編集作業において、ディスプレー以外はノイズである
――デザイン面も既存の一体型VAIOと比べると、ずいぶん趣向を変えてきました。単体の液晶ディスプレーや、液晶テレビをイメージさせるデザインで、パソコンっぽくない。
近藤 コンセプトに関わる要素なのですが、今回はビデオ編集重視の「ビデオエディション」と写真編集重視の「フォトエディション」を用意しました。では、これら編集作業に必要な環境ってなんだろうと考えたときに、写真/ビデオ編集には素晴らしいスペックの液晶ディスプレーが必要になりますが、逆にディスプレー以外の部分には目がいかない。画面に集中したいですよね。
だから前に座ったときに、画面以外はほとんど目に付かないようなデザインにした。例えば、ディスプレーの下にある発光するソニーロゴも、設定で発光をオフにできる。視界を邪魔するものがないように、ノイズの少ないデザインを実現しよう。そのために、黒でマットな狭額縁のデザインが最初に決まりました。
この狭さを実現するために、新しいスピーカー「リニアラインドライブ」を使いました。デザインコンセプトを実現するために、あえてスピーカーも薄型のものを選んだわけです。
――ハードウェア設計的にはどうでしょう。大きなパネルとはいえ、その裏にすべてのデバイスを詰めて、さらに額縁は徹底的に狭くと言われるのは。
湯川 厳しいですね(笑)。25.5型と液晶パネルが大きくなったので、デバイスを中で重ねることなく、フラットに並べられました。「とにかく画面以外のノイズを除去したい、真っ暗な中で見ると、中に画面が浮いているようにしたい」ということだったので、判断が難しかった面もあります。
近藤 そのほかにデザインコンセプトの話では、正面から見るとノイズが少ない一方で、メモリーカードや光学ドライブ、ボタンをどこに配置しようかということになる。
最初にアイデアにあったのは、前から見やすくアクセスしやすい本体下部にしようという案でした。ところが、下部にメモリーカードスロットなどを配置すると、取り出しなどの際に前から押すと、ディスプレーの角度が変わってしまうんですね(編注:type Rの本体は上下にパンできる)。
それが真横なら力強く押してもずれないので、すべてのインターフェースは横に集中させました。しかし、横に集中させてしまうと、今度はスロットが正面から見えなくなったり、スロットに書いてある文字が読めなくなる。それを回避するために、スロットの並ぶ面を前方に傾斜させる。ただし、前方から丸見えにならないように、黒いベゼル部分は逆方向に傾斜させて隠しています。
この形状が、真上から見るとギリシャ文字の「Σ」に見えるので、「シグマデザイン」と呼んでいます。機能性のために、あえて勾配を2段階付けているのです。
――VAIOでシグマデザインと言えば、以前にノートでありましたね。
近藤 type BXですね。あのアイデアを横の面に使った、新しい使い方です。
湯川 一体型はどうしても、側面I/Oの使い勝手が悪いと言われます。デザイン的な面とスイーベル機構も使って、プロ用にも耐えられる使いやすさを実現できたかなと思っています。