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世界企業パナソニック 90年目の決断 第8回

日本企業は世界でどう戦うべきか?

「ナショナル」の看板が外れるナショナルショップ

2008年11月19日 06時00分更新

文● 大河原克行

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パナランドホッタ

松下幸之助氏が旧ナショナルショップとの関係を示した言葉が「共存共栄」だった

 パナソニックへの社名変更、ブランド統一は、全国約1万8000店舗の旧ナショナルショップにも、大きな衝撃をもたらした。

 今年1月、パナソニックは、社名変更にあわせて、ナショナルショップの名称を、パナソニックショップに名称変更することを明らかにしたからだ。

 ナショナルショップとは、地域に根ざした中小規模の家電店。一般的に、「パパママショップ」とも称され、パナソニックの言葉を借りれば、「あなたの街の電器屋さん」ということになる。

 細かく見れば、ナショナルショップには2種類ある。一般的には、約1万8000店舗をナショナルショップとするが、そのうち、より専門性を持ち、意欲のある店舗に対する「スーパープロショップ」認定制度を、2003年度からスタート。認定店舗が全国に約5600店舗あるからだ。

 このスーパープロショップも、10月1日から、スーパーパナソニックショップへと名称を変更した。だが、略称は、従来同様、「SPS」となる。

 長年、地域に密着した形で店舗を構えてきたナショナルショップの最大の強みは、顧客の家族構成、家庭の間取り、そして、どんな家電商品を使っているかを熟知している点にある。

 商品の寿命や家族構成の変化にあわせた提案が可能で、薄型テレビでも、リビングの大きさに最適化した商品提案を、多くのことを聞かずに行なえる。これは、従業員が多く、こまめに店舗をローテーションすることが多い、大手家電量販店には難しいことだ。

 また、ナショナルショップのなかには、電球一個の交換のために、顧客の自宅を訪れるという例もある。

 高齢者にとっては、高い場所にある電球の交換はひと苦労だ。これも、地域に密着したサービス体制を敷いているからこそできるものだ。

 もともとナショナルショップには、「お得意先の電器係になろう」という精神がある。

 好きな商品を選んでくれという商売ではなく、顧客の家庭を知り、パナソニックの商品を熟知した上で、これが最適の商品であると提案できる商売形態であること、そして、家のことはすべて任せてもらえる店舗を目指すという考え方によるものだ。

 このように地域に密着している店舗のなかには、長年、「ナショナルのお店」と呼ばれ、親しまれている例が少なくない。そして、お店にきて、「National」のロゴを見て、これまで使っていた商品と同じメーカーのものであることに安心して購入する人たちも少なくない。

 それを象徴する「ナショナル」の看板が外れるのだから、ナショナルショップに衝撃が走らないわけはない。

次ページ「“技術を売る”パナランドホッタ」に続く

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