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【Windows 2000 Expo Vol.2】「インターネットは電力のように産業の基礎となる」--マイケル・デル デルコンピュータ会長の基調講演

2000年02月16日 00時00分更新

文● 編集部 鹿毛正之

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このほか、米コーネル大学では1月にWindows 2000への移行を行ない、その結果、パフォーマンスが60パーセント向上し、コストが5分の1に削減されたという結果を示した。

ビジネスに欠かせない可用性、『MS BizTalk Server 2000』のデモも

容易な管理(Manageble)については、ITの発展に従い、企業内におけるリソース管理がさらに重要になるとデル氏は指摘。最近、ハッカーの攻撃が相次いだことでセキュリティーの重要性が再び論議されているが、セキュリティーの問題も、このManagebleに含まれることになる。

Managebleの例として、デル氏はカナダ・トロント地区の学区ネットワークを紹介した。同学区では6万5000台のデスクトップ機と600台以上のサーバーが使われているが、Windows 2000に移行したことで、効率的な集中管理が可能になったという。また、ひとつのドメイン名でセキュリティーを集中管理することができるため、コスト削減の面でも効果があるとしている。

最後の可用性(Flexible)について、デル氏は“インフォメーション・アセット”という言葉を使った。通常、アセット(asset)は資産という意味で使われ、企業にとっての物的資産(不動産や設備など)として捉えられる。だが、eビジネスの時代においては、企業にとって重要なのは情報そのものであり、この情報資産を効率的に管理することこそが、ITビジネスにおいては肝要であることを示した。

可用性の説明に関しては、ここでもdell.comを使ったデモを披露。ユーザー側に表示されるdell.comの画面と、デル社側で見ている画面を比較し、お互いに情報が即座に反映されていることを実演してみせた。

たとえばユーザーが商品の発注を行なった場合、ユーザーの画面には取引の状況が、“in process”(処理中)→“Acknowledge”(受注確認)→“shipped”(発送済み)と、3段階のプロセスで表示される。またデル側にも、進行状況に応じて同様の画面が表示される。デモでは、担当者が受注を確認して発送手続きを行なうと、その結果が即座にユーザー側の画面に反映され、“Acknowledge”が“shipped”に変わるという流れが紹介された。

ここではユーザーとデルという“B to C”(企業対消費者)の例が示されたが、eビジネスの主流である“B to B”(企業対企業)においては、Windows 2000が大きく力を発揮するという。ステージ上の画面には『MS BizTalk Server 2000』(α版)の画面が映し出され、XMLベースでオンライン商取引を行なう様が紹介された。

『MS BizTalk Server 2000』のマップ機能。両社のデータがどのように結びついて処理されているかが、視覚的に表示されるというものだ
『MS BizTalk Server 2000』のマップ機能。両社のデータがどのように結びついて処理されているかが、視覚的に表示されるというものだ



BizTalk Server 2000では、取引を行なっている2社の情報をリアルタイムでリンクさせ、グラフ状に表示する機能を持つ。これによりエンド・トゥ・エンドの取引が容易になるいう。

大企業が2000に移行、dellhost.comも立ち上げ

いよいよ18日から発売が開始されるWindows 2000だが、すでに一部の大企業では、Windows 2000への移行を開始、もしくは検討しているという。講演では、メリルリンチ、ナスダック、TWA、スプリント、レゴといった有力企業の名前が挙げられた。また、デルの顧客でもある自動車会社の米フォードが、社内のシステムを全面的にWindows 2000に移行することもあわせて明らかにされた。

米フォードでは、世界100ヵ国以上、37万人の従業員を対象に、Windows 2000ベースのシステムを構築するとしている。すでに'98年の第4四半期からWindows 2000のベータ版を導入しており、'99年にはWindows 2000ベースの社内アプリケーションを開発。今後は、数ヵ月以内に600台のサーバーをWindows 2000に移行し、その後、メールサーバーとウェブサーバーを移行するという。また、2001年にはデスクトップ機すべてをWindows 2000に置き換えていくとしている。

ここでデル氏は、Windows 2000への移行を促すための専用サイト“dellhost.com”を、デルコンピュータが2~3週間以内に立ち上げることを明らかにした。同サイトではWindows 2000への移行についてのコンサルティングを提供するほか、ASPやウェブホスティングといったサービスも行なうとしている。

講演の最後にデル氏は、「インターネット経済は、あらゆる産業において、毎年倍のペースで拡大している」とし、今後も高いペースでeビジネスが普及すると語った。また、その普及自体がITインフラを変化させているとし、eビジネスとITインフラが相乗効果によって発展している現状を指摘した。

Windows 2000については、「デルコンピュータは、Windows 2000のバグをマイクロソフトに報告する最大のユーザーである」と語り、同社とマイクロソフトの密接な関係をアピール。その上で、「Windows 2000は、4つの基礎を向上させるもの」と語り、「デルもともに伸びていく」として、講演を締めくくった。

LinuxとWindows 2000で、市場の3分の2をカバー

講演終了後には、報道関係者を対象にデル氏が質疑応答を行なうカンファレンスが開催された。

“デルは全顧客にWindows 2000を推奨するのか?”という質問に対しては、デル氏は「Windows 2000はウェブのパフォーマンスを20~30パーセント向上させる」とした上で、「デルとしてはすべての顧客に、Windows 2000への乗換えを勧めたい」とした。

dellhost.comが提供するサービスに関しては、「ビジネスユーザーを対象にホスティングやASP提供する」と語り、個人ユーザー向けのサービスは考えていないことを明らかにした。また、dellhost.comの狙いとして、特に小規模の企業をターゲットにサービスを提供していくことも明らかにした。

報道陣を対象に質疑応答を行なうデル氏。基調講演とは異なりざっくばらんとした雰囲気で、ときには答えに窮する場面もあるのが印象的だった
報道陣を対象に質疑応答を行なうデル氏。基調講演とは異なりざっくばらんとした雰囲気で、ときには答えに窮する場面もあるのが印象的だった



同社ではLinuxをプレインストールしたサーバーも販売している。この点に関しては、「Windows 2000とLinuxの組み合わせで、マーケットの3分の2をカバーできると思う」とデル氏は語り、Linuxについても引き続きサポートを行なっていく姿勢を見せた。

もっともLinuxに関しては、「顧客を対象としたアンケートでは、Windows 2000に乗り換えたいというユーザーが多い」という調査結果を明らかにし、同社におけるLinuxの優先度が低いことを示唆した。また、「顧客がマイクロソフト製品を好む限り、デルは同社製品を購入する(プレインストールする)」とも明言し、マイクロソフトとのパートナーシップをアピールした。

Windows 2000への移行をWindows 95から98への移行と対比する質問に対しては、「現在のITシーンは、サーバーコンピューティングに比重が移っている」と指摘し、98への乗換えとは事情が異なると説明した。また、個人向けのサポートも行なうとしながらも、「(“Windows 2000”というネーミングに関しては)マイクロソフトに聞いてください」と語り、会場の笑いを誘った。

カスタマー・デル・MSの三者で2000に移行

今回の講演では、サーバー製品に強みを持つ同社が、全面的にWindows 2000に移行していくという方向性が力強くアピールされたのが印象的だった。

デル氏は質疑応答のなかで、「“profitable”(利益の多い)という言葉は、“more valuable for customer”(顧客にとってさらに有益)と同義だと思う」と発言し、決して利益率の高いNTサーバーにはこだわらないという姿勢を示した。

また、「1000台のサーバーによるクラスター構成も可能」とデル氏が語ったように、ITが今後さらに発展するにつれ、企業が導入するサーバーの数は、ますます増える傾向にある。Windows 2000がNTよりも安定しているとあれば、その傾向に拍車が掛かることは間違いない。

しかも、デル氏自身が“今後5年でサーバー需要が20倍になる”と語っているように、信頼性の高いシステムは、サーバーの売上を押し上げる要因となる。実際、デル氏は、「デルは、より信頼性が高く、よりパフォーマンスの高いサーバーを売るのが仕事」と明言しており、Windows 2000がその目的に適っているのは明らかだ。

eビジネスの普及という追い風に乗っていることもあり、「カスタマー、デル、マイクロソフトの三者で、Windows 2000に移行していく」というデル氏の言葉は、決してマイクロソフトを向いての発言ではないと思われる。世間から叩かれることの多いマイクロソフトだが、Windows 2000に限っては、確実にIT産業の方向性にあった製品を投入できているようだ。

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