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不正商品対策協議会が“アジア知的所有権シンポジウム”を開催

1998年02月13日 00時00分更新

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官民・多国間の協力でシンポ開催

 不正商品対策協議会は、“不正商品対策協議会アジア知的所有権シンポジウム'98”を開催した。不正商品対策協議会は、'86年設立。(社)コンピュータソフトウェア著作権協会、(社)日本映像ソフト協会、(社)日本音楽著作権協会、日本国際映画著作権協会、日本商品化権協会、(社)日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会など9団体からなる任意団体。

 シンポジウムでは、A国で作られた不正品がB国で組織的に売られるというケースに見られるように、不正商品を駆逐するためには官民・国際間での協力が重要という観点から、国際刑事警察機構(ICPO)、警察庁、文化庁、特許庁、(社)コンピュータソフトウェア著作権協会、アジア各国の弁護士からの報告があった。シンポジウムは4部に分かれてセッションが行なわれたが、趣旨は以下のとおり。

知的所有権の日本の歴史と現状

 知的所有権とは、知的活動の成果に対する保護を定めた法律のことで、映画や音楽、コンピュータープログラムなどの著作物に対する著作権、デザインなどに対する意匠権、サービスマークなどに対する商標権などの総称。偽ブランド品や海賊版ソフトなどの製造販売を禁じている。それに反するものを不正商品と呼び、本物よりも安い価格で出回ったり、本物と偽って粗悪品が販売されたりしている。

 日本では明治時代に福沢諭吉が、著書『学問のすすめ』の海賊版が出回っていることに対し、新聞に意見広告を載せたのが知的所有権の始まりという。同時期に横浜などの居留地で偽イギリスビールを日本人が売り、外国から非難を受けるという事件も起こり、1899年に著作権に関して国際条約のベルヌ条約、特許などに関してパリ条約に加入した。

 近年では横行する偽音楽テープや偽ブランド、海賊版ビデオ販売などに対し、'86年ごろから警察などによる取り締まりが本格化した。'84年にはビデオレンタルショップの90パーセントが海賊版をレンタルをしていたが、'90年以降は10パーセント未満に減少したという。最近は海外の偽ブランドの密輸入やインターネットによる海賊版ソフト販売など犯罪手口が巧妙化してきているという。

 各方面から出された意見、コメントは、

 「人、物の移動の自由化に伴い、一国内できびしく取り締まっても外国でやられるだけなので、国際的な取り組みが必要」(ICPO事務総局経済犯罪課長 瀧澤裕昭氏)

 インターネットでの海賊版販売について、「コンピューターにあまり詳しくない警察官が多く、捜査に苦労している。被疑者の割り出しが困難で、関係者の協力も得にくい」(警察庁 生活経済対策室長 柴田健氏)
 
 「プロバイダーに情報開示させることが可能かという点で、法で定めた通信の秘密により、プロバイダーは個人情報は教えられないとされている。しかしホームページのように通信内容が公開されている場合は発信者の住所氏名を明らかにしても通信の秘密に反しないという意見もある」(シ
ンポジウムアドバイザー 前田哲男弁護士)

 「海賊版のCD-ROMを入れるとゲームができるように改造されたNINTENDO64がこの2年間で日本で10万台出回っている。アジアでは任天堂のゲームの9割がこのようにして遊ばれている」(コンピュータソフトウェア著作権協会専務理事 久保田裕氏)

 「来年は著作権法ができて100年になるので意識を高めるアピールをするのに重要な年。'98年度は著作権課に加えて、国際著作権課をつくる」(文化庁 著作権課長 板東久美子氏)
 
 「商標権を侵害されたときは、あきらめずに徹底的に追及することが大事。特許庁も支援する。また取り締まるだけでなく知的所有権の権利を尊重する意識が大切」(特許庁 商標課長 工藤莞司氏)

 



アジアの状況

 またアジアの国々では、中国、韓国、シンガポール、タイなど9ヵ国がベルヌ条約、パリ条約、WTO(世界貿易機関)などいずれかに加入している。台湾は条約加盟が遅れているが、「今年中にWTOに加盟できるかどうか、という状況」(台湾 台湾國際専利法律事務所所長 林志剛氏)という。

 不正商品を税関で水際阻止するなど国際協力を行なっていく土台はできつつある。参加した中国、韓国、台湾、タイ、マレーシア、インドネシアの弁護士達は、それぞれ法整備の状況や犯罪件数などを報告した。その一部を紹介すると、

 「近年先進諸国の仲間入りをして、平均収入も消費能力も研究開発能力も上がった。今の台湾は、日本の'70年代の意識に似ているかも。特許の出願件数も着実に増えている」(林志剛氏)

 「海賊版ビデオ販売など逮捕件数は年々下がってきているが、実際は、店頭で売らずにカタログオーダーで宅配で届けるなど、取り締まりが難しくなっている状況」(タイ タイ国際法律事務所 Chavalit Uttasart氏)

「'70年以降、法は整備されたが、不正商品に対する国民の意識は10点満点中4点ぐらいで低い。社会のあらゆる層に知的所有権の教育が必要。またコンピュータープログラムの保護については今のところ判例がない」(マレーシア PETER HUANG&RICHARD特許法律事務所 Peter Huang氏)

 注目できる意見としては、

 「だんだん著作権に対する認識ができてきたが、かつてクリエーターは、自分の作品を模倣されると誇りに思ったものだ」。また日本と同じ様な問題意識として「値段がもっと安ければ子供に海賊版でないゲームを買ってあげられるのでは」(インドネシア HADIPUTRANTO,HADINOTO&PARTNERS法律事務所 Erna Letty Kusoy氏)



 最後に、シンポジウム運営委員長の入江雄三氏は、「知的所有権の問題は1回のシンポジウムではとりあげられないので、今後数年、5回ぐらいの予定で、広く浅く、多面的に掘り下げていく予定です」と締めくくった。

(報道局 若名麻里)

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