二つの異なる世界が同居した、懐の深いカメラ
── 最後に、D3のいいところと悪いところを端的に挙げてもらいますか。たとえばD300には「イメージセンサークリーニング」機能があるけど、D3にはないよね。
草野 ローパスフィルターに付くゴミの修正は大変。サッカーで使用しているとき、レンズの絞りは開放に近いからゴミがあってもボケてて判別しづらいけど。商品撮影とかで使用していればF16なんて普通に使うでしょ、そうしたらフィルターがホコリだらけなのがわかる。もっと簡単にフィルタークリーニングできる機能とか用品とか出てこないかな。ニコンからクリーニングキットはでているけど仕事が立て込んでいるときは、あんな作業をじっくりやっている暇なんてないからね。できれば何かもっと気軽にワンタッチでゴミを取り除ける方法があるといいと思うよ。
気に入ってるのは質感と絵作りの良さ、特に14bit RAWはいい。不満なところは重いこと。車ってカタログでは車幅が数センチしか違わなくても、実際に運転席に座ってみるとすごく大きくなった印象になるでしょ。例えば、車幅が169cmから172cmになると、たった3cmでも恐ろしくでかくなった気がする。同じように、カメラも100g違うとものすごく違う。1分、2分じゃなくてずっと握り締めているからかもしれないけど。D3に24-70mm付けると2kgを軽く越すからね。このあいだ前かがみで撮ってたときに背中が痛くなったし。
── フルサイズに対応したレンズが必要になるからシステムとしては重くなるよね。草野さんはスタジオ撮りもやってるけど、そのときは14bit RAWで撮るでしょ。
草野 うん、ハイライトのノビが全然違う。例えばネイルアートで指を撮るじゃない。現像ソフトのサムネイルの時点で違うからね。「えっ」と思うほど。肌をギリギリまで明るくして撮るんだけど、すっとした透明感がある。表現はEPNに近いね。絹のようなと言うとほめすぎだけど、これを見るとJPEGのハイライト部の階調性がダメだってのがよく分かるよ。D2xの12bitのときはそれほど差を感じなかったけど。
ISO 6400の8bitJPEGとISO200の14bitRAWという異質な世界が同居しているのがこのカメラの懐の深さだと思う。車で言えば、トラクターとスポーツカーが両立してる感じ。何でも取れるカメラだなと。14bitRAWでゴルフクラブみたいな光り物を撮影した場合でも、ハイライトが飛んでる感じに見えないぐらいトーンが残る。このへんがD2Xとの差じゃないかな。