路氏が写真から3次元画像を製作するソフトウェア『CANOMA』を紹介した。

CANOMA吉原周路氏
CANOMA吉原周路氏



この製品は、写真などの画像データを参照しながら、マウスで立方体などを配置する3次元コンテンツ作成ソフト。四角形や三角形で構成される比較的簡単な物体であれば、専門知識がなくても時間をかけずに3次元データを作成できる。また、複数の写真を使うことで、1方向からだけでは見えない部分にもテクスチャーを貼り付けられる。3次元データの出力フォーマットはDXF、VRML2などに対応する。

MeraCreationsでは、この製品に対して、アプリケーション用のオブジェクト制作のほか、企業での製品プレゼンテーションや、ウェブの通信販売における商品紹介での利用を期待しているという。

実演では、紙の上に置いた箱を撮影した画像データから3次元データを作成した。直方体型のワイヤーフレームの頂点を、画像データの箱の頂点部分に合わせて作成ボタンを押すだけ、約1分ほどで3次元データが作成できた。他にも、ノートパソコンを3次元画像化しMetaStreamで出力して、ブラウザーで参照するというデモも紹介した。

画面に映っているのは2次元画像、ワイヤーフレームの直方体を箱にあわせて設置する
画面に映っているのは2次元画像、ワイヤーフレームの直方体を箱にあわせて設置する



完成した3次元画像、写真から読み取れない方向のテクスチャーは存在しないが、プレゼンテーションにはコレで充分だろう
完成した3次元画像、写真から読み取れない方向のテクスチャーは存在しないが、プレゼンテーションにはコレで充分だろう



街の写真から作った3次元データ。ウォークスルーによるアニメーションデータも作成できる
街の写真から作った3次元データ。ウォークスルーによるアニメーションデータも作成できる



この製品は、Windows 95/98/NT 4.0および、Power MacintoshのSystem 8.0以上に対応する。現在、英語版を同社のウェブサイトで販売中(499ドル、約5万9880円)。日本語版は現在開発中とのことで、7月半ばに発売予定という。

吉原氏「この製品は、2次元画像データを参照しながら立体データを作成することに特化したソフトウェア。部屋の中や、都市の景観など、比較的近距離で遠近感のあるような写真への処理が得意。3次元データの作成を、もっと簡単にしようというコンセプトで作った。今後のパブリッシング市場といえるインターネットでの利用に期待している」

3次元スキャナー『RealScan 3D』

続いて、ジェネックス、代表取締役の伊場俊男氏が、米Read3D社の3次元スキャナー『RealScan 3D』を利用した3次元顔データの作成を紹介した。

RealScan 3Dを紹介する伊場氏
RealScan 3Dを紹介する伊場氏



この製品は、人間など複雑な形状の3次元オブジェクトから、レーザーによる3次元座標データとCCDカメラによるテクスチャーを取りこむもの。付属の3次元画像処理ソフト『Ray Dream Studio 5』(MetaCreations製)を利用してデータを取り込む。

ひとつのオブジェクトに対して、複数の方向からスキャニングし、そのデータをソフトウェアで合成することでひとつのオブジェクトデータが作成される。人間の顔を取りこむ場合には、最低でも8回のスキャニングが必要という。

実演では、まずサンプルの子供の画像の合成を紹介した。人間の顔の場合、目の開き具合や、口の開き具合が異なる。そこで、正面から撮影したデータをオリジナルとして定めて作業を進める。まず、オリジナル画像の特徴点(目じりや鼻の頂点など)を数点選択し、その点に対応する点をもう1枚の画像に設置する。後は合成ボタンを押すだけで、3次元データが自動的に合成される。また、完成したオブジェクトのポリゴンの頂点数を間引くことで、利用する環境に合わせた品質のコンテンツを制作できる。

子供の顔を2方向から取り込んだデータ、左側の画像で約1万ポリゴン
子供の顔を2方向から取り込んだデータ、左側の画像で約1万ポリゴン



合成して作られた顔のデータ、頂点の間引きにより700ポリゴン程度で表現されている
合成して作られた顔のデータ、頂点の間引きにより700ポリゴン程度で表現されている



次に、セミナー参加者を実際にスキャナーで読み取り、顔データを制作した。読み取りは1回につき約2秒、2回スキャニングし合成するまで、約5分程度しかかからなかった。

スキャナーで読み取っているところ、早すぎていつ読み込んだのか良くわからなかった
スキャナーで読み取っているところ、早すぎていつ読み込んだのか良くわからなかった



完成したデータ。リアルすぎて少し不気味
完成したデータ。リアルすぎて少し不気味



この製品には、1CCDタイプの『モデル250』(270万円)と3CCDタイプの『モデル350』(398万円)がある。対応OSはWindows NT4.0、Open GLに対応するグラフィックボードが必須となる。

伊場氏「CANOMAは直線の多いデータの作成に向いているが、この製品は曲線の多いものの取り込みに適している。アメリカの通信販売サイトstyleclick.comでは、3次元のデータによる洋服の通信販売カタログが掲載されている。これは、透明のマネキンに洋服を着せ、3次元スキャナーを使って制作したもの。今後はこのようなウェブサイトが増えていくだろう」



未発表の、エンドユーザー向け3次元データ作成ツールが登場

セミナーの終了間際に、(株)ゲン・テックのマーケティング部の早瀬勝氏が飛び入りで、デジタルカメラなどで撮影した画像から3次元データを制作するソフト『Gen-Trix Web Studio』を紹介した。この製品は、同社が開発した3次元座標処理技術をもとに、(株)NTTデータの援助を受けて製品化したもの。まだ、製品発表されていなく、今回特別にascii24で紹介させてもらえることとなった。

これは、2次元画像をもとに3次元データを作成するソフトウェア。CANOMAと同じコンセプトを持つが、こちらはエンドユーザーをターゲットにしている。対応OSはWindows 95/98/NT 4.0。価格は1万円台後半の予定で、6月24日に出荷を予定している。

作成されるデータは、オリジナルのデータ形式だが、インターネットを利用して配信できる。データの参照には、同社が提供する無料のブラウザー用プラグインが必要となる。プラグインの対応ブラウザーはNetscape Navigator 3.0以上とInternet Explorer 4.0以上で、対応OSはWindows 95/98/NT 4.0および、MacOS 8.0以上。

Gen-Trixの画面
Gen-Trixの画面



今回のセミナーは、3次元コンテンツの制作が目的だったのだが、すべてがインターネットを意識した製品になっているところが興味深かった。また、予想以上に簡単に3次元データを作成できることも驚いた。自分のホームページを持っていない人も、これを機に3次元コンテンツのあるオリジナルウェブサイトを開いてみてはどうだろう。

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン