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【INTERVIEW】「差別化をしないと生き残れない」--日本最大の書店、ジュンク堂大阪本店岡山店長に聞く

1999年05月13日 00時00分更新

文● 編集部 綿貫晃

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日本最大の書店となる、ジュンク堂本店が3月16日にオープンした。大阪の堂島に位置し、フロア面積は1480坪。オープン初日には1万人が来客し、3000万円を超える売り上げを記録したという。パソコン書籍の動向や書籍のオンライン販売の話をまじえて、ジュンク堂本店の店長の岡山氏にインタビューした。

「本は宝の山」と語る店長の岡山氏
「本は宝の山」と語る店長の岡山氏



--ジュンク堂本店のコンセプトは?

「空間を楽しんでもらうように、視覚に訴えたいと考えています。本に圧迫されるわけではなく、1日中気持ち良く過ごせるスペースを提供していきたいと思います」

店員が電子検索に負けないインテリジェンスを身につける

--お店の狙いなどについては、後でまたお聞きするとして、コンピュータ関連書籍の動きなどについて教えてください。

「本店のジャンル別売上げのベスト3は、1:理学書、2:コンピューター書、3:医学書となっています。この3ジャンルを合わせたシェアは全体の22%に達しています。ゴールデンウィークでは医学書が全ジャンルでトップシェアになりました。この3ジャンルはもちろん力を入れますが、全ジャンルとも力を入れていきます」

--最近、書籍のオンライン販売が話題になっていますが

「ジュンク堂でも計画はしています。ただ、決済方法やデーターベースメンテナンスなど考えなければならない部分も多く、中途半端な状態で始めるつもりはありません。店頭販売の脅威になるとも考えていますので、近々始める予定です」

--オンライン販売も含め、書店業界の将来はどうなると思いますか?

「現物を見ないで買ってもいいというお客様が増え、オンライン販売の可能性は増えていくと思います。そのようなお客様は、別にそれで構わないと思っています。ただし、現物を見たいというお客様の需要は間違いなくあります。今後オンライン販売のリファレンス機能が進化していくと思うので、書店では店員のリファレンス能力を高めていかなければなりません。機械に負けたら、もう書店は生き残れません。今後の書店は、店員のレベルアップと、何かに特化した差別化を図らないと生き残れないはずです」

--書籍はどうなると思いますか?

「電子データの販売も含めたオンライン販売は増えると思いますが、紙の媒体は絶対残ります。逆に現在電子データと言われているものがなくなって、新しい媒体に置き変わるかもしれません」

「書籍販売の厳しい状況は今後も続くと思います。出版社は書籍の方向性をはっきりさせて、作り過ぎず、並べる書店を選ぶようにすべきでしょう。不況でも、ベストセラーやロングセラーはもちろんありますし、お客様は本当に欲しいものにはお金を出しています。無理に値段を下げてばらまくより、小部数で多少高くても良いものを作るべきです。お客様は多様化していますから、そのニーズに答えていって欲しいものです」

専門書と検索と座り読み

--他店との差別化のために何をしていますか?

「広大なフロア面積を生かして、他店では置ききれないマイナーな本を置いています。他店では工学書を専門書として、品揃えを強化していますが、うちでは全ジャンルを専門書ととらえています。もともと専門書が得意なジュンク堂ですが、全方向において、特殊なものまで取り揃えています。また、他店ではやっていない自由価格本の常設コーナーや出版社別の常設ブースなど新しい取り組みもしています」

取材時にはガーデニング書籍コーナーに、本物のガーデニングが
取材時にはガーデニング書籍コーナーに、本物のガーデニングが



--検索コーナーがあると聞きましたが

「取次(本の問屋)のデーターベースとつなかっており、書名やISBNコードで検索できるようになっています。本当は棚の位置も表示できるはずなのですが、まだ調整中で近々可能になります」

--ジュンク堂さんは、早くから机とイスを書店に並べて話題になりましたが

「現在は同じような形態を取る店が増えてきました。(フロア面積にしても)ハードでは、もう差別化できなくなってきているので、応対やサービスなどソフト的な面で差別化していきます」

日本一の大きさを生かす

--それでは、あらためて本店のターゲットについてお聞きします。

「当初は平日のビジネスマンをターゲットにして、土日は休みにしようとまで考えていました。しかし、いざオープンしてみると休日の方が平日の2倍の売上げがありました。近隣のビジネスマンがメインと想像していたのですが、土日は広範囲から幅広い年齢層が来客していただいています。ターゲットは全方向に広く取っています。子どもから学生、大人まで、成長に合わせた品揃えをして、ジュンク堂とともに育ってほしいと考えています」

--実際のお客様の反応は?

「オープン当時は混雑し過ぎて、対応し切れずにお叱りの言葉をいただいてしまいました。ただし、広さと品揃えに、お客様は喜んでいただけたようです。目的買いだけではなく、店内を回って、さまざまなコーナーに興味を持っていかれるお客様も多いです。広さと人気のせいか、店頭案内のパンフレットは最初の10万部があっという間になくなり、現在30万部まで刷りました」

--これだけの品揃えだと、社員教育も大変ではないですか?

「お客様がそれぞれのジャンルを一番よく知っているので、お客様が先生です。お客様のさまざまな意見や要望を聞きながら、日々勉強しています。つねにアンテナを張って、情報を吸収するようにしています。平台が無い特殊な棚なので、本の見せ方の教育には気を使っています」

--ライバルは?

「特に他店を意識はしていません。ただ、支店間どうしでは競争し合っており、つねに店長間では売上情報のやりとりをしています。コンピュータ書に関しては関西一番店を目指したいと考えています」

--今後のジュンク堂は?

「再来年をめどに、池袋のジュンク堂を増床して、日本一のフロア面積にします。そして、東西の拠点を揃えるつもりです」

--岡山店長にとって“本”とは?

「新刊を開けるときの喜びですね。この気持ちは何年経っても変わりません。宝の山を開ける時のような“わくわく”した気持ちがあります。私は、お客様にもこの“わくわく”を伝えたいと考えています」

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