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「商売の原点に帰ったマーケティングを」---NTT SOFT Solution Fair'99セミナー“金融マーケティングとインターネット”

1999年09月30日 00時00分更新

文● 編集部 小林伸也

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NTTソフトウェア(株)が開催したイベント“NTT SOFT Solution Fair'99”で、“金融マーケティングとインターネット”と題したセミナーが開かれた。米国で伸びているインターネット銀行といった取り組みを紹介し、従来の大多数を対象にしたマーケティング戦略から、顧客一人ひとりのニーズに柔軟に対応する“リレーションシップ・マーケティング”への移行が必要、とされた。

「顧客の家族構成や好みまで知り尽くした青果店の商売こそ、リレーションシップ・マーケティング、つまり商売の原点」と語る西浦氏 「顧客の家族構成や好みまで知り尽くした青果店の商売こそ、リレーションシップ・マーケティング、つまり商売の原点」と語る西浦氏



講師は、コンサルト会社の日本ブーズ・アレン・アンド・ハミルトン(株)副社長の西浦裕二氏。金融から航空業界まで幅広い分野でコンサルトを担当し、近著に『金融マーケティング』(東洋経済新報社)がある。

西浦氏はまず、時代が変換点にあることを指摘。「近代は同質結合の時代だった。例えば、グループ企業間のみで仕入れをしたり、トヨタグループの社員がトヨタ車に乗らないと白い目で見られたりするように。ところが“ポスト近代”では、個性や主体が重視され、それぞれが壁を越えて結びつく。ただし、相手から見てメリットがあると思われないと連合に加われない」とし、「このような個性連合はインターネットが可能にした。インターネットが新しいシステムのあり方を規定するだろう」と前置きした。

その上で、「マーケティングの基本は、ニーズが異なる顧客に、ニーズに対応した商品、サービスを提供する方法を考えるということ。これまでの金融サービスは、せっかく顧客の顔が見える直接の取引関係にあるのに、“大劇場型”のマス・マーケティングをしてきた。これからは商売の原点に帰り、相手の顔を見ながらの“小劇場型”のマーケティング、リレーションシップ・マーケティングが必要になるだろう」と発想の転換を促した。「この際にカギとなるのが顧客維持、おなじ顧客への重ね売り、顧客から別の顧客への紹介、の3つ。顧客との関係が長くなればなるほど収入に貢献する」と語った。

例として、イギリスで大成功を収めたテレフォンバンキングサービス“FIRST DIRECT”を挙げ、「もっとも利用者が多かった中高年層にターゲットを転換し、自動音声装置を使わず、ベテラン銀行員に応答させるなど、電話でじっくり相談したい、というニーズに応えた点が成功の要因」と解説した。

まとめとして西浦氏は、「インターネットが発達したポスト近代では、マスメディアを中心としたマーケティングから、それぞれの客、つまり“個客”別のインセンティブプログラムを用意し、双方向のコミュニケーションが重要になるだろう。どのバナーからジャンプしてきたのか、その後どこへ飛んだか、といったデータを活用してマーケティングをする金融機関も出てきている。金融サービスにおいては、商売の原点に戻って顧客をよりよく理解し、関係を長続きさせることが課題になる」と強調し、セミナーを締めくくった。

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