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'99新春スペシャル・トーク元麻布春男X塩田紳二 「そう思わん?」Part1

1999年01月04日 00時00分更新

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語る人:元麻布春男、塩田紳二
司会・進行:ASCII24デスク鹿毛正之、甘粕英
企画・構成:河村康文

●Linux、Windows NTをどう見るか

甘粕(以下、甘) '98年を振り返って'99年を展望する「'99新春スペシャル・トーク」です。今日は、ASCII24連載コラムでお馴染みの元麻布春男氏と塩田紳二氏にお越し頂きました。

えーまず今年はソニーのVAIO Note505に代表される薄型マグネシウムノートパソコンのブームがあって……、とかいう調子でよく凡庸なパソコン雑誌などがお決まりのようにやってますが、うちはそういうネムい企画はやりません。今日聞いた話ですが、Linuxの出荷数量が'97年から'98年にかけて212%も増えたそうです。

元麻布(以下、元) Linuxに出荷数量もなにもあるの?

塩田(以下、塩) RedHatは各社の推定出荷量の統計を取ってる。自分とことよそが出荷した分を合わせてこんなもんだろうみたいなね。今までだいたい倍々ゲームで来てるよ。かといって、ダウンロードした数をカウントするわけにいかないからな。

鹿毛(以下、鹿) download.comなどから落とすなら分は統計取りやすいですが。

 ほとんどが.eduからでしょ。

 あと、Linuxはレジストレーションしてないでしょ。FreeBSDは任意だけどユーザー登録できるようになってて、公式に登録した人の集計みたいのはできてるんだよね。ダウンロードしたからといって、実際に使ってるとは限らないからね。

 買ったからって使ってるとは限らない(笑)。ハードディスクの肥やしになってるかもしれないし。

 '99年はどこか大手メーカーがLinuxプレインストールマシン出すかね。

 だって日立がサーバーーでやるでしょ。Appleも次のMacintoshでやるっていうし。

 それ、リテール販売はしないそうです。教育市場などを狙うとか。AppleはThe Open Groupと共同でMacに最適化した『MkLinux』を開発してましたからね(http://www.mklinux.apple.com:80/)。

 サーバーでしょ。AppleはサーバーOS持ってないから。

 それってMicrosoftへの嫌がらせでやってる商品じゃないか。

鹿 Rhapsodyはサーバー用にダメですか?

 Rhapsodyを出したとして、企業の基幹系に入るのにいったい何年かかるか。Windows NTだってまだ入り切れてないのに。NTが出て何年になる? もう5年か。あれだけ人とカネを使ってさ、それでもまだまだだもん

 しかも他の企業をあれだけ集めてさ。Appleは難しい。

 NTも伸びてはいるけどね。NT Serverは'97年に比べて'98年は36%伸びてるそうだから。NTじゃなくて次はWindows 2000か。でもまだピンとこないから、とりあえずNTと呼ぼう。

 確かに伸びてはいる。ただし大企業の勘定系とかに入り切れているかというと……、今がんばってますって感じだよね。

 いわゆる基幹業務系でも1、2社採用したところがあったけど、三和銀行だっけ?

 ブリヂストンに、アメリカン航空……。

鹿 アメリカン航空っていうことは、セイバーもですか?

 いや、あれは違う。セイバーはアメリカン航空と別会社だから(※ セイバー=アメリカン航空系列のオンライン予約システム)。

 あとスターバックスコーヒー。同じシアトルの会社というよしみでしょうか。

 そいうえばMSNのサーバーってNT Serverになったの?

 なったって聞いたよ。なってもどうせ日本語版じゃないよ。マイクロソフト日本法人も含めて。公然の秘密。

 最初は自社のクラスターサーバーかなんか使うということだったけど、ぜんぜん話が違ってた。

●NT Serverがオンラインサービス向きじゃない理由

 Intelプロセッサー+NT Serverのダメなところって、扱えるメモリーが少ないこととか?

 というか、何かというと再起動しないといけないから、オンラインサービス向きじゃないんだよね。

 あと、リソースをリークしちゃうとかも?

 うーん、それはアプリケーション側にも責任はあるからね。メモリーを掴んだまま話さないとかが困る。

 障害が起こったときにトラックしにくいんだよね。

 それで原因がよく分からないんだよね。ちょっと設定を変更したっていっちゃあ再起動しないといけないんだけど、何万人とアクセスしてるときに今からリセットじゃあね、オンラインサービス向きじゃない。

 クーリングファンとかハードディスクをホットプラグで交換できても、OSがリスタートしなくちゃいけないんじゃ困るよね。

 結局、だからPlug and Playが必要なわけよ。パワーマネジメントとPlug and Playは実は同じものだからさ。リスタート云々も同じ事で、要するにOSのモジュールをダイナミックにロード/アンロードできるかということだからね。

 そうはいってもMicrosoftは来年『Windows 2000』を出すと。

 来年後半ね。かなり遅くなるでしょう。

 でもWindows 98とあまり変わらないでしょ。だってTCP/IPの設定をちょっと変えるだけで“リスタートしますか”とか聞いてくるのは相変わらずだから。

 あれがイヤだよね。

 でもあれ実際にはもうその時点で設定は変わってるんだよね。

 なんかキャッシュか何かの都合があるんだよね。

 BeOSとかだとリスタートしなくていい。直ちに設定変更が生きる。

 しなくていいね。Windows 2000もそれを目指していることは確かだけど。

 リスタートしないとかえってコワいしね。メールサーバーとかさ、何かメンテしている最中にもメール来たりするわけじゃない。

 だからさ、セカンダリーサーバーがいるですよ。必ずプライマリー1台じゃいかんわけ。ぼく、マシンって必ず2台いるものだと思うようになったよ。だって、そもそもアプリケーションのインストールがコワくてできないもん。まず実験マシンに入れてみて問題がないか確認して、なおかつそれが完全にアンインストールできることを確認してからでないと使いたくないもん。

 それ以前にインストールで失敗するやつとかあるじゃん、MFCなんとかがバージョンが違うとか言ってさ……。

 コントロールDLLのうんたらがとか……。

 ……があるとかないとかさ。それがさ、原因を正確に指摘しないで、無理矢理ファイルを置き換えようとして失敗して延々とリスタートを繰り返すインストーラーとかあるでしょ。こないだ、NT用のFaxソフトがそれでさ、5回ぐらいリスタートを繰り返してからサポートに電話したら「すいません。MFCのなんとかDLLのバージョンを正確に判断してないミスです」みたいな。

 そうやって認めてくれるだけエラいじゃん。

 そう、そうやってサポートしてくれるところはまだいんだけどさ、「そんなはずはない」とか言い張るところが多いよね。

 「うちでは動いている」とかさ。あたりまえだろって。

 Windows NTのService Pack 4(SP4)出たね。あれ、差分インストールしようとしたら、うまくいかない。“ファイルが壊れています”とか言われる。

 Internet Explorer 4のSP1とかにしてる? 確かオプションパックのときはSP1が入ってないとダメで、IE4のSP1になる前のやつって、レジストリーが何メガか以上になるとインストールできなくなるというバグがあったんだよ。

 あ、よく考えたらIE5のβ版だった。

 それが原因なんじゃない。

 そんなのワークマシンにしちゃ絶対ダメ。

 Service Packもコワいよね。

 めちゃくちゃコワい。

 SP入れるとかえって状態が悪くなることある。

 ざらにあるよ。友達に「もう入れた? 入れた?」って聞いてさ。

 雑誌にCD-ROMの付録で付いて犠牲者がいっぱいで出てからでも遅くない(笑)。元麻布さんだっけ、SP2を入れたら動かなくなったって言ってたの。

 うち。動かなくなったというか、RASが繋がらなくなった。

 うちはRASが最初から動かなくて、電話がかかってきてるのにOSが取らないの。

 うちは逆に初めちゃんと動いてたんだよ。

 SP2を入れたら動かなくなったっていうからやめたの。

 それでアタマにきてさ、NT 3.51に戻したんだもん。アプリケーションのインストールさえ信用できないのにOSなんて信用できるわけない。

 アプリケーション信用できない、サービスパック信用できない、IEとか信用できない。

 だってMicrosoftのアプリをインストールしたって問題起きるんだもんね。他社のならまぁしょうがないかなと思うけどさ。DLLのバージョンが違ってるとさ、Outlookを何回起動しても落ちるとかさ。

 とかいうふうに、いろいろイヤなこともあるんだけど、結局今はWindowsしかないわけだ。

 今はね。

 '99年はどうですかね。

 変わらない。1年じゃ変わらない。日立のBeOSプレインストールしたFloraの発表会に行ったんだけど、あの画面を見て昔のMacを思い出した。あの日本語フォントの汚さ。昔のMacはこうだったなって。道のりは遠いよね。でも日本語が使えないのと使えるのでは大きな差があるので、いいと思うけど、でもそれで急にWindowsが置き換えられるかというと、それは望むべくもないけど。

●AMDが『K7』をサーバー/ワークステーション用と言わざるを得ない事情

 プロセッサーは'99年はどうなんでしょう、Intelもかなりスケジュール前倒ししてるし……。

 してる。

 一方でAMDは『Sharptooth』、『K7』のリリースを予定していて、アメリカでは現状で1000ドル以下のPCではK6とK6-2を合わせたシェアが50%近くいってるという統計データもありますが。

 '98年秋のComdexでK7が動いてるってメディアの皆さんは一斉に伝えてたけど、K7が動いていること自体はどうでもいいの。あれでおもしろいのは、K7が普通のクライアントPCのマザーボードで、しかもWindows 98で動いていたことがおもしろいわけ。だって、10月の技術説明会でAMDはK7はサーバー/ワークステーション用って言ってたんだよ。で、Comdexで蓋を開けたら、2チップ構成のチップセットでさ、IDEしかないマザーボードでさ、Windows 98でしょ、それじゃ単なるクライアントPC用プロセッサーじゃんって思った。

 結局、普通のクライアントPC用のプロセッサーとして出さざるを得ないと言うか。

 もちろん本当の狙いはそっちよ。普通のクライアントPCがターゲットであることは明らかなんだけど、そう言えないのは、たぶんSharptoothがあるから。だって、K7がボリュームPC用だったら、Sharptoothは何用なのってことになる。1000ドルPC用のCeleron対抗プロセッサーですかと。

 そうすると、そういうローコストマシン用のプロセッサーというのは今だいたい100ドル台でしょ。ところが、Sharptoothは2100万トランジスタ程度でさ、K7と100万トランジスタ程度しか変わらないのよ。それをさCeleronと同じ値段で売らなきゃいけなくなったら、そりゃしんどいよ。元が取れないもん。

 Celeronはアキバで1万円ほどで買えるようになったけどさ、Celeronのダイって基本的にDeschutesと同じで、完全に元が取れて久しいわけで、これから元を取らないといけないものと一緒にできない。

 AMDは来年ドレスデンのFAB30が軌道に乗って0.18ミクロンでシュリンクするまではSharptoothは安売りしたくないし、K7ももちろん安売りはしたくない。だから、SharptoothがPC用でK7はサーバー/ワークステーション用と言わざるを得なかったんじゃないかという気がする。実際さ、AMDがサーバー/ワークステーション用プロセッサーで成功きるかというと、簡単じゃない。だって実績ないんだもん。

 今日から始めますってことだね。

 そう。ひょっとするとK7はすごくいいプロセッサーかもしれないよ。それと、ComdexでAMDが自社製のマザーボード、自社製のチップセットでK7を動かしていた事ね。これはエラいよね。従来なかったことだからね。

 K6-2の発表会の時に使ったマザーボードは、記憶が確かならMicrostarの『MS5169』じゃなかったかな。それでも規模とか生産能力の問題もあるので、AMDは戦略としてまだ大手のPCメーカーと喧嘩はしたくないわな。当面、Intelみたいに自社ブランドのマザーボードを売りまくるみたいなことはやらないだろうし、チップセットメーカーと喧嘩になるようなことも避けると思うけど、いずれは“ミニIntel”になるでしょうね。

鹿 ミニIntelになるということは、Intelフォロワーになるということですか?

 違う。ビジネスモデルがIntelと同じになるということ。プロセッサーはもちろん、チップセットからマザーボードまで手がけるメーカーになると。実際、K7はもうIntel互換じゃないしね。いずれはAMDもソフトウェア部隊を強化して、OSのポーティングとかもできるようにならないといけないんじゃないかな。

●“Wintel”の時代は終わってもビジネスモデルは同じ

 この業界ではハードはIntel、ソフトはMicrosoftというそういう成功モデルしかないから、みんな真似しちゃう。“Wintel”の時代は終わってもやり方は何も変わらないみたいな。

 Sun Microsystemsは別のビジネスモデルをやってるかというと、やってるようにも見えるけれども、それは単に今はあまり成功してないからそう見えるだけで、成功したらどうなるか分からないと思う。

 うまくいったら、あそこもMicrosoft型支配だよ。

 今は成功してないから正義の味方みたいなことも言うけど。

 Javaだって、左手で離しててオープンなふりをして、右手では離さないみたいなとこあるからさ。

 だけどさ、Sunが何と言おうと、JVM(Java Virtual Machine)は少なくともWindows上で動かす限り、Microsoft製のほうがはるかに出来がいいよね。

 Sunはそこが詰めが甘い。

 だってJavaのあるWebサイトへ行ったときってさ、NetscapeよりIEのほうが絶対快適だもん。

 Sunっていつまでたっても追いつけないというか、今のはSymantecのが入ってるんだっけ。

 PC用はね。

 ちょっと情けなさすぎる。NetscapeもAOLに買われて、今度はSunの言うこと聞かなきゃいけなくなった。

●MicrosoftとSun+Oracleは本当に対立しているのか?

鹿 Oracleみたいなスタンスっていうのはどうでしょう。

 Oracleのスタンスっていっても、あれは社長のカラーというべきじゃないか。

 ただ、Oracleのオープンワールドとかすごい集客なんだよね。商売上手なところもあるし、ある意味ではエンドユーザーに近いところにいるというか。なんとかソリューションとかさ。

 エンドユーザーに近いような遠いような。

 ユーザーに近いところで見てるというか、そうすると関係が濃くなるじゃない。VARみたいなものは入るにしてもさ。でも、やっぱりOcarleがNetwork Computerとかでうまくいったらね、Microsoftみたいにならないのかというと、ならない保証はないよね。今は殊勝なこと言ってるけど、仮にNCが大成功したらMicrosoftみたいにならないかという話になるとさ。

 NCが成功するかというとさ、あんまり成功する気がしないわけ。Microsoftは少なくともWindowsに社運をかけてるよね。MicrosoftはWindowsがぽしゃったら会社がぽしゃるけどさ、OracleはNCでリスクを負わないもん。彼らはデータベースでは社運をかけてるだろうけど、NCには社運をかけないからさ、なんというか心の琴線に触れてこないよね(笑)。

 琴線に触れないというのはいい表現だな。確かに、Microsoft批判のところは威勢がいいんだけど、具体的な話になるとすぐ「それは広範なサードパーティさんが……」とかなるんだよね。

 Ocarleってさ、Microsoftと対決してるみたいだけど、必ずしも全面的にそうなっているわけではないというか。

鹿 製品が正面からぶつかってるわけじゃないですからね。

 SQLサーバーとOracle8では多少のバッティングあるけども、お客さんが違うよね。逆に客の取り合いにはなってないんじゃないかなって気がする。第一、ああいうふうにいかにも対立しているようなことを言うけれども、裏では馴れ合い的なところもあるんじゃないか。

 適当に市場分割して……。

 そうそう。しかもOracleってメインフレームのほうの客があるわけでしょ。今まだメインフレームとかミニコンを使ってるとかいう場合、Microsoftはぜんぜん関係ないしね。ぶつかってる部分もあるのかもしれないけど、だとしたら勝手にエリスンちゃんが言ってるだけみたいなね。

 Oracleは、少なくとも明日のNetwareにはなりたくないだろうね。

鹿 NCって本気で売る気あるんですかね。

 だってOracle自身はやってないからね。

 NCを製品化したメーカー、フナイとユニデンだっけ、今どういう気分になってるかだよね。

 JavaStationというのもあまり見ない。

 でもJavaはジャストシステムもやってるじゃん。『一太郎Ark for Java』。

 ジャストはさ、Microsoftへの対抗上ということもあるんだろうね。それと、Javaがもし流行るんだったら先にやっておいたほうがいい。少なくともVJE-Penよりはあっちのほうがいいと思うな。

 でも一太郎Ark for Javaって、本体のプログラムサイズがフロッピー1枚に収まるというのならば……。

 『一太郎9』って何だったの? ってことになる。

 バージョンアップする度に肥大化していくという従来のプロセスというのが、本当にユーザーの求めることだったのかという気がする。

 機能をどんどん追加してバージョンを上げていくということがソフトウェアメーカーの体質になってる。バージョンアップ自体が目的のバージョンアップになっている。

●オープンソースは原始共産制(?)

 だから“オープンソース”なんでしょ。

 ただ、オープンソースだと、ワープロみたいなアプリケーションでどこまでいけるかね。

 どこかが今度オフィス・スイーツものをオープンソースをやるという話を聞いたよ。データベースもきっとどこかやるよ。だって、「DOOM」だってオープンソースになってるんだよ。

 オープンソースと言った瞬間に、どこかの会社のクローズドなものじゃないから安心みたいな気分が今ある。

 これからはオープンソースかもね。例の「ハロウィーン文書」(Linuxとオープン・ソース・ソフトウェアに関するMicrosoftの戦略について書かれたMS社内の秘密メモとされるドキュメント。10月末にリークされた)で、ソースコードがオープンになっていることによって逆にユーザーから長期的な信用を得ているって分析してるのね。最終的にはつまりユーザーが自分でメンテナンスすればいいだろうみたいな。そういう意味では5年、10年前とはユーザーの受け入れ方が違ってきたかな。

 だけどさ、それ原始共産制と一緒でさ、ソースコードがオープンだからって、じゃぁどんな問題も全部ネットワーク上のコミュニティーでメンテナンスできるのかってことになるよね。やってられるのかと。

 でも現状は、ニュースグループとかに入って3ヵ月ぐらいやってポンと話題をまくと、ガーッと解決するぐらいのサイクルにはなってきてるみたいだね。ものにもよると思うけど。似たようなソフトウェアがいくつもあって、失敗したプロジェクトをつかむとまずいかなという気はするけど。

 自動車とかだとさ、メーカーが責任を負うしかないけど、ソフトウェアって、どこまでいってもメーカーは限定的な責任しか負えない。

 だってそれ、“使用許諾契約書”にそう書いてあるんだもん。使った結果については一切責任を負わないと。

 コンピューターである以上、発生しうる不具合を自動的に検証する方法がないということが、コンピューターができる前に証明されてるからさ。コンピュータ業界の人たちはみんなそういうものだと思ってるよね。でも、そのうちソフトウェアで責任取らされるところが出てくるんじゃないかな。裁判になってさ、注意すべきところを怠ったとかさ。

 あとは使用許諾契約書自体が違法であるとかさ。これはおかしいと。

 でもそれOKせざるをえないよね。OKしなきゃソフトをインストールできない。

 しかも使ってみなきゃ分からないんだもんね。パッケージを開けた時点で承諾したものとみなすというのが違法だという議論は昔からあるよね。でも裁判になった話は聞かない。

●ユーザー・インターフェースとはなにか

鹿 日本のソフトウェアメーカーが今後もし力をつけたとしたら、どうなります?

 日本のソフトウェアメーカーがこれから力をつけるとは思えないけどね。OSもマイクロプロセッサーもアメリカのメーカーが握ってるからね。

 ワープロとか表計算はもう勝負がついてるでしょ。

 もう終わってる。ワープロ/表計算に関してはアメリカのメーカー間でももう終わってる。そういう意味でOffice 2000って言っても、なんかあまり新鮮味がない。

 イルカくんが出てきてさ……。

 イルカを別のキャラに変えられるとかさ。きっとピカチュウとか“エヴァンゲリオン”の“綾波”にしたのとかが、売りもの/フリーを問わず市場にあふれることになるんだろうなーとか思った。

 しかもそれ今度から枠(ウインドー)がなくなっちゃったからさ、画面に直接キャラが出てくるんだよね、しかも3Dで。だからピカチュウでしょう。

 ピカチュウが出てきてピカっと光って何か言うとかさ。Office 2000の説明を聞いたとき、まずそう思ったもんな。

 ワープロ/表計算はネタが出尽くしたと。

 だってパソコン以前に紙の上でやってたことをコンピューターに移し替えただけのことではもう限界が来てるよね。グラフィカル・ユーザー・インターフェース(GUI)もそうだけど、デスクトップとかさ、実際にあるもののメタファーでやってたら、そこに行き着いたらもう終わりだよね。

鹿 マウスの発明者であるDoug Engelbart博士も、GUIは結果的にユーザーがそれに縛られてしまう側面があると言ってます。

 GUIは、見えないものは扱えないからね。

 いちばんいいのはさ、コンマンドプロンプトから“○○がしたい”と打ち込めばできちゃうというの。

 レポートを書いておいてくれみたいな?

 音声認識もそうなんだけど、健常者でタッチタイプできる人には用がないんだよ。

 GUIって、普通最後は要らなくなる。キーボードショートカットで何でもやるようになって、しかも全画面で使うなら、結局DOSのときと同じじゃないかってことになる。

 複数のアプリケーションを同時に使う環境としてのWindowsは重要だけど、GUIがそれほど重要かというと、よく分からない。

 何をするにもダイアログが出てきてボタンを押したりメニューから選んだりという作業がやたらと増える。ときどきアイコンを間違えてクリックして、それが運悪くすごく重いアプリだったりすると……、脱力する。なんだかすごく幼稚なオペレーションという感じがする。

(Part1終わり、Part2は1月5日に掲載予定。お楽しみに!)

元麻布春男氏プロフィール
 “DOS/V”登場以前からIBM PCクローンを個人輸入。Intelアーキテクチャーをはじめデジタルシーンにもっとも詳しい日本人アナリストのひとり。航空機にも造詣が深く、フライトシミュレーターのヘビープレイヤーでもある。

塩田紳二氏プロフィール
 某“家電の巨人”メーカーでパソコンの開発に携わった後、フリーライターとして独立。ハード、ソフト両面での知識と経験と人間漫才のような企画力で雑誌、単行本、Web Zineで活躍中。

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