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公式ガイドブックだけでは不十分!? PMP資格試験対策 最終回

最終回 合格への指針 得点源の確保と体系の理解

2007年07月06日 00時00分更新

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公式ガイドブックだけでは不十分!? PMP資格試験対策

エンジニアを中心にIT業界で働く人々の間で、プロジェクトマネジメントの国際資格「PMP(Project Management Professional)」の受験者が急増しています。受験者の多くは、PMP資格のバイブルとも呼ばれる「PMBOKガイド」という本を中心に勉強をしていると思いますが、PMBOKガイドからそのまま出題されるのは試験問題全体の一部にすぎず、合格には“プラスα”の勉強が必要となります。そこで、本連載では、主にその“プラスα”を取り上げ、プロジェクトマネジメントとPMPへの理解が深まる「特別講義」を週1回掲載します。

得点源を増やす! 論点が明確な問題を確実にものにしよう

 今回の連載では、PMP試験対策として数ある論点の中から、連載の前半はプロジェクトの「経済評価モデル」について、後半は「契約タイプ」について取り上げました。

 この2つを選んだのは、私なりの理由があります。

「論点がはっきりしているゆえに、短期間で確実な得点力がつきやすい。」これに尽きます。

 取り上げたこの両論点は計算問題が含まれており、内容も比較的明確です。この手の問題は理解できていないと、まったく歯が立たないものですが、逆に理解しさえすれば、確実に得点できるのです。

 競争試験ではなく、所定のボーダーをマークすれば合格できるPMP試験において、確実な得点源を増やすことはとても有利となります。

単純な論点の問題ほど難しい

 しかし、その逆もあるのがこの試験の難しいところです。 つまり、論点が広いゆえに、短期間ではなかなか得点力はつかない、というものです。

 たとえば、プロジェクトマネージャーとして望ましい行動についてや、計画の大切さを問うような設問は、素直にそのまま出題すると常識問題になってしまい、全員が正解してしまいます。そこで、これらの問題の多くは、シチュエーション問題(ある場面設定の下で「どうすべきですか?」という形式)として出題されます。問題の選択肢には、いずれも誤りと断ずるには無理なものが並んでおり、受験生を悩ませます。論点として当たり前で簡単なものほど、逆に得点は難しいといえるのです。

 こうしたものは、PMBOK全体を学習する中で、考え方が身につき、次第にPMBOKに沿った判断ができる(得点できる)ようになるものだと思います。

 試験対策としては、論点が明確で、比較的短期間の勉強で習得できるものでしっかりと得点を稼ぎ、これらのような難問に関しては、それなりの正解率でよしとする戦略も有り得るでしょう。

試験勉強のNGポイント“木を見て森を見ず”とは

 PMBOKが重用されている理由の1つは、その体系にあります。

 PMBOKは、プロジェクトマネジメントで必要とされる手続きやスキルをプロジェクトネジメント・プロセス(以下、プロセス)という単位に収め、体系づけたものです。

 プロセスの構成は、「インプット」と「アウトプット」、それとアウトプットを生み出すための「ツールと技法」で構成されています。さらに、プロセス同士がインプットとアウトプットを介してつながって、全体を構成しているのです。

PMBOKのプロジェクトマネジメント・プロセスの構成

PMBOKのプロジェクトマネジメント・プロセスの構成

 試験対策でも、まずは体系を押さえるということがとても重要になってきます。

 この連載で取上げた経済評価モデルや契約タイプは、数ある「ツールと技法」の中の1つにすぎません。こうした個別の論点を一つひとつ追いかけていくことも試験対策上は不可欠なことですが、決して「木を見て森を見ず」にならないように、必ず全体の中での位置づけを押さえた上で理解するようにしてください。

単なる暗記ではなく、理解が必要

「インプットやアウトプットを覚えるのに苦労しました」

 このような体験記を目にするたびに、違和感を覚えてきました。PMP試験は暗記試験ではないと思うからです。

 大切なことは、先に述べたように体系全体を意識しながら、プロセスの役割と他のプロセスとの関係を理解することです。

 確かに「インプットはどれか?」などの設問も少なからずあります。しかし、上記のことができていれば、この手の問題で4つの選択肢の中から正解を選ぶことは難しいことではありません。

 プロセスを遂行するためのもっともふさわしいものを選択すればよいだけのことです。インプットやアウトプット、ツールと技法を漏らさず挙げられる必要はないのです。

 また、PMBOKガイドは、PMP試験のバイブル的な位置づけであると説明しましたが、すべてを無批判に暗記しなければならないほど、確立されたものではありません。

 たとえば、「専門家の判断」というツールと技法があります。意味はほぼ日本語のとおりで、専門的知識を有する人の判断を仰いだり、知見を活用することを意味します。多くのプロセスに含まれているのですが、なぜ「専門家の判断」が他の重要なプロセスに含まれていないかについての明確な説明は誰もできません。

 この程度の矛盾は、他にもいくつもあります。PMBOKガイドには多くの執筆者が関わっていますから、記述が精緻に統一されてはいないということなのかもしれません。

 試験勉強では、 あまり気にせず、時に割り切って読むことも必要です。もし、こうした区別までも試験で問われるとなれば、それこそ丸暗記するしかないのですが、そこまでしなくても合否の大勢には影響しないということだけはいえるでしょう。

最後に

 PMBOKはマニュアルではなく、プロジェクトを成功に近づけるための、いわゆるレシピです。試験の合格後、実務にどう適用していくかは、これを学んだ皆さんの問題です。 また、PMPを名乗ることで、周りからは大きな期待がかけられることも忘れないでください。

 「理解の深さ」がPMP試験の合否を左右するとともに、現実のプロジェクトにフィードバックを可能にすることを連載の最後のメッセージとしたいと思います。

今回のポイント
・PMP試験は暗記試験ではない
・論点が明確な部分の理解を進めて、得点源を増やす
・PMBOKの体系を押さえることが大切
隈元辰浩

著者 隈元辰浩
ブリスポイントネットワーク代表取締役。PMP試験対策講座や生産マネジメントゲーム研修など、プロジェクトマネジメントに関するものを中心に、さまざまなビジネス研修や講座を行なう。


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