EMIデビューでDISられたら「逆に嬉しい」
―― 活動の根幹にあるのは「日本語ラップに興味を持ってほしい」という意志だと思うんです。ただ、そこからEMIのようなメジャーレーベルからデビューすると、まっさきにDISられる(非難される)対象になったと思うんですよ。恐れというのはありませんでしたか。
らっぷびと 逆にDISられたら嬉しいですけどね。昔はやっぱりセルアウトというか、ポップな方向の人たちが少なかったという意味でKick the can crewとかRIPSLYMEがDISられたと思うんですね。
今はそういう人たちが増えてきて、そういう人の中にも格好いい人がいるし、むしろ客としてぼくが見ている中で「DISられそうだな」と思う人もスルーされているんですよ。ハーコー(ギャングスターラップのようなハードコアヒップホップのこと)側の人がどう考えているのかはよく分からないですけど、むしろDISられたらありがたいなと言うくらいで。それに対する主張があればもちろんアンサーを返します。
それに「興味を持つ=ポップ」という風にはまったく考えていないんです。らっぷびとの良さは「振り幅」だと思っているので、別のジャンルを「らっぷしてみる」ことで、色んな場所にいる人が興味を持つきっかけになってくれればと思っているんですよ。
―― これからも日本語ラップの伝道師としての役割は続けるんですか?
らっぷびと 実際に現場に出てみると、面白い人が山ほどいるんですよ。たとえば、ぼくの好きなSUIKAというアーティストがいるんです。編成がバンド形式だったり、女性のポエトリーリーディングが入ったりと、すごく面白いスタイルなんですよね。
でも、そういう面白い人たちがまだほとんど知られていないんです。そういう部分も含めて、日本語ラップの面白さを感じてもらえればと思います。
―― 忙しくなってきたと思いますが、アニメや漫画はチェック出来ているんでしょうか。
らっぷびと 基本、アニメは毎シーズン10本くらいチェックしているんですが、さすがにあまり観られてないですね。レコーダーで録画して、メシ食う時間とか寝る前とかに見ていても見切れてないです。
A型で神経質なので、本当ならチャプター分けしたりCMカットしたりしたいんですww それをしていると1話あたり4分以上かかってしまうんですが、DVD1枚にまとめようとするとどうしてもカットしなくては……と思ってしまう。
今は「まりあ†ほりっく」という、SHAFT(アニメ制作会社)によるアニメが面白いですね。SHAFTは「絶望先生」「ぱにぽに」も作っていたので以前から好きだったんです。新房昭之監督の色使いだとか演出方法が好きで、原作の少女コミックは読んでないんですが必ずチェックするようにしています。
―― いま、楽曲制作にかけられるのは1日のうちどれくらいなんですか?
らっぷびと 2月に入ってからシングルのキャンペーンなんかが重なって、ライブもあれば取材もあるしで、割と忙しくて。3月頃には落ち着いてくるかと思うので、アルバムが発売したら次の制作に取り掛かれるかなと。そうなったら朝起きて寝るまで制作にかかれるんじゃないかと思っています。
―― もう次回作の構想は浮かんでいるんでしょうか。
らっぷびと やりたいことは大体まとまっているんですけどね。バンドとコラボをしてみたいというのがあって、ライブもそれでやれたら面白いだろうなと。
今回のアルバム9曲目「When They Cry -urban "ARIGATO" version-」でもTickというバンドのDonnyさんという方にアレンジを担当していただいているんですが、それを生で弾き直したりもしていたし。なので、次はたとえばスカ方面の人と一緒にやれたら面白いかなと思っています。
―― らっぷびとさんがメジャーデビューすることで色々な制約もあると思いますが、事務所側としてその辺りはどうなんでしょう。
事務所スタッフ 前例の無い事にトライし続けなければいけないアーティストなので、基本的には好きにやってくれたらいいと思います。何かあったら理を通して説明しますし。個人的には、例えばアニメソングなんかにはそこまで興味がないんです。でも絶対新しい事をやっていると思うから、ドンドン自分が面白いと思う事をやって欲しいと思ってます。
というのも、少し前ですけど、日本のヒップホップが個人的にあまり面白くないと思ってたんですよ。内側からカギをかけている感じがしてしまって。多分自分はコミュニティとかトライブの共通言語的になりがちな表現には興味がなくて、むしろ「迷走しながらも大きな振り幅を持って進む人を見ていたい」というところがあって。
最近はニコニコ動画も、ちょっとコミュニティ化してるかな? って思う事もあって。で、そうなった時に、そこから出て来たアーティストをメディアが取り上げる時に「オタクでしょ?」「アキバでしょ?」ってレッテルを貼りやすくなるのが厄介だと思うんです。
だから、メジャーどうとかいうよりも、未分類な作家性をそのまま引き受けられる環境が欲しいところですよね。
―― ありがとうございました。
ディスコグラフィー
「Rap Beat」(2008年8月発売 1500円)
1. When They Cry 2. クローバー 3. thrown the dice feat. dc 4. 素晴らしき絶望 零 5. 鼬ごっこ 6. ありがとうのうた 7. アル晴レタ日 8. When They Cry -tofubeats remix- 9. 人として軸がぶれているらっぷ
「All Day,All Night」(2009年2月4日発売 500円)
1. All Day,All Night 2. When They Cry (Piano ”SAYONARA” remix) 3. (エンハンスド)CD-EXTRA仕様
特設サイトへのショートカットファイル「今日から君もネットラッパー!」同梱
「Rap Music」(2009年3月11日発売予定 2500円)
1. INTRO-Start up- 2. basic stance feat.普通/FUTOO 3. All Day, All Night 4. オーディエンスを沸かす程度の能力 eat.ill bell 5. Rap Music 2009 6. yume_nano 7. リンゴ日和rapbit version 8. high-technology 9. When they cry -urban ”ARIGATO” version- 10. back to back 11. 空想ルンバらっぷ (大槻ケンヂと絶望少女達 feat.らっぷびと) 12. Aikotoba 13. 雪花火 14. OUTRO-オトマビキ-