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日本IBM、Linux事業の本格展開を宣言――「Linux推進部を設置し、全社を挙げてLinuxを推進する」

2000年05月17日 00時00分更新

文● フリーランスライター・風穴 江

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日本アイ・ビー・エム(株)は、17日、Linux関連事業を本格的に推進していくことを明らかにし、具体的な製品/サービス、および組織体制を発表した。同社はもともと、PCサーバでLinuxソリューションを提供したり、JavaやDB2などでLinux対応を実現したりと、積極的にLinuxに取り組んできたことで知られている。今回の発表は、そうした個別事業部ごとのLinux推進路線を、さらに全社的な取り組みにまで昇華させることを宣言するものだといえよう。

具体的には、まず、6月1日付けで、Linux事業戦略の企画/立案を始めLinux関連の活動を全社的に統合する組織として“Linux推進部”が設置される。そして、サービス、サポート体制を強化するために、現在、全社で150人ほどいるLinuxの技術者を、新卒も含めて積極的に採用することで、近いうちに300人に倍増させる計画を進めていくとしている。

「全社を挙げてLinuxに取り組む」と語る、日本IBM社長の大歳卓麻氏。同社のLinux関連の発表会に社長自ら登場するのは初めてのこと。というより、同社の他の発表会でも、社長自らが「出陣」することは稀で、その分、同社の意気込みのほどが伺える
「全社を挙げてLinuxに取り組む」と語る、日本IBM社長の大歳卓麻氏。同社のLinux関連の発表会に社長自ら登場するのは初めてのこと。というより、同社の他の発表会でも、社長自らが「出陣」することは稀で、その分、同社の意気込みのほどが伺える



さらに、昨年末から評価版のオープンソースソフトウェアとして公開している『Linux for S/390』を、同社の正式なソリューションとして提供を開始する。これは、Linuxディストリビューションとしてはターボリナックスジャパン(株)が販売を担当し、LinuxおよびS/390の技術を持つ新日鉄EI事業部システム研究開発センターがサポート面で協力することで実現される。

Linux for S/390は、S/390に提供されている専用OS『OS/390』と同様、S/390上でネイティブに動くOSとして移植されているため(従って、OS/390上のサービスの1つとして動作する“UNIXサービス”とは異なる)、Linuxとして最大限のパフォーマンスで動作させることが可能となる。S/390では、ハードウェアの機能として、1つのシステム上で複数のネイティブOSを同時に動作させることが可能となっているため、OS/390上の基幹アプリケーションとLinuxとの連携という点でも、大きなアドバンテージを提供できるとしている。

PCサーバーの『Netfinityシリーズ』では、今回初めて、『TurboLinux Server日本語版 6.0(OMEバージョン)』のバンドル提供が発表された。このOMEバージョンというのは、製品版のTurboLinux Serverから商用アプリケーションを除き、さらに、1つ1つのソフトウェアパッケージすべてについてIBMがライセンスの確認を行なって、出処やライセンスが不明確で再配布に当たって問題となりそうなものを外したもの(そのため、TurboLinux ServerのFTP版とも若干異なっている)。なお、TurboLinux以外のディストリビューションについても、同様のサービスを検討しているという。

また、Linux対応アプリケーションを開発するソフトウェアメーカーの支援も、同社のLinux戦略の柱の1つとして推進していくという。具体的には、データベースサーバーの『DB2 UDB』やメッセージキューイングサーバー『MQSeries』、グループウェアサーバー『Domino』などの評価版を収録したCD-ROMを開発者向けに無償で提供するプログラムも行なわれる。

情報面では、同社の最新の開発成果を公開する“alphaWorks”、あるいは開発者向けツールを提供する“developerWorks”といったウェブサイトの運営に加えて、ソフトウェア事業部のサポート拠点“ソリューション・パートナーシップ・センター”にLinux専門の要員を配置し、技術サポートや教育サービスの提供が行なわれる。

このほか、同社のアプリケーションサーバー『WebSphere Application Server日本語版』のLinux版を7月31日から提供し、また、システム管理ソフトウェア『Tivoli Enterprise』についても、Linux版を今年中に開発する意向が明らかにされた。

今回の発表は、個々の具体的な事柄以上に、日本IBMが(同社が提供している他のソリューションと同様に)全社を挙げてLinuxを推進する、という姿勢を明らかにしたこと意味がある。このことが、Linuxビジネスに与える“安心感”という影響は図り知れない。今日、2000年5月17日は、ビジネスの世界においても、いよいよ本格的に“Linuxの時代”が到来したことが明らかになった日として、歴史に刻まれることになるだろう。

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