米IBM社は6日(現地時間)、米エネルギー省ASCIプログラムの世界最速コンピューターの500倍の演算処理能力を持つスーパーコンピューターの開発に向けて、1億ドル(約102億円)規模の新たな研究計画を発表した。
“ブルー・ジーン(Blue Gene:青い遺伝子)”と呼ばれる新しいコンピューターは、1PFLOPS(ペタフロップス:1000兆回/秒)以上の演算処理が可能になるという。これは、'97年にチェス世界チャンピオンのガルリ・カスパロフ氏と対戦したコンピューター“ディープ・ブルー”の1000倍の演算処理能力である。また、デスクトップパソコンの約200万倍であるという。同社の情報テクノロジー専門研究機関であるIBMリサーチでは、同コンピュータを使用して約50名の科学者が、ヒトのたんぱく質の折りたたみ構造の解析を行なうという。
IBMリサーチの考えでは、従来とまったく異なる、コンピューターの設計およびアーキテクチャーを採用することにより、PFLOPS級のパフォーマンスを約5年で実現できるという。これは、半導体の性能と集積は18ヵ月ごとに2倍になるというムーアの法則に基づいた予測の3分の1の期間である。
従来は、命令セットをより複雑化することで、処理能力を向上させたが、今回採用されたSMASH(Simple,
Many and Self-Healing)アーキテクチャーでは、各プロセッサーで実行される命令を単純化することにより、プロセッサーの高速化および省電力化、チップ面積の削減を実現するという。800万以上のスレッドを同時に実行できる並列システムの構築も可能になる(現在は最大5000スレッド)。また、個々のプロセッサーやスレッドのエラーが自動修復されるようになるという。
ブルー・ジーンは、演算処理能力が1GFLOPS(ギガフロップス:浮動小数点演算を毎秒10億回)のプロセッサー100万個以上で構成されている。まず、1つのチップには、32個のプロセッサーが搭載される(32GFLOPS)。そのチップ64個が1枚のボード(60.96×60.96cm)に搭載される。処理能力は約2TFLOPS(テラフロップス)となり、ASCIのコンピューター(743.2平方メートル)と同じとなる。このボードが高さ約183cmのラックに8枚搭載され(16TFLOPS)、このラックが64台リンクされて、最終的に185.8平方メートル以下で1PFLOPS(ペタフロップス)の処理能力を持つマシンになるという。