【Linux Conference 2000 Spring レポート】組み込み用途のLinuxの未来を語る「オープンソース: グローバルソフトウェア市場への挑戦」
2000年04月19日 00時00分更新
日本Linux協会(以下JLA)とソフトバンクフォーラム(株)は4月18日、Linuxユーザーを対象としたイベント“Linux Conference 2000 Spring(以下LC2000)”を東京・有明の東京ファッションタウンで開催した。開催期間は、18日から20日までの3日間。
LC2000初日の18日、元米Cygnus SolutionsのCEOであり、現在は米Red HatのCTO(Chief Technology Officer)である、Michael Tiemann氏を招いて、「オープンソース: グローバルソフトウェア市場への挑戦」と題されたキーノートスピーチが行なわれた。平日の午前中ということもあってか、会場はやや空席が目立った。
日本Linux協会理事やまだあきら氏 |
まず、日本Linux協会理事のやまだあきら氏による、「LC2000のテーマは『さまざまな分野との結合、橋渡しの場を作る』ことである」との開演挨拶があり、そののち、同氏に紹介されてTiemann氏が壇上に上がった。
Tiemann氏は、「今日はインターネットの革命の先にある、『接続性の革命』について話したいと思います」と話し始めた。
米Red HatのCTO、Michael Tiemann氏 |
Tiemann氏はまず、革命の例として、
- ネットワークとファイルシステムの組み合わせによって、NFS(Network File System)ができた
- GUIとHyper Textの組み合わせによって、インターネットの革命が起こった
ことなどを挙げ、それぞれに進化したものが組み合わさることによって革命が起こると説明した。
また、現在のインターネットの成功には、オープンなプロトコルと、オープンソースが必要だったことを過去を振り返りながら説明した。そしてこれらは、現在のLinuxの重要な要素でもあり、「接続性の革命」において、Linuxは、重要な役割を果たすと語った。
Tiemann氏の考える接続性の革命の要素として、
- デスクトップPCを超えたものとしての組み込みシステム
- オープンなプロトコルを使用したクライアント/サーバシステムの採用
- オープンソースであるLinux
を挙げ、現在の組み込みシステムの問題点として、
- 組み込みシステムは、目的が特化されているために汎用化されにくかった
- 携帯電話や、デジタルカメラなど、企業が実装の決定権を持っていたため、オープンな規格が生まれなかった
ことなどを挙げた。
そして、これらの問題点が改善されて、組み込みシステムとクライアント/サーバシステム、Linuxが組み合わさったときには、
- 1つの目的のために作られたデバイスが、それ以外の目的に使用できるようになる。たとえば、プレイステーション2をグラフィックワークステーションとして使用できるようになる
- 従来とは異なった用途や接続性を持ったサーバが普及する。 たとえば、従来のWebサーバ以外にも、デジタルカメラからの操作で、画像をサーバへ転送、編集などが可能なホームサーバができる
- プロトコルとソフトウェアがオープンなので、これまでに考えられなかったようなアプリケーションが作成される
ようなことが起こるのではないか、と語った。
そして、さまざまなスペックのデバイス、組み込みシステムでLinuxを利用するためには、用途やスペックにあった、Linux APIの規格が必要であると説き、現在米Red Hatでは、「EL/IX(Embedded Linux API based on POSIX)」という規格を提案しているという。これは、その名のとおり、POSIXをベースとした組み込み用途向けのLinux用APIで、マルチタスクやシングルタスク、ネットワーク機能の可否などによって、APIセットを定めたもの。これにより、過去のソフトウェア資産を活用でき、ソフトウェアの移植や作成の際に参考にする標準ができることで、ほかのソフトウェアとの相互運用性が増すという。
「EL/IX(Embedded Linux API based on POSIX)」は、http://sourceware.cygnus.com/elix/で公開しているので、ぜひ見てほしい、とスピーチを終えた。