舞台の上では休み時間を楽しんでもらおうと、おやつや香りのサービスも |
講義室の2階にはインターネットカフェが。1階にはアクセスターミナルも用意 |
セッションはあえて舞台を使わず、丸いテーブルを囲んでのラフな雰囲気の中で行なわれた。これは電気通信大学の小池研究室が制作した『VPテーブル』。天井に吊り下げられたプロジェクターから企業ロゴや幾何学メッセージなどが投影される仕掛けが参加者の注目を集めた |
ユーザーのためから、ユーザーとともに。皆が日常生活でデザインする時代へ
午後の部では、さらに具体的に情報デザインの事例が紹介された。ソウルでデザイン学校の副校長を務めるモデレーター役のナム・シク・リー氏が、日本の建築や文化を例に、今回のもう1つの大きなテーマでもある、西と東文化の出会いと違いについて語った。次に、数々の先端的なインターフェースデザインで注目を集めているIDEOのビル・モグリッジ社長が、三井コムテックのインターネット電話や、ソフトブック社の電子本など7つのケーススタディをビデオで紹介。技術とそれを仲介するインタフェースデザインが、コミュニケーションの橋渡し役としていかに多様化しているかなどを再提示した。スピーカー全員が外国人という午後のセッション。言葉の壁を越えるためか、ビジュアルをふんだんに使った事例紹介が。正面左側から時計回りに、IDEOのモグリッジ社長、モデレーターのリー氏、メタデザインのフレッヒ氏、フィッチのサンダーズ氏 |
ドイツに本社があるメタデザインのチャーリー・フレッヒ氏は、さまざまな公共機関のデザインに携わってきた。その経験から文化間のデザインとして、同社が携わったデュッセルドルフ国際空港の表示デザインを紹介。「分かりやすさと同時に空港の機能そのものを伝えるデザインが必要であり、そこにはプロセスのデザインも含まれる」と語った。
モグリッジ社長の紹介したビデオの中にには『キス送信機』なる珍品? も |
アメリカの大手コンサルティング会社フィッチのリズ・サンダーズ氏は、「ユーザーのためから、ユーザーとともに皆が日常生活でデザインをする時代になり、Design
for experience=経験のデザインが求められる」と述べた。リサーチにしても、ユーザー自身にコラージュを作ってもらったり、カメラを渡して自由に撮影してもらって、それを分析するといったユニークな手法を紹介した。また、潜在的なデザイン能力を引きだす“ポスト・デザイン”という言葉は、デザインそのものの提議をあらためて見つめ直すという意味で、参加者に新鮮な驚きを与えると同時に、会期を通じてしばしば取り上げられることにもなった。
“経験のデザイン”や“ポスト・デザイン”など数々の刺激的なキーワードを提案したサンダーズ氏 |
初日の内容は、いかにも前哨戦という感じで、情報デザインそのものの議論よりも、事例の提示に終始していた。しかし、それが残る2日につながるという点では、余りあるほどの問題が提示されたと言える。その夕方から行われたバンケットパーティーで、翌日のセッションに向けて、さらに熱い議論が交わされていたのは言うまでもない。