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【Seybold Seminars Boston 2000 Vol.2】“Pulbishing Strategies”基調講演 ――2000年の出版、印刷技術をつくる新ソフトが続々登場。Adobeは6つの新製品を紹介!

2000年02月11日 00時00分更新

文● TERO MODA

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2000年2月7日から11日(米国東海岸現地時間)までの5日間、マサチューセッツ州ボストンのMassachusetts Convention CenterにおいてSeybold Seminors Boston 2000が開催されている。

Seyboldは、紙出版、電子出版におけるデジタルクリエーション、DTP、デザイン、印刷などのプロフェッショナルを対象にしたイベント。コンファレンス、チュートリアル、展示会が催されている。コンファレンスは、“Web Publishing”(7日、8日)、“Publishing Strategies”(9、10日)、“Best Practices for Pringing Publishing”(1日10日、11日)という3つのテーマを中心に据えていた。

9日午前中には、コンファレンス“Publishing Strategies”の基調講演が、2部にわたって行なわれた。

最初の基調講演は、Seybold SeminarsのAssociate Conference Directorを勤めるThad McIlroy氏によるもの。次の基調講演では、MacromeidaのDavid Mendels氏、QuarkのTim Gill氏(Chairman &CTO)、Adobe SystemsのJohn Warnock氏(CEO)とBruce Chizen氏(Executive Vice President & Worldwide Products and Marketing)が登壇した。

果たして紙は出版から消えるのか?

Seybold SeminarsのAssociate Conference Directorを勤めるThad McIlroy氏は、“紙出版はもはや成長が終わった産業である”として、その理由と出版業界の現状を説明した。

Seybold SeminarsのAssociate Conference Directorを
Seybold SeminarsのAssociate Conference Directorを


勤めるThad McIlroy氏。多数の雑誌に寄稿していること
でも知られている人物

紙出版企業の成長率は'97年を境に急速に落ちている。紙出版の低迷は、ここ数十年間で初めてのこと。その要因は、インターネットにおける電子出版の急成長にある。電子出版の利用率は、若い層になればなるほと高く、電子出版が今後も長期間にわたって成長し続けている。現在、米国内の多くの学校では、“e-Book”を教材として導入することを検討しているという。

紙出版から電子出版への移行は、確実なものである。現在の紙出版企業のうち半分は、2002年までに電子出版事業に参入することになるだろう。テクノロジーの発達は、紙出版を低迷に追い込んだ一方で、デザインの品質や印刷品質を向上さるという結果をもらたらしている。

「いずれはすべての出版物が電子に置き換わることは間違いのないことだ。次の世代に多大なメリットをもたらすということを正しく認識し、努力してゆくべきだろう」と、McIlroy氏は述べ、最初の講演を終了した。

PDAなどに対応したプラグイン『Flash Movie Player』の可能性


この日2度目の基調講演で最初に壇上に現れたのは、
この日2度目の基調講演で最初に壇上に現れたのは、


Adobe Systems社のCharles Geschke氏(President)。'
82年にJohn Warnock氏(CEO)とともにAdobe Systems
を設立。25年以上にわたりソフトウェア産業、出版・印刷
産業を導いてきた功労が讃えられ、盾が授与された

2度目の基調講演では、MacromediaのDavid Mendels氏が最初のスピーチを行なった。当初、PresidentのNorman Meyrowitz氏が登壇する予定だったが、都合によりMendels氏が代役を勤めることになった。

MacromediaのDavid Mendels氏。PresidentのNorman
MacromediaのDavid Mendels氏。PresidentのNorman


Meyrowitz氏が講演できなくなったため、代役を勤める
ことになった

Mendels氏は、プラグイン『Flash Movie Player』を使用したコンテンツの可能性について語った。

その一例として、イラストレーションソフトの最新版『FreeHand 9』で作成したホームページコンテンツを紹介。ページに張られた“Print”ボタンをクリックすると、そのページの画面コピーが出力されるのではなく、別に用意した画像がプリントされた。聴衆の驚きに、Mendels氏は、このバージョンの『Flash Movie Player』がプリントエンジンに組み込んでいるからだと説明した。

また、「今後、Macromeida製品で作成したコンテンツは、パーソナルコンピューター以外の端末をターゲットにすることになるだろう。たとえば、PDAや携帯電話、ゲーム機器などに、Flashコンテンツを動かすことになるだろう」と、今後の戦略を述べた。

そして、XML対応の『Flash Movie Player』を組み込んだPDAで、Flashコンテンツのデモストレーションを行なった。

PDAで動作する『Flash Movie Player』
PDAで動作する『Flash Movie Player』


Quarkは、紙と電子出版のためのデータベースシステム『eStage』を紹介

次にスピーチを行なったQuarkのTim Gill氏(Chirman and Chief Technical Officeer)は、今年4月に発売する予定の新製品『eStage』を発表した。これは、紙と電子出版のためのデータベースサーバーシステム。グループ単位で編集作業の効率を上げることができる。作成した“版”は、XML(eXtensible Markup Language)ファイルとして出力される。

QuarkのTim Gill氏(Chiarman and Chief Technical Officer)。
QuarkのTim Gill氏(Chiarman and Chief Technical Officer)。


'81年にQuarkを設立。'86年にCEOとPresidentの役職を、
Fred Ebrahimi氏に譲った

XMLとは、インターネット上で情報をさまざまな形式で配布することを目的とした構造化言語である。Macromediaは今年1月に、XMLに対応したデジタル資産管理ツール『QuarkDMS(Quark Digital Media System)』を出荷している。Gill氏は「情報交換の未来はXMLにある」と強く語った。

アニメーションツール『LiveMotion』など6製品を立て続けに発表したAdobe

最後のスピーチは、Adobe SystemsのJohn Warnock氏(CEO)とBruce Chizen氏(Executive Vice President, Worldwide Products and Marketing)。

手前が、Adobe SystemsのJohn Warnock氏(CEO)。奥は、
手前が、Adobe SystemsのJohn Warnock氏(CEO)。奥は、


Bruce Chizen氏(Executive Vice President & Worldwide
Products and Marketing)。Warnock氏は、'82年にCharles
Geschke氏とともに、Adobe Systemsを設立

Adobeは今後出荷する予定の6製品を次々と紹介。まず、出版レイアウトツール『inDesign』と、ホームページのオーサリングツール『GoLive』の新バージョン。そして、新製品では、『Stilton』、『InProduction』、『LiveMotion』、『eReader』が相次いで発表された。

『GoLive』の新バージョンでは、Photoshopファイルを作業ウインドーにドロップすると、JPEG/GIFファイルに自動的に変換するデモストレーションが行なわれた。新製品の『Stilton』は、ウェブブラウザーを使い、リモートでページレイアウトを行なうもの。『InProduction』は、Acrobatの機能を拡張した製品だ。また、『LiveMotion』はアニメーションのオーサリングツールで、『eReader』はPDFフォーマットを表示するeBook製品だった。

300社以上が参加する展示会も開催!

基調講演の終了と同時に、いよいよ展示会も開催した。300社以上が参加し、数百点以上の新製品発表が予定されている。

講演において、紙出版から電子出版への移行が予見したThad McIlroy氏。Macromedia、Quark、Adobe Systemsの新製品群も、主に電子出版の制作をターゲットにしている。「テクノロジーの発達は、紙出版を低迷に追い込んだ一方で、デザインの品質や印刷品質を向上させている」というMcIlroy氏の発言のとおり、紙出版における技術革新が急速に進んでいる。そして、それは今回の“Seybold Seminors Boston 2000”の展示会場において、はっきりと確信することができるだろう。

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