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【年末特別対談モバイル編Vol.2】IDOやJ-フォンのiモードへの対抗策は

1999年12月27日 00時00分更新

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年末年始特別企画対談モバイル編Vol.2では、iモード一色となったVol.1を受け、IDOやJ-フォンなどの動きと、携帯電話が引き起こした現象についてお話ししていただいた。

携帯電話の音質

編集部「携帯電話の話ですと、どうしてもiモードの話になってしまうんですが、ほかのDDIグループやJ-フォングループが展開しているサービスや機種については何かありますか?」

山田「自分でドコモしか使ってないんで、どうこう言えないんですけど、つながりやすいとか、音がいいとかというのを、CMなどのイメージで選んじゃうような感じになってきますよね。ところが、実際に使ってみた人じゃないとわかんないことっていっぱいあるわけですよね。メールにしても、Mobile Newsの読者の方で、夜中にメールを送ると翌朝ぐらいまで届かないっていう方がいるんです」

「あと、携帯電話の通話音質にしても、使い勝手にしても、ものすごく機種がたくさんあって、ものすごくいろんなサービスがあって、ユーザーとしてはどのサービスがお得なのかっていうのはすごくわかりにくくなっていると思います。どのキャリアーがいいのかもよくわからなくなってきている」

山田道夫 “Mobile News”編集長――大きな体のコンプレックスの裏返しか小さなマシンに心惹かれる。東芝初代DynaBookのJ-3100SSを発売日に購入してからモバイル人生を歩む。J-3100SSがとても丈夫だったため、丈夫なのが当たり前という誤った先入観をもってしまった。今のメーンマシンはJornada 680。ウェブマガジン(http://www.mobilenews.ne.jp/)、メールニュース“Mobile News”を毎日配信中
山田道夫 “Mobile News”編集長――大きな体のコンプレックスの裏返しか小さなマシンに心惹かれる。東芝初代DynaBookのJ-3100SSを発売日に購入してからモバイル人生を歩む。J-3100SSがとても丈夫だったため、丈夫なのが当たり前という誤った先入観をもってしまった。今のメーンマシンはJornada 680。ウェブマガジン(http://www.mobilenews.ne.jp/)、メールニュース“Mobile News”を毎日配信中



山田「だからいま使っている人が、そこから変えていって得になるのかとか、サービスとしてこれが安いつもりで使ってきたけど、こういうサービスもあって、そっちのほうがいいのかもしれないけど、でもよくわからない、という人はすごく増えていると思います。そういう情報が交通整理されてないと思うんです。メディアとしてもないと思うし、そういう、各携帯電話とか PHSとかのお得情報みたいなもの。いまの時期だったらこれが得だとか、そういうきちんとした情報が、いまないような気がするんです。それを発信するのはすごくたいへんだということはわかるんですが。毎月、あるいは毎週変わるくらいのペースでいろんなサービスが出てきますから」

中島「構想としてやろうというところはあるとは思いますが……誰かやってよって感じですね(笑)」

編集部「中島さんもNTTドコモですか」

中島「そうです。最初はIDOだったのですが、以前あるところに勤めていたときに、出張が多い部署に異動してしまって、地方に行ったときにNTTドコモじゃないとだめだったんです、そのころは」

「J-フォンが以前、音がいいということを売りにして、CMでもがんがんやっていましたが、突然アピールをやめましたよね。あれは通話のための帯域を*ハーフレート(半分)にしちゃったからなんです。通話が多くなってきて、音質よりも回線を優先するようになったんです。ところが、音がいいっていうCMのイメージは残っているんです。IDOグループでも、織田裕二がcdmaOne以来、CMに出ていますが、“以前はNTTドコモのCMに出演していたのがいまはIDOなんだ。それが音がいいっていうんだから”という意識が普通の人の間にあるはずです。そういうイメージで通話したときに、“あれ? こんな音?”と思う、そんな話は聞きますね」

アナログ方式の携帯電話では、基本的に1つの周波数に対して1つの通話を割り当てる。これに対し、デジタル方式の携帯電話では、音声信号をデジタル符号化し、1つの電波でも、複数の通話を同時に行なえるようになっている(実際の仕組みでは、複数の電波を使うなどかなり複雑なものになる)。これにより、デジタル方式の携帯電話では、同じ周波数の電波で、アナログ方式よりも多くの通話を行なうことができる。簡単に言えば、フルレートで通信していたものをハーフレートにすると、2倍の数の通話を行なえることになる。その場合、音質が犠牲になる。ただし、デジタル符号化や圧縮のためのアルゴリズムは日々改良されており、ハーフレートになったからといって、音質が半分になるとはいえない。

山田「J-フォンがハーフレートにするという話は、以前から出ていましたが、音が悪くなるのをわざわざ宣伝したりはしないですからね。つながりやすくなる、というのはいっていましたが」

中島「少しずつ変えていたりするときは、もう絶対にいわないですからね。ちょっとしたサービス内容の変更も、毎月送られてくる領収書や請求書に一緒について来るパンフレットには書いてあるけれど、ほかでは書いてない情報とか、ウェブを見に行って、どこにも書いてないなあと思ったらはじっこにポッと書いてあったり」

山田「載ってはいても見つけにくい傾向にありますね。確かに、サービス自体が大量にあって、キャリアーとしてどこに力を入れるかによって変わってくるとは思いますが」

地域によってまったく異なるキャリアーの状況

中島「キャリアーの選択の話ですが、東京で使うのとそれ以外の地方で使うのとはかなり違います。私の経験では、PHSは東京にいる間はNTTドコモが一番強かったんです。基地局も多くて。ところが関西では“H゛”でなくとも、DDIポケットの方がいいんです。さらに都会を離れると、さらにDDIポケット勢力が強い。高層ビルが少ない分、DDIポケットが使っている出力の大きな基地局が有利なんです」

中島和則――1968年生まれ。(有)手國堂(http://www.technido.co.jp/)取締役。工学部通信工学科を卒業後、東京で通信・パソコン関係の雑誌および書籍の編集者として勤務。1999年6月、有限会社手國堂の設立と共に関西へ戻る。ネットワーク関係の原稿を書く関係からパソコンが15台にも膨れ上がり、所有するパソコンはデスクトップとノートがほぼ同数
中島和則――1968年生まれ。(有)手國堂(http://www.technido.co.jp/)取締役。工学部通信工学科を卒業後、東京で通信・パソコン関係の雑誌および書籍の編集者として勤務。1999年6月、有限会社手國堂の設立と共に関西へ戻る。ネットワーク関係の原稿を書く関係からパソコンが15台にも膨れ上がり、所有するパソコンはデスクトップとノートがほぼ同数



山田「DDIポケットだと、車に乗っていて、走り出してもそのままずっと使えていたっていうところはありましたね。まあ、PHSは東京なんかだといいんですが、出張で地方に行くとだめですね。携帯じゃないと。DDIポケットは頑張っていますが。どのキャリアーが使えるとかそういうことになると、その土地の人じゃないとわからないし。でもデータ通信なんて、どこでもやりたいからやるわけなんだけど。地域格差は結構ありますね」

山田「携帯電話の普及台数が5000万台とか、とてつもない数字になっていますよね。なんか信じられないような数ですね。10年くらい前はほとんどゼロみたいなもんですよ」

中島「この4、5年すごかったですね」

編集部「日本の人口の10パーセントに達するまでに、携帯電話は15年かかったというデータがあります。が、この3、4年の伸びがものすごいことになっています。この普及のスピードを超えたものは、インターネットの普及だけだそうです。こちらはなんと5年でここまで立ち上がってしまった」

山田「まあ、実際にものがないと分かんないことっていっぱいありますね。実際に使ってみないとわからないことが。そういうのが少しずつ広がっていって、ある一定の量を越えたら爆発的に売れるっていうことがあるわけです」

中島「やっぱり体験とクチコミですね」

山田「携帯電話とか PHSもそうですよ。使ってみると、たしかに料金はいままでの電話より高いんだけど、ないとがまんできないような感じになる。ぼくも最初に買った理由は、NTTドコモからある製品が市販されるっていうときに、借りたんですよ、タダで。で、1ヵ月ぐらいタダ掛けさせていただいて、記事にしたんですね。それでもう、返却したら、ないといられない体になっていた(笑)。そんなふうに、使う機会があったり、クチコミとかで広がっていくと、そのスピードは最初は大したことなくても、減るってことは絶対ないですからね」

携帯電話の普及が社会を変える?

中島「そうですね。だんだん持っている人が増えてくると、人間心理というか、日本人の心理かもしれませんけど、ああ、私も持たなきゃとか。逆に持っている側は、持っていない人に対して、何で持ってないのよって思っちゃうでしょう」

山田「連絡しようと思ったときに、携帯もPHSもなくて、留守番電話だけだったりすると、もう、主義主張があるのかと思っちゃいますよね。生き方なのかっていう(笑)」

中島「待ち合わせの時なんか、5分遅れるからっていう連絡が1本入れられれば全然違うのに、何で持ってないのよっていう」

山田「携帯電話のおかげで、待ち合わせのやりかたも全然変わりましたよね。前は本当に詳細に場所決めてって感じだったけど、いまはだいたい何時にこのへんで、ですんでしまう」

編集部「近くに付いたら電話するからで済んじゃいますから、それは大きいですよね」

山田「昔は、外出したら連絡方法はほとんどなかったけど、いまはもう簡単に、いろんなコミュニケーションの手段が得られますよね。まあ、メールはまだそんなでもないけど、電話ってものがあるだけで全然違う社会になっちゃってますね」

編集部「ある講演で携帯電話の話が出たときに聴いたのですが、いまはあのイリオモテヤマネコのいる西表島のジャングルの中でも携帯電話がつながるそうです。以前は、携帯電話が普及している国というと、北欧の国々だったのですが、いまは日本が先進国15ヵ国の中で突出した普及になっていると。パソコンの普及率は下の方なのに、携帯電話だけはダントツの1位なんだそうです。これは日本人の特性がなにか関係しているとしか思えない数字です」

中島「フィンランドとか、あのあたりは冬は雪のおかげで行き来するのも大変だし、越えられない距離を電波で越えようっていうことだったんですけど、日本の場合は、ない時間を電波でつなごうっていう感じですよね」

山田「携帯電話の使い方として、情報としての場合とコミュニケーションとしての場合があって、日本の場合は情報の場合の密度もすごく高いですが、コミュニケーションを密に取りたいっていう層のユーザーが、すごくいっぱいいるんだと思うんです。四六時中、大した話じゃなくても、つながっていないと、疎外されたように感じちゃう人がいるのかもしれない。そういう意味で日本は特殊なのかもしれない、大人じゃないのかもれないですね、世界的に見た場合」

携帯電話のハードウェアの進歩はパソコンより早い?

編集部「携帯電話の大きさですが、ずいぶんと小さくなりましたね。重さもいまは60g以下になっていますよね」

山田「この軽量化競争って、なんか意味あるのかなって思いますよ。必ずしも使いやすくなっているとは限らないと思うんです。僕なんか、小さくなると口元とマイクがあまり離れてしまっていやなんです」

中島「僕はフリップタイプじゃないと、気になるんです。口元にマイクがないと不安で。そういうのを無視して、どんどん小さくなってきてますよね」

山田「ちゃんと聞こえてんのかなって。言ったことが伝わったか心配になる。まあ、ジャケットとかに入れちゃう人もいるだろうし、軽くなることが悪いこととはいわないけれどね。軽くなったけど、電池もすごくもつようになりましたしね。前はちょっと山へ行ったりしたら、すぐなくなってましたけど」

中島「携帯電話が小さくなったので一番泣いてるのは電池メーカーなんです。やっぱり化学製品の進化は半導体に比べると遅いので」

山田「半導体が異常なんだと思いますよ(笑)」

編集部「着メロはどう思われますか。なんか、大はやりですよね。私はあまりピンとこないのですけど」

山田「あの、人の携帯電話と区別がつくっていうのはすごくいいと思いますね。昔は呼び出し音に何種類もなかったんで、人混みだと着信したときに自分かどうかわからなかった。区別がつくっていうのはすごいいと思うけど、それを文化にしちゃうっていうのは、日本人の特性というか、なんでも一般化しちゃいけないんですけど、呼び出し音を好きな曲に変えるというのは、ぼくはいいかなと思っています」

編集部「ヤマハが携帯電話向けに、MIDI音源チップを作りました。ああいったチップを搭載した携帯電話が出ると、その音を聴いたユーザーがMIDIで鳴る音楽に驚いて、かなり普及するんじゃないかと思うんですよ。和音が出ないのと3和音が出るのでははっきり違いますから」

山田「そういう意味では着メロのクオリティーも向上していくでしょう。本当に必要なのかって言われたら、必要性はそんなに高くはないと思うんですけど、ただ、そういうのを含めての携帯電話文化かなと」

編集部「携帯電話は人に見せるものにもなっていますよね。だからみんなジャラジャラアクセサリーつけたり、シール貼ったり、カラーリングしたり。そういう意味から言うと、着メロもその延長かなと」

中島「そうですね。アンテナの先に、通話するときに点灯する発光ダイオードも、最初は赤だったのが、いまもう、青色ダイオードですから。わざわざ高いものを使わなくたっていいじゃないかと思いますね。おまえ、もっと大事なことに使えと思うんだけど(笑)。

でも、あれが流行したおかげらしいのですが、青の発光ダイオードの値段、落ちましたね。白と青が同じぐらいの値段がしていたのですが、青は一気に落ちました。特に高いと感じなくなりました」

(Vol.3に続く)

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http://www.ascii.co.jp/ascii24/call.cgi?file=issue/
1999/1228/topi02.html

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