今年1月のLotusphere'99では、一部のロータスドミノユーザー待望のLinux版が正式発表された。現在はSneak Preview版が発表され、興味のある誰もが、その動作を確かめることが可能になった。さらに国内では、Linux World/Conference Tokyo'99において、英語版ながら無償でSneak Preview版を収録したCD-ROMが配布され、会場ではデモンストレーションも行なわれた。
今後のLotus Domino R5 for Linuxについて、ロータス(株)マーケティング本部戦略企画部の柳下鋼利氏にお話を聞いたので、その模様をお伝えする。
聞き手は、ASCII Network Pro(旧アスキーNT)で長年ノーツ関連の記事執筆をしてきた(株)ローカスの新妻正夫氏だ。
いま、2つの角度から開発を行なっています。1つはLinuxはほかのUNIX系OSと違う部分、たとえばスレッドの管理などがあります。実は、Domino R5では「thread pooling」などを行なっているので、その部分で調整しています。
それから、Domino R5自身が5.03までに進化しますので、いろいろ機能強化を行なっています。その両方ですね。安定性と機能強化という点で現在作業しています。
たぶん日本での製品出荷というのは、来年早々ということになるのではないかと考えています。今年のLotusphereで告知を行なったことについて、「きちんとやっています」ということを、SanFranciscoで明言したということです。
“NTキラー”というわけではないのですが、当社のマルチプラットフォーム戦略ということで、Linuxをきちんと扱っていくということを進めています。
実際、Domino R5 for Linuxというのは、SanFranciscoの会場で見せたんですけれども、サーバのコンソールが動いているのを見ても、誰も納得しないんですよ(笑)。「確かに画面的にはそうだよね」というのは分かるのですが。
たとえばLotus 1-2-3や、などのような、どちらかというとクライアントサイドで使えるようなものというのは、まだ検討中の段階で、まだまだポーティングするということすら決めていないのです。やはり最大のポイントというのは ―これは企業の方もそうだと思うんですが― サーバに使われますよね、ということです。Dominoや、Notes Pumpだとか、そういうバックグラウンド系で、かつNTと比較して、ITの方から見て信頼性の高いUNIX系のプラットフォームを使いたいというニーズを先にキャッチアップするということですね。ただ、Linuxバージョンが出るときには、R5には「DECS(Domino Enterprise Connection Service)」という機能が付いていますので、たとえばOracleやIBM(日本アイ・ビー・エム)さんのDB2だとか、Linuxにポートしている製品との連係というのは、少なくともチェックして出すことになります。
たとえば、向こうだとRed Hat Linuxは間違いなく標準なのでそれはやりますと。次は? といったときに、米国では案外Calderaが使われているので、やっぱりCalderaは無視できないよといっているんですね。
ですが、日本ではTurboLinuxがありますので、基本的にはTurboもやりますという形で考えています。日本でディストリビューションを考えていったときにキーになるのは、ウチだけがやっているのではなくて、たとえばIBMさんとか富士通さんのようなPCサーバのハードウェアを出されているところがサポートするディストリビューションと同じものしかないだろうな、と思っています。
その点で言うと、日本ではまだ最終的には決定してませんが、Red Hat LinuxとTurboLinuxが濃厚だと考えています。ほかにもいろいろありますれけどもね。
そういうところで見ると、来年の4月でしょうね。日本でLinuxベースでシステムを導入してくるのは4月以降になるのではないかと思いますよ。遊んでやるという人はいるでしょうけど。
「やはり次はApacheでしょう」というご意見が大きいので、ApacheのAPIでどこまでできるのか分かりませんが、同じようなことは考えていると。まあ、最大のメリットはApacheだと思っています。
sendmailというところで考えてみると、メッセージングのシステムというところで、どちらでも(Domino R5でも、sendmailでも)使ってくださいという話はあると思うんですね。単なるメッセージルーティングというところで話をすれば。Domino R5の使われ方というと、やはりメッセージング系では、ディレクトリを使ってLDAP経由でアクセスできるだとか、ディレクトリ情報を使ってさまざまなWebアプリケーションをコントロールできるだとか、そういうところにフォーカスされていって、HTTPやSMTPという素の部分というのは、OSに付いているものを使っていただいても同じように処理できます、という話になるのではないかと思います。
ただ、Domino R5のSMTPサービスを使う最大のメリットというのは、いったん処理して、ふつうPOPだったら単純にディレクトリに保管されてしまいますよね。普通のメッセージングシステムの場合はディレクトリ内に単に置かれているメッセージが、Notesのデータベースに入っています。HTTP系も単にディレクトリに入っているのではなくて、Notesのデータベースに入っています。ですから、コンテンツの管理という部分を考えたときに、ウチのものを使いましょうという選択になると思うんですね。今後日本のお客さまは、POPというよりも、IMAPでサーバにメッセージをずっと置いておいて、どこからでもアクセスしたいという話になると思うので、コンテンツ管理という面からDomino R5のほうを使ってくださいとご提案することになると思います。
お客さまによってシステムの組み方が変わってくると思いますので、そういった柔軟性を与えつつ、ウチの良さというのをご理解いただくということになると思います。やはり、コンテンツの管理というところでアドバンテージがあるだろうと思っています。
同じライセンスだった場合には、プラットフォーム別での価格差はないんですね。たとえばWindows NTであっても、AS/400であってもAIX、Solaris、Linuxであっても、全部価格は同じなんですよね。ただ、その価格がやりたい事やパフォーマンスといったことによって、変わってきますと。たとえば1万人の人が同じマシンにアクセスする時には、そのマシンのパフォーマンスはすごい高いものになるでしょうし、それなりの金額になるでしょう。よってライセンスもそれなりの形にすると思うんですよ。ですから、価格はたぶんほかのプラットフォームと同じ、ライセンスはいまと同じようにスキームで行くということになります。
(株式会社ローカス 新妻正夫)