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【WORLD PC EXPO 99レポートVol.31】“Palmコンピューティングの戦略と未来”――話題の人物も登場! 密度の濃いフォーラム(後編)

1999年09月14日 00時00分更新

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幕張メッセで9月7日より,5日間にわたって開かれた“WORLD PC EXPO 99”のWORLD PCフォーラムでの“Palmコンピューティングの戦略と未来”の後編をお伝えする。後編では、Palm OS搭載機として、現在、話題になっているHandspring社のRob Haitani氏も登場。

日本オラクルがPalm Computingの世界へ参加する理由

セッションの後半では、まず、日本オラクル(株)マーケティング統括部システム製品統括部の佐藤聡俊氏が登壇した。まず、佐藤氏はオラクルを知らないユーザーも多いのではないか? という配慮からオラクルの紹介をした。世界第1位のRDBMSのベンダーであり、世界第2位のソフトウェアベンダーであると同社について語った。さらに、FY99の収益8.3億ドル、世界140ヵ国での事業展開していることなども付け加えた。

日本オラクルの佐藤氏
日本オラクルの佐藤氏



また、なぜPalm Computingの世界へ参加するのか? ということに対して、そのキーワードとして、“Consolidate(整理統合)”を実現するためと説明した。

「データベースを全社的に、ないしはコミュニティーで共用する場合は、大きいフレームワークの中では大きいデータベースが必要になる。さらにそのサブセットとして、部門でのニーズがある。そして、その下の個人での利用ではPalmが最適だ。データを活用する個人で一番大きいニーズは、必要とするデータが簡単に選択でき、それが統合されることである」――。

移動体型では接続されている必要はなく、それを生かすアプローチを必要とした。そのためにPalmが最適だという。オラクルでは、'99年2月の日本アイ・ビー・エムのWorkPad投入に合わせ製品を投入した。

また、“Palm Computingプラットフォーム”と『Oracle8』を直接連携する次期リリース製品『Oracle Lite』や、修理業務支援システムのユーザー事例も紹介した。

3Comジャパン デベロッパー プログラムマネージャーの矢内健治氏は、日本で開発したアプリケーションを主に紹介した。『ハンドメモ』は、テキストで書いたメモにグラフィックスを混在できるもの。また、『JRトラベルナビゲータ』がWorkPad用として発売されると発表した。さらに、ゲームとして『タイガーウッズPGAゴルフツアー』も紹介。

『タイガーウッズPGAゴルフツアー』
『タイガーウッズPGAゴルフツアー』



Rob Haitani氏が来年にHandspring製品を投入すると爆弾発言

次はいよいよHandspring社のRob Haitani氏が登壇した。

「日本語はネイティブではないが、せっかくだから日本語で」と、Haitani氏はにこやかに語った。日系である氏の日本語は、なかなか堂々としたものでわかりやすかった。

まず社名の由来について、“Handspring”は“とんぼ返り”という意味であると説明した。また、“ハンドヘルド”のハンドから“飛び出す”、“スプリングする”という2つの意味も含まれているとも。

現在、同社はPalm OSのライセンスをとってPalm OS互換機を製作中だ。近いうちに発表するという。氏が「インターネットではさまざまな噂が流れているが」と語ると場内で笑いが起こった。

Handspring社のRob Haitani氏
Handspring社のRob Haitani氏



「カテゴリーを拡大することが目的だ。付加価値をつけて新しいユーザーとマーケットを拡大したい。日本に対しては、実は何人もPalm Computingで日本語化したメンバーおり、来年にHandspring製品を投入する」という爆弾発言があった。

「多くのアメリカ人の日本マーケットに対するイメージは、秋葉原に行けばわかることだが、複雑な商品が好きだというものだ。私も成田についてから、インターネット対応電子レンジを見てびっくりした。

ところが、Handspringでは多少その認識は違っているとと考えている。日本のユーザーは複雑なものが好きというよりも我慢強いのではないか(笑)。我々はPalmOSの“良さ”、“簡単さ”、“使いやすさ”には、民族を超える魅力があると感じている。ただ、日本では小さいものにより要求が厳しい。どうやってPalmOSの簡単さを守りつつ、機能を増やしてもそれを失くさないようにできるか? ということがチャレンジだと認識している。

Palmの簡単さを守りつつ、拡張性のあるアーキティクチャーを追加する。今のPalmも拡張性はあるが、ユーザーがすぐに変更できる簡単さはない。そういったユーザーが簡単に追加できる拡張性を追加したい

Handspringは、携帯電話並みの普及率を目指したい。現在のPalmの400万台という数字は大したものだが、パソコンの歴史を振り返れば、これからの方がさまざまなイノベーションが出てくる。ハンドヘルドデバイスが1億台を達成する時は、どういった製品になっているかまったく予想がつかない。そのときにもPalmOSが1番であることは間違いないと思っている」と語った。

2000年以降のパームコンピューティング環境はカラー化、ワイヤレス化、Java対応に

最後にアラン・ケスラー氏は“パームコンピューティング プラットフォーム2000年以降”について総括した。

「今後はシンプル性をさらに追求し、カラー化も行なう。Java対応となることで、150万人のJava開発者の協力を得ることになる。さらにオープンプラットフォーム化が加速していく。また、新しい顧客セグメントへ拡大し、ワイヤレスデバイスを中心に市場開拓をする。選りすぐった世界的パートナーとのパートナーシップを拡張していく。

実際に日本でもめざましいものがある。インフォメーションマネージャーやスマートフォンなどのワイヤレス分野が大幅に伸びている。ブルートース、ワイヤレスネットワーク、ポケベルなど、ワイヤレスの世界を対象にして今後さらに市場開拓をしていく。生活に不可欠な情報のアクセスマネジメントの新スタンダードを確立する」と結んだ。

時間が少なかったパネルディスカッション

パネルディスカッションは、“Palmは日本もでNo1になれるのか?”というテーマで行なわれるはずだった。しかし、時間が大幅に削られて十数分しかなかったため、ディスカッションというより、一言コメントという感じだった。

司会として日経WinPC編集長の川上真氏、パネリストには、パーム・コンピューティング日本担当マネージャーのクレイグ・ウィル氏、日本アイ・ビー・エムの天明祟氏、日本オラクルの龍野智幸氏、J-OS開発者の山田達司氏、Handspring社プロダクトマーケティング部長のロブ・ハイタニ氏が参加した。

パネルディスカッション中の各氏。質疑応答の時間しかなかったのが残念
パネルディスカッション中の各氏。質疑応答の時間しかなかったのが残念



“Palmは手帳と比較することが可能な最初のデバイスである”と位置付ける山田氏がまず口火を切った。

「2、3秒で紙には書けるが、Palmは手帳に近づいてきた。水に濡れても放り投げても大丈夫という頑丈さにはかなわないが、コンピューターゆえのメリットもある。勝てるとは限らないが、対抗できるレベルになった。また、ソフトも3000本に増え、周辺機器のバリエーションも広がった。毎日遊んでも遊びきれない。キーボードだけとっても5つある。面白いおもちゃだ。

Palmは携帯電話と同じようにパーソナルなものだから、絵を描いたりといったさまざまな遊び方がある。また、開発者からすると、Palmは大きくて魅力的な山にたとえられる。登山靴は3ComやIBMが用意してくれている」――。

山田氏がPalmを玩具的に捕らえるのに対し、オラクルの龍野氏はPalmをビジネス的な面で使い始めたという。ディスカッションの参加者の中では一番の初心者だろう。
「個人的には“ポストイット”が貼れてすぐ見ることができる点も気に入っている。手入力でも使用にも慣れてきて、現在は客の前でデモンストレーションをしたりしている。現在進行中でまだ社名は公表できないが、ある会社の取締役がWorkPadを購入した。とても気に入って、社員全員に持たせようという話になった。IBMと話して、1ヵ月から1ヵ月半で必要なシステムを構築できることになった。Palmに関しては個人のレベルからボトムアップしていく。Palmを個人的な面から使い続けていってほしい」――。

熱心にディスカッションに耳を傾ける聴衆。時間があまりなかったのが残念
熱心にディスカッションに耳を傾ける聴衆。時間があまりなかったのが残念



さらなる軽量小型化、拡張性の充実に強い要望


また、天明氏は“なぜPalmを選んだか?” ということについて説明した。

「米国で売れたということはもちろんあるが、日本人は機能がたくさんある機械が好きだというのは確かに正しい。しかし、実際はリモコンなどでも3つか4つのボタンを押すだけだ。マニュアルを読むかといえば読まない。4つのボタンでできるのがベストだと思っている。手渡しの情報を渡したい。今後、紙で扱えるようなレベルにならないと」と言う。

ロブ・ハイタニ氏は、「個人的にはあまり頭のいい人ではないから、パソコンを使った場合に使いこなせない。新製品については残念ながら語ることができない」と、ユーモアを交えて語った。

次に、イクレイグ・ウィル氏は“Palmプラットフォームの嗜好には日本と海外で違いがないこと”を挙げた。

「このPalmプラットフォームは他のプラットフォームと簡単につながる。直接、サーバーにデータアクセスが可能になったので、接続性が重要だと言える。もう1つはデザインだ。設計は優れていて世界一流のデザインともいえる。世界で一番薄く世界で一番小さい携帯端末だから。海外でも重要だが、日本ではより小さく薄いということは重要だ」と接続性とデザインの重要性を強調した。

最後に時間の関係でパネリストが一言ずつPalmに対する要望についてコメントした。

「もっと薄くなってほしい。もっと接続できるデバイスがほしい。Palmが十何台あるんで、もっと簡単に同期したい」と語たのは山田氏。しかし、そんな要望があるのは山田氏だけでしょう? と司会者から突っ込まれていた。

「“c3”よりも薄く小型にしてほしい。ポストイットの張りやすさを維持しながら」(龍野氏)、「薄さというのはいいと思っているが、もう少し軽くなってほしい。100gは切りたい。もっとも60gの必要はない。より拡張性がほしい。シリアルよりは速いデバイスがあるので拡張性を考えたモノが出てきてほしい」(天明氏)、「日本と海外の成功は、開発者の頭の中のアイデアと創造性が一番重要だ。日本でも海外でもそういった会社を開発したい」(クレイグ・ウィル氏)――。Palmに対する要望は、いずれも軽量小型、拡張性に絞られていたようだった。

また、ロブ・ハイタニ氏は、司会者からの何度かの新製品についての突っ込みに負けず、「言いたいけれど、言えないのが悔しい。“実はですね”ってことが言えないのが悔しい。近いうちに発表するで期待してください」とだけ語った。

時間の少なさが残念であったが、とても中身の濃い充実した講演会であった。

≪モバイル・ニュース 山田道夫≫

・WORLD PC EXPO 99
http://wpc99.nikkeibp.co.jp/contents/index.htm

【関連記事】WORLD PC EXPO 99 レポート目次
http://www.ascii.co.jp/ascii24/call.cgi?file=worldpc99.html

【WORLD PC EXPO '99レポート Vol.30】“Palmコンピューティングの戦略と未来”――話題人物も登場! 密度の濃いフォーラム(前編)
http://www.ascii.co.jp/ascii24/call.cgi?file=issue/1999/0914/topi03.html

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