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教育戦略情報研究所、発足を記念しIT教育セミナーを開催――MSの古川氏やアスキーの西氏が持論を展開

2000年06月21日 00時00分更新

文● 編集部 小林伸也

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IT教育コンサルタント会社の(株)教育戦略情報研究所は21日、同社のキックオフを記念し、“次世代IT教育論”をテーマにセミナーを都内で開催した。セミナーには米マイクロソフト副社長の古川享氏と(株)アスキー副会長で尚美学園大学教授の西和彦氏が出席。両氏は「単なる情報化ではなく、新しいビジネスモデルの提案ができる人材の教育が必要」「ITは仕事も人生も楽しいものにしてくれる」などと持論を展開。パネルディスカッションでは、「私の人生は挫折の連続」という古川氏の“秘話”や、大学教育の実践を踏まえた西氏の発言でセミナーは盛況だった。

(株)教育戦略情報研究所代表取締役の舟本奨氏
(株)教育戦略情報研究所代表取締役の舟本奨氏



同社はIT教育機関専門のコンサルティング会社。IT技術者養成の専門学校立ち上げや、既存の大学・短大の学部改革に関わり、優秀な技術者育成に向けた教育環境作りを指南する。範囲はカリキュラムから学校経営、学生募集など全般にわたる。企業との関係を見直し、企業を単なる学生の就職先にはせず、技術開発から人材育成まで広範な産学協同の実現を方針として掲げている。

すでにコンサルティング活動を開始しており、第一号の学校が9月にもスタートする予定。本年度内に全国10校が事業を開始するという。

「ITは仕事を楽しくするための手段」――西氏


米マイクロソフト副社長の古川享氏。発売されたばかりの『ネットワークウォークマン』を手にソリッドオーディオの利点を説明してみせたが、その際に流れた曲は『Tears in Heaven』。やっぱり“EC(Eric Clapton)”の時代なのか……
米マイクロソフト副社長の古川享氏。発売されたばかりの『ネットワークウォークマン』を手にソリッドオーディオの利点を説明してみせたが、その際に流れた曲は『Tears in Heaven』。やっぱり“EC(Eric Clapton)”の時代なのか……



セミナーではまず、米マイクロソフト副社長の古川享氏が講演を行なった。古川氏は「コンピューターネットワークがメインフレーム中心からインターネットに移行したように、従来の上意下達の組織も壊れた。主従の関係が瞬時に変化するインターネット型社会では、伝統的な先生と生徒の関係も変わってくる」と指摘した。

この変化と平行し、個性の尊重と価値観の多様化、豊かさやゆとりの希求といった社会変化も起きているとし、「デジタル技術は企業の株価アップのためではなく、自己実現や豊かな社会のための手段」とIT化自体が目的となってしまっている一部の風潮にクギをさした。

さらにデモとして、プレゼンテーションソフトとストリーミングムービーの融合によるオンデマンド教育の例を披露。単なる情報提示にとどまっていたウェブが、XMLをベースとした“プログラム可能なウェブ”、ユーザーごとにカスタマイズ可能なウェブサービスへと進化する道筋を描いた。

古川氏は「企業のIT化は、これまでばらばらだった企業システムを同じ仕組みで連動させていくもの。企業や経営者の意識も変わらなければならない」と主張。その上で「業務プロセスの改革や新しいビジネスモデルの提案をできるような人材が必要」とIT教育の目標を示した。

アスキー副会長の西和彦氏。「ビル・ゲイツに『博士号とったよ』と報告したら、『いくらで買ったんだ』と言われた。なんて失礼なヤツだ(笑)。彼は仕事がもう少し暇になったら、きっと休学中のハーバードに戻って卒業しますよ」
アスキー副会長の西和彦氏。「ビル・ゲイツに『博士号とったよ』と報告したら、『いくらで買ったんだ』と言われた。なんて失礼なヤツだ(笑)。彼は仕事がもう少し暇になったら、きっと休学中のハーバードに戻って卒業しますよ」



続いて講演したアスキー副会長の西和彦氏は、「教育界は戦後50年の間に努力してこなかったために米国に遅れてしまった。日本の教育を国際レベルに高められるのは企業だけだろう」と産学交流についての持論を展開。「企業と学校が常に交流し合えば、互いのニーズをつかむことでより深い関係が構築できる」と語り、大学の研究室を窓口とした共同研究や、社会人と学生の両者によるインターンシップの実施といった具体策を提言した。

さらに「インターネットの最大の効果は時間の削減」と指摘。在宅勤務による通勤時間の削減やテレビ会議の普及で移動時間が減り、「節約された時間を上手に使える人が社会から尊敬を受けるようになるのでは」とした。その上で、「人間が創造力を最大限に発揮できるのは、“楽しい”と感じている時。IT化の目的は能率アップとかではなく、仕事を楽しいものすること。ITで人生そのものが楽しくなるということを、次世代の人材は学ばなくてはならない」と語った。

「ツェッペリンと『大学への数学』と精神分析の組み合わせがカッコ良かった」――古川氏

続いて行なわれたパネルディスカッションでは、古川氏と西氏が経験をもとに教育の課題と期待を語り合い、話題はIT教育にとどまらず教育全般に及んだ。

古川氏は「私の人生は挫折の連続だった」と話を切りだし、第一志望の高校に不合格して「そこで人生が終わってしまった」こと、高校時代は「六本木のジャズバーに朝までいて、そこから学校に通った」「当時はレッドツェッペリンのLPと『大学への数学』、みすず書房から出ていたR.D.レイン(イギリスの精神科医)の本という組み合わせがかっこいいと思っていた。大学では精神分析か社会学をやろうと思っていた」などと10代の経験を語った。さらに「これまでの人生では、挫折と出会い、それと西さんの言葉が大きかった」という。

これに対し西氏は、「これまで編集者やデバッガー、ソフト開発者など50種類以上の職種を経験した」「良かったのは、自分でしたいことを自分で決められる立場にあったこと」「20代後半から30代前半が人生の黄金時代だったかもしれない。当時は“神童の孫(正義ソフトバンク(株)社長)、天才の西”と言われたけれど、40歳を超えたら誰にも天才と呼ばれなくなった」「北極に到達するには北極へ、一番になりたければ一番の人に向かって歩くしかない。米国へ行こうとしていた古川さんにはこう言って、いま一番のアメリカに行けとアドバイスした」などと振り返っていた。

    教育情報戦略研究所  TEL.03-5251-7785

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