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EX90の上位版となるカナル型

【レビュー】 3万円のイヤホン、ソニー「MDR-EX700」を聴く

2007年09月18日 22時00分更新

文● 高橋敦

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EX90とは音の方向性が異なる


 EX90との音質の違いもまとめておこう。EX90ユーザーなら、EX700はEX90と同系統の音調で音質を向上させたものなのか、それともEX90とは音の傾向が異なるのかといったところが気になる人も多いだろう。その点にフォーカスして改めて比較試聴し、表にまとめてみた。

曲名 EX90 EX700
Don Friedman VIP Trio「Timeless」 ウッドベースの重みや厚みなど音の強さはEX700に譲る。シンバルやスネアの響きの高さや奥行きから感じられる空間の広がりの自然さはカナル型で随一 ひとつひとつの音像の強さが印象的だが、全体としての整合性もある。音場空間の広がり方は一般的なカナル型(密閉型)に近く、EX90よりは窮屈
Dream Theater「Octavarium」 悪くはないのだが、そもそも自然な響きを生かした録音、マスタリングではないので、EX90の強みが発揮されない印象 中低域の厚みは明らかに勝っており、迫力が段違い。解像感、明瞭に聴き取れる音数についてもこちらの方が上と感じる
FAKiE「To The Limit」 響きまで素直に収めた録音で、開放的な鳴り方をするEX90との相性は良い。曲調とも合わさり、青空の下で歌っているかのような伸びやかさに近づく。ギターはスコンと軽快に抜ける 空まで突き抜けるような伸びやかさには欠けるが、声の肉感や弦の張りの強さでは上回る。音の到達製の高さというか、細かなニュアンスまで耳元に伝えてくる力がある。ギターはズバッとナタのようなキレ味

 両機の外観からは「開放型に近い構造のEX90」と「密閉型に近い構造のEX700」と見えるが、開放型と密閉型についてよく言われる音質傾向がほぼそのまま当てはまる結果となった。大雑把に言えば、圧迫感のない開放的な響きで空間性に優れるEX90、特に中低域で力感や厚みに優れるEX700となる。

 EX90を気に入っているユーザーがEX700の購入を検討する場合は「EX90とEX700では音調の方向性が異なる」ということを頭に入れておいたほうがいいだろう。



海外ハイエンド機に十分に対抗できる製品


 EX700は、カナル型らしからぬ装着感(iPod付属イヤホンなど一般的な形状のイヤホンの装着感との違和感が少ない)といった要素はEX90から受け継いでいる。EX90のその点を気に入っているユーザーは、そのメリットはそのままに総合的な音質向上を果たした上位機としてEX700を検討するのは正解だろう。

 海外製の同価格帯製品と比較した場合、描写の緻密さでは米エティモティック・リサーチ(EtymoticResearch)社の“ER-4”シリーズなど、バランスドアーマチュア方式のものに一歩及ばないが、大口径ダイナミック型ユニットならではの鳴りっぷりのよさが魅力だ。

 ちなみに一般論で言えば、ダイナミック型のユニットは、バランスドアーマチュア方式に比べてパワー感や帯域に関して若干有利だが、繊細でスピーディーな表現はやや苦手とする傾向にある。

 音質だけでなく、装着感の良さやコードの細さ、しなやかさなど、使い勝手の面でも、海外製品と比べて優位と思える。トータルで見て海外ハイエンド機に十分に対抗できる製品であり、そういった国内製品が登場したことは素直に喜ばしい。


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