心臓をリアルタイムで立体映像に!
説明会ではゲストとして、東京大学 先端治療福祉工学研究室のニコラス・ヘルランバン(Nicholas Herlambang)氏が登壇した。同氏は、自身が開発したCUDAベースの医療向け立体映像システムについての説明する。
このシステムは、MRIやCTスキャンによって体内の臓器(例えば脳や心臓)の形状をデータ化し、その3次元データをCUDA対応GPUに渡して、立体映像用の画像データを生成。立体表示可能なディスプレーに投影する。このシステムが実用化されれば、開胸手術をせずに体内の臓器の状態を映像化できる。遠隔医療への応用なども考えられるだろう。
ヘルランバン氏はこのシステムを、半年かけて1人で開発した。開発に当たっては、プレイステーション3のCPU「CELL B.E.」や、米AMD(旧ATI Technologies)のGPUコンピューティング開発環境「Close To Metal」なども検討したが、CELLは複雑すぎ、Close To Metalは柔軟性に欠けるといった理由で、CUDAベースで開発を進めたという。
CUDAの利点としてヘルランバン氏は、「スピード」「C言語ベース」「マルチプラットフォーム」「将来への互換性」の4点を挙げた。特にスピードについては、3.20GHzのPentium DとGeForce 8800 GTXを比較した場合、18~77倍もの性能差があり、扱うデータサイズが大きくなるほど、その差は広がる傾向にあるという。
心臓の鼓動がおおよそ1秒間1回であるため、毎秒1フレーム(1fps)の描画ができれば、心臓の鼓動をほぼリアルタイムで立体映像化できるという。GPUで描画した場合、データサイズが最大のケースでも2.9fpsの描画性能を発揮していたとのことで、優れた演算能力がうかがえる。また、メジャーな開発言語であるC言語ベースでのプログラミングが可能で、開発に当たっての学習は容易だったという。
GPUコンピューティングの応用範囲は非常に広い。学術機関や企業の研究所など、従来はスーパーコンピューターシステムを利用していたような用途から、プロフェッショナルなビデオ・CGクリエイターまで、とにかく重い浮動小数点演算を大量に実行する用途であれば、幅広く利用できる。
コンシューマーにも、ビデオエンコードや画像認識処理の高速化などは、恩恵のある用途であろう。CUDAを活用したエンコードソフトが登場してくれば、今はまだ重いH.264エンコードなども、GPU搭載パソコンであればサクサクとこなせるようになるだろう。