監督のこだわり満載! 「鉄腕バーディー DECODE」
赤根和樹監督インタビュー
──いよいよ放送直前ですが、監督ご自身からみて、完成度はいかがですか?
【赤根監督】 1話は大変良い出来で、自分でも満足しています。 かなり面白いです。
──本作品は一度OVA化されていますが、前作を意識されることはございますか?
【赤根監督】
15年ぐらい前ですよね? 20世紀ですよね(笑)。「鉄腕バーディー」のOVAが作られた頃というのは、自分が「天空のエスカフローネ」という作品で初めて監督をやっていた頃だったので、印象には残っていたんですよ。尊敬する監督やキャラクターデザインの方がやっていらっしゃる事もあって、「ああ、すごいのやってるな。」という重いがありました。
TVアニメ版を作るにあたっては、OVA版をそのままトレースするというのはできないですし、全く別の物を作ろうと考えて作り始めました。
ちなみに、OVA版でキャラクターデザインを担当されていた高橋久美子さんには、このプロジェクトが動き出した時に一度お会いして、「『バーディー』やるんですよ」ということをお話しました。
──高橋さんの方でも意識はされたんでしょうか?
【赤根監督】
いや~、していなんじゃないんですか(笑)? 「またやるの~?」なんて言っていたぐらいですから。
だって15年前というと、今ハタチの子がまだ小学校入っていないくらいの時代ですよ。たぶん当時OVAを観ていた人とかは、もうオッサンになってますから(笑)。
ゆうきさんにもお話ししたんですけれど、自分としては若い人たちに「バーディー」を観てもらいたいと思っているんですよ。確かにゆうきまさみファンには年配の方も多いんですけれども、「ヤングサンデー」という週刊誌に載っていることもあって、やっぱり10代、20代の方にも楽しんで観てもらえるような作品作りをしたいんです。
アニメとか映画とかフィルムっていうのは、ある程度その時代を写し込むものなので、現代の若い子たちの現代の生活なり感覚なりを取り入れた、現代の「鉄腕バーディー」を作っていきたいなと思っています。
──それが、今回のオリジナルストーリーに繋がっているのでしょうか?
【赤根監督】
そうですね、今回オリジナルストーリーにしようとしたのは、ゆうきさんが作っている「鉄腕バーディー」の世界観をより視聴者の方にダイレクトに発信したいな、受け取ってもらいたいなと思ったからです。
原作の「バーディー」は、ちょっとコア・ターゲットというか、ハイ・ターゲット向きになっていると思うんです。どうしても大人のキャラクターにフォーカスされがちで、つとむ君の生活の描写とかがどんどん少なくなっているんですよね。
自分としてはもう一回つとむに戻したいなと。そのことによって本来「バーディー」が持っている世界観を表せるんじゃないかなと。
それと、アニメと漫画っていうのは、似たジャンルだって言われるんですけれども、実際、表現媒体としては、似ているようでかなり違うものなんです。アニメーションにはタイムライン……時間軸があるんですよね。漫画っていうのはページをめくるスピードが読者に任されているんですけれども、アニメの場合、時間軸はフィルムの時間軸そのままじゃないですか? 観ている人はそれを強制されるわけです。
だから原作のコマをそのまんまアニメでやるのではなく、演出論や表現方法、物語の構成方法などをアニメーションに合ったものにしていってあげないと、原作のテイストが出ないと思い、こちらの方でストーリーやキャラクターをアレンジさせてもらっているんです。
──以前の「ノエイン もうひとりの君へ」や「ジーンシャフト」では原作も担当されていらっしゃいますよね? 今回のように原作があるものと、原作からご自身で起こすもののどちらがやりやすいですか?
【赤根監督】
どちらも良いところ、悪いところがありますよね。自分でオリジナルをやる場合は、新しいキャラクターを創造するっていう面白さはあるんですけど、キャラクターのバックボーンから性格まで、全てを作っていかないとキャラクターを動かせないんです。そこがものすごく大変なところであり、苦悩するところですね。「もう夜も寝られない!」みたいな感じになっちゃったりします。(笑)
でも、原作ものだと、つとむとか夏美とかバーディーというゆうきさんの中で作られたキャラクターが既に存在しています。例えば、ストーリーを作る中で、「つとむはこういう場合どういう風に考えるかな?」って迷うとするじゃないですか? そんな時、原作を読んで、キャラクターを咀嚼すればわかるんですよ。「つとむってこういう子だから、こういうシチュエーションでこう動いてくれるんだな」っていうのが自分で悩まなくても比較的簡単に想像が付く、というところがありますよね。その辺はとても助かってます。
あとは映像ですね。原作があるものだと、「どういう映像にするか」っていうところにも集中できます。
マンガだと、アクションシーンでもコマの止め絵ってあるじゃないですか? アニメーションではそれを動かしていくわけですよね。「じゃあどういう芝居付けをすれば、バーディーがより魅力的に見えるか」っていう……レイアウトなりアクションなり演出なりに集中できるっていうのはあります。自分は映像クリエイターの端くれだと思っているので、映像作りに集中できるっていうのは、とても面白いですね。
「鉄腕バーディー DECODE」では、アニメーターとのコミュニケーションを深めて、バーディーの立ちポーズ一つから、走ったり飛んだり……といったアクションについてまで、ちょっと変化を加えつつ、細かい部分を煮詰めていけたかな、と思います。
特に1話なんかはデザイナーと納得がいくまで詰めていったので、かなり面白いものができたかな、と思います。けっこう満足しています。
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