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「ソニーとできるだけ関わりたくない(笑)」とソニーミュージックの丸山社長--日経新聞セミナーから

1999年10月20日 00時00分更新

文● 編集部 中野潔

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日本経済新聞は19日、“未来創生--ネット時代の経営モデルを求めて”と題して、セミナーを開催した。前半部では、富士通(株)の関澤義会長が基調講演した。

後半部はパネルディスカッションである。パネリストとして、(株)ソニー・ミュージックエンタテイメント(SME)の丸山茂雄社長、NTTコミュニケーションズ(株)の網谷駿介取締役、トヨタ自動車(株)、VVC(ヴァーチャル ベンチャー カンパニー)の清水順三プレジデントの3名が、パネルディスカッションで意見を戦わせた。

各氏の発言の要旨は、下記のとおりである。


「人でなくてもできることをなくしていく」と富士通の関澤会長

富士通の関澤会長は、人でなくてもできることをする人間を減らして、人でないとできないことにシフトするのが、必然的流れであるとして、次のように発言した。「アマゾンドットコムのウェブページには、“ソフト開発者、システムおよびネットワークおよびオペレーションのエンジニア、ウェブスタイルの開発者と製作者を求む。アマゾンと話をするとき、アマゾンが商人ではなく、技術の企業であると分かるだろう”と書いてある。

“皆が同じ”という時代が終わり、また、変化しないと衰退するという時代になった。仕組みがソフト化するということは、変化が容易であるということであり、現に、昨日と今日とではインターネットでできることが違っている。電子メール、ハイパーリンク、ブラウザー(閲覧ソフト)、サーチエンジン(検索ソフト)、ブッシュ技術(配信ソフト)、ストリーミング(放送ソフト)というように、インターネットの主戦場はどんどん動いている。

ヒト、モノ、カネに加えて、“時間、知識・情報、環境”が経営資源の第4群になっている。資源としての時間では、(1)市場へタイムリーに(Time to Market)、(2)お客様の手元へタイムリーに(Time to Delivery)、(3)市場の変動へタイムリーに(Response to Fluctuation)--という3つのキーワードがある。

お客様の時間を確保するのが新しい競争になっている。“(若者の金と時間を奪うため)CDが売れなくなるので、富士通は携帯電話に注力しないでほしい”と言ってきた人があったが、貧富に関係なく24時間しかないお客さんの時間の争奪戦になっている。ウェブでも滞在時間の取り合いになっている。一方、お客さんが限られた時間で効率の高いオペレーションができるサイトに人気が集まっている。

知識・情報の面では、自動車の中にプロセッサーがたくさん入っていることが示すように製品がソフト化し、アマゾンドットコムの求人が示すように仕事がソフト化し、ウェブ協業が本格化している。新しい製造の仕組みについて、富士通の川崎の設計部隊と長野の工場との間で、ウェブ競合した。長野から、設計の財産が全部覗けるようにした。そうしたら、部下→上司→上司→部下という部署の窓を通しての付き合いでなくて、個人の力量が直接皆に露呈するようになった。

ナレッジマネジメントを導入し、結果の情報だけでなく、プロセスの情報、進行中の情報を共有するようにすれば、仕事の質が上がる。頑張ったからということでなく、成果で測り、成果に報いるようにするとともに、そこまでせずに低い賃金でもいいという人や流動する人のために多様な選択肢も用意する。

インターネットでうまくいくには、従来のサービスの延長ではない、双方がウィンウィンになる新しいビジネスプロセスを再設計しなければ意味がない。それも70パーセントでいいと見切り発車し、走りながら考える方が勝つ。そのときコンピューターは、知識、情報を生む生産設備になるから、管理職でなく、現場こそ1人1台を実現すべきだ。

企業としては、教育投資と、人を生かすための情報投資を積極的に実施して、事業を高付加価値化していくべきである。個人の側では、絶えざる自己研鑚(けんさん)で自己の商品価値を高めていかなければならない」


「ソニーとできるだけ関わりたくない」とSMEの丸山社長

SMEの丸山社長の発言要旨は次のとおり。「音楽業界の人間は、基本的には保守的だ。レコードだろうとCDだろうと、入っている音に価値があるのであって、メジャーになってしまった人には、新技術は原則、必要がない。音楽のネットワーク配信も同様である。

ただ、若い野心家は、新技術をテコに出てこようとする。新技術を使わざるを得なくなるなら、メジャーの側も、その技術革命に対して早く手を打とうとはする。

SMEができてから30年、ソニーと親子会社という感じを持たずにやってきた。SMEのさらに子会社でプレステを始めるときにも、ソニーの家電販売網とは、別のルートを中心にして売った。ソニーがSMEと融合したいと言っていると、巷間、いわれている。新技術の話は聞くし、必要ならソニーから、その技術はもらいたいが、それ以外には、できるだけソニーと関わりたくない(冗談混じり風に)」

NTTコミュニケーションズの網谷取締役の発言要旨は以下のとおり。「来年から再来年に掛けて、インターネットとIP(Internet Protocol)がブレークしそうな予感がする。光ファイバー1本で、500万回線、2000万回線といった技術が実用化されそうだ。通信資源が、じゃぶじゃぶ使えるようになれば、アトムからビットへ、物からソフトやサービスへ、という動きがブレークする。そうなれば、ポリエージェントという言葉が象徴するように、ばらばらだった個客が、つながっていく。

日本には、iモードに代表されるように、携帯とそのインターネット化が最も進んでいるという事実、コンビニエンスストアが最も普及しているという事実がある。ビットに分解できるものは携帯などで、有体物はコンビニで受け取り、コンビニ決済するということになるだろう。深夜の宅配を喜ぶ人は少ない。

ネットにのっていないビジネスがネットにのるようになる。既存のビジネスをのせる場合は、メガ企業対メガ企業のパワーゲームとなる。必然的に、合従連衡が進む。新しいビジネスでは、野心家がアイデアで勝負するバリューゲームになる。集団決定、稟議(りんぎ)中心の大企業は、この面では、ベンチャーに勝てない」

トヨタの清水プレジデントの発言については、auto-ascii24での別掲記事(末記)で詳細をお伝えする。

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