意外なことに、販売元は昔懐かしの「フエキ糊」で有名な不易糊工業。同社の人の話によると、「グッドデザイン賞を取ったこと」と、「ゼムクリップの様なクリップ」が特徴だそうだ。
クリップの位置や形状から、深いポケットに入れると本体が完全に隠れてしまうが、便利か不便かは別にして面白そうだ。ただ自慢のクリップも、シャープペンシルをノックするときには極めて不安定感なクリック感なのが残念。
ボールペンとシャープペンシルは細字で日本人好みだが、直径2mmの極細消しゴム軸は、使う人を選びそうだ。
筆者の私見ではあるが、locus 3way penは「道具」としての書き味や書き易さからのデザインアプローチではなく、あくまでデザインのためのデザインに思えてしまう。
だが幸い、なんちゃってデザインコンシャスなペンによくある筆記時の「軸ブレ」等の不良はまったくなく、なかなか安定した書き味だ。
筆者は海外の素晴らしいデザイナーの筆記具を少しだけ収集しているが、多くの息の長い海外製品は、「道具としてのデザイン」が優先するのに対して、日本の製品は、「デザインのためのデザイン」が常に優先していると思えてならない。デザインはあくまで一時的な販売促進策なのだろうか。
いつかは日本の文具業界からも、世界に通用する「ポルシェデザイン」のボールペンの様な「実効能力の高いロングライフ筆記具」が登場することを願って止まない。そして、デザイン関連の賞は、真に道具としての価値が判断できる、登場から3年後くらいに授与すべきだろう。今のままでは、一般人から見ても、グッドデザイン賞の意義や目的、その価値が問われかねない可能性が高いだろう。
不易糊工業らしくないlocus 3way penは、短期間なら意外性が販売の後押しをするかも知れないが、自社の伝統的「どうぶつのり」の商品企画や、ウェブサイトの存在感の方が圧倒的にパワフルでストレートだ。選択と集中を求められる企業経営だが、同時に、弱いところを補完するより、強いところをより前面に押し出す経営や商品企画を考えてほしい。
今回の衝動買い
アイテム:「METAPHYS locus 3way pen」
価格:5250円(「AURA」JR新大阪駅店)
T教授
日本IBMから某国立大芸術学部教授になるも、1年で迷走開始。今はプロのマルチ・パートタイマーで、衝動買いの達人。
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