このページの本文へ

「形ないモノの価値をどれだけ打ち出していけるかが大切」――“Digital Ware Osaka 1999”から

1999年10月08日 00時00分更新

文● 正月孝広

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

10月6日~8日の3日間、(社)日本能率協会主催による“Digital Ware Osaka 1999”がインテックス大阪で開催された。これは主に最先端のデジタル映像制作・編集システムの紹介ならびに次世代グラフィックステクノロジー専門の展示会として開催されたものである。また同時にGIS関連の出展も行なわれ、最新の地図情報システムの応用例などが紹介された。

“Digital Ware Osaka 1999”の会場となったインテックス大阪
“Digital Ware Osaka 1999”の会場となったインテックス大阪



展示会場の様子
展示会場の様子



また出展に加えて多数のセミナーがタイトなスケジュールで同時に開催された。会場はインテックス大阪に隣接するミズノ(株)本社ビル。今回はその地下にある多目的ホールで6日に行なわれた2つのシンポジウムを紹介する。

シンポジウムの会場の様子
シンポジウムの会場の様子



まず最初に“デジタルテクノロジーがビジネスを変える”と題し、ソニー(株)関西代表・常勤顧問(前代表取締役副社長)、金田嘉行氏の特別講演が行なわれた。

ソニー(株)関西代表・常勤顧問(前代表取締役副社長)、金田嘉行氏 ソニー(株)関西代表・常勤顧問(前代表取締役副社長)、金田嘉行氏



前半、デジタル化による企業の変化について、既にネットワーク時代になりスピード、時間、距離をキーワードとして、あらゆる境界が消滅してきている。それは社内の部署であったり、企業と消費者との距離であったり、異分野からの自由な参入であったりとあらゆるところで見受けられる。このデジタル化のスピードに対応できるよう企業も進化しないと絶滅もありうると警笛を鳴らした。

では企業存続の条件として、'90年代のアメリカ経済をモデルにみてみると職種転換の構造を見ることができる。いわゆる鉄鋼、自動車などの重産業からハイテク・映像、金融サービスなどのコンテンツ産業への人材の移動である。アメリカでは基盤の中心が大企業から中小企業へ移動しているとも言い換えることができる。そしてそれら中小企業の方が進化のスピードが速かったということでもある。

そして後半、企業の発展と成長をいかにして続けるかとの方向に展開した。コンテンツを中心に据え、ビジネスの仕組みを根本的に変える必要があるとした。新しい製品を作るだけでなくその先にどんなビジネスがあるかを考える必要がある。形ないモノの価値をどれだけ打ち出していけるかが大切と金田氏は語った。

最後にコンピューターゲームビジネスモデルとして先日発表になったプレイステーション2のビジョンやテクノロジーの紹介VTRを上映し、セッションを締めくくった。

東京大学国際・産業共同研究センター教授、安田浩氏(ただし別の機会に撮影したもの) 東京大学国際・産業共同研究センター教授、安田浩氏(ただし別の機会に撮影したもの)



次に東京大学国際・産業共同研究センター教授、安田浩氏の“21世紀ディジタルネットワーキングのインパクト”と題した基調講演が行なわれた。ネットワークに関して国内はもとより世界中で行なわれている議論の総括という感じで、非常に幅広い内容となったこのセッションは大きく3つの課題をレポートする。

まず技術的課題。米国やカナダでは既に2年前に終わっているというギガビットのインフラ整備は、国内においてはようやく研究開発用のものが整備され利用段階に移った。しかし、将来的家庭用インフラとしてはADSLをはじめCable-TV、光ファイバー、無線系、衛星系と多様なアクセス形態が混在し、実施時期や性格もまちまちである。これらがどういう特性を持っているのかを見きわめることが重要と語った。具体的には常時接続系と高速通信系の2つがあり、得意とする利用形態(アプリケーション)が異なるのである。

利用者環境の改善としてはキーボード環境の改善はもちろんのこと個人個人にあうインターフェースを構築していくことが必要であるとした。その中の1つの試みとして、絵ことばの実験の様子を紹介した。文字や音声によるコミュニケーションではなくデジタル象形文字でのコミュニケーションである。子細まで伝えることは難しいが、パソコンを不慣れとする老人や子供、また異言語間でのコミュニケーションでは新しい文化を構築していくかもしれない。

またネットワークの発展と共に重要な役割を果たす、著作権保護技術や個人認証(電子認証)の解説も行われた。特に認証に関しては、公開鍵、秘密鍵の詳細な解説も交え、声明した。

市場原理で20パーセントを越えると爆発的にその利用者が増加するという。いま日本のインターネットはその境目に差し掛かろうとしている。これらのことも踏まえた関連技術の発展が必要であるとしてセッションを終えた。

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン