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日本でのスタートは2008年後半!?――インテル、WiMAXの現状を説明

2007年04月09日 20時55分更新

文● 編集部 小西利明

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インテル(株)は9日、東京都内にて記者説明会を行ない、高速無線データ通信技術“WiMAX”についての概況を説明した。規格化のプロセスと現状、通信速度や周波数帯、法制面の対応などが説明され、日本では2.5GHz帯を使うサービスが2008年後半頃には開始されるとの見方が示された。

WiMAXの概要は、同社研究開発本部 シニアリサーチャーの庄納崇(しょうの たかし)氏により行なわれた。庄納氏はまず、WiMAXと第3世代(3G)携帯電話やWi-Fi(無線LAN)との関係について、「それらと共存する規格であり、1つの技術(この場合WiMAX)がすべての用途に適するわけではない」と述べた。そのうえで、モバイル環境でもADSLやCATVインターネットに匹敵するブロードバンドインターネット接続への期待が高いのに対して、それを実現できる規格はWiMAXだけであるとしている。また、それを裏付けるデータとして、WiMAXの標準化推進団体である“WiMAXフォーラム”のメンバーが、2004年の発足当時から10倍近くに拡大し、特にサービスプロバイダーの数が大幅に増えているというデータも示した。

庄納崇氏

インテル 研究開発本部 シニアリサーチャーの庄納崇氏

WiMAXと携帯電話やWi-Fiの位置づけ

WiMAXと携帯電話やWi-Fiの位置づけ。競合ではなく、相互に補完し合うとされている

まずWiMAXのサービス需要の見通しについては、固定アクセス(有線LANや光ファイバーに変えて、WiMAXを通信回線に利用する)、ポータビリティー(可搬型)、モビリティー(移動体)の3点に分けての説明がなされた。IEEE 802.16-2004やIEEE 802.16e(モバイルWiMAX、16e-2005とも呼ぶ)を用いる固定アクセスはニーズが限定的としたうえで、モバイルWiMAXを用いるポータビリティー用途については、日本の場合は有線接続に変わるインフラとして、地方などでのデジタルデバイド解消に役立ち、需要が期待できるとしている。最重要なのは移動体用途で、携帯電話のように基地局1基で広域をカバーできる点から、大きな需要が期待できるとしている。

応用分野別に見たWiMAXの展開例

応用分野別に見たWiMAXの展開例

モバイルWiMAXの速度は最大63Mbps!

“モバイルWiMAXの性能”と題したパートでは、WiMAXフォーラムが公開しているモバイルWiMAXでの通信速度についての説明が行なわれた。10MHz分の帯域を1ユーザーで占有できる状態では、ダウンリンクのみで最大31.68Mbps、アップリンクのみは最大14.11Mbpsの速度を実現できるという(それぞれ片方向のみの場合)。複数のアンテナを送受信に使う“MIMO”時は、ダウンリンクのみ2倍の速度が実現可能で、この場合ダウンリンクのみで最大63.36Mbps、ダウンリンクとアップリンクの帯域を2:1の割合で使用した場合でも、最大でダウンリンク40.32Mbps、アップリンク5.04Mbpsでの通信が可能という。

モバイルWiMAXのダウンリンクとアップリンクの通信速度

モバイルWiMAXのダウンリンクとアップリンクの通信速度。MIMO時のダウンリンクのみでは、最大63.36Mbpsもの速度が出ている

携帯電話の無線データ通信技術と比較した、周波数利用効率のグラフ

携帯電話の無線データ通信技術と比較した、周波数利用効率のグラフ。長いほど高速で効率が良い

また庄納氏は、1Hzあたりの通信データ量で周波数利用効率を示したデータを披露し、モバイルWiMAXの通信効率の高さをアピールした。それによると、3.5G携帯電話などで使われるHSDPA方式が0.8bps/Hzに対して、モバイルWiMAXでは1.09~1.87bps/Hzにも達するという。

今後の規格化や拡張についても説明された。まず固定アクセス用のIEEE 802.16-2004と、移動体向けの要素を追加する補足規格としてのIEEE 802.16eが2005年までに規格化されている。ただし、本体と補足で分かれている現状には分かりにくい面があるので、これらをひとつにまとめた“IEEE 802.16-2007”を作ろうというプランも検討されているという。さらに次世代の規格として、“IEEE 802.16j”の規格化と“IEEE 802.16m”の検討が進められているという。

IEEE 802.16jは、既存の無線データ通信規格よりも高い周波数帯を使うため、地下やビルの影など通信ができない不感地帯ができやすいIEEE 802.16eの問題点の解消を目指す規格である。不感地帯解消の技術としては、端末同士が通信を中継することで接続範囲を拡大する“マルチホップ”の技術を利用する。今年末までの規格化を目指している。IEEE 802.16mは16eとの後方互換性を保ちつつ、より高速化を図る次世代の無線データ通信技術と呼べるものだ。こちらは今年第1四半期に規格化が始まり、2009年末までの規格化が期待されている。

WiMAXを構成する規格の今後

WiMAXを構成する規格の今後。不感地帯の解消技術や高速化が計画されている

日本での周波数割り当てとサービス提供は?

WiMAX関連の話題は以前から豊富なものの、日本ではサービス化の前提となる周波数の割り当てすら、まだ行なわれていなかった。そのため実験レベルの話が中心で、いささか現実味にかける話題という印象もあった。しかし2.5GHz帯を用いる通信に関しては、2006年12月に情報通信審議会から“2.5GHz帯を使用する広帯域移動無線アクセスシステムの技術的条件”の答申が出て、ようやくどの周波数帯がモバイルWiMAXに使えるのかが明確になった。

モバイルWiMAXに割り当てられるのは、2535MHzから2630MHzまでの周波数帯であるが、95MHz分をすべてデータ通信に使用できるわけではない。2535MHz以下を使う通信衛星“N-Star”との干渉防止用(ガードバンド)などに20MHz分、2630MHz以上を使う“モバイル放送”(モバHO!)の衛星とのガードバンドに5MHz分の帯域を取られる。そのため実際に使えるのは2555~2625MHzの70MHz分となる。さらに事業者間で互いの通信が干渉しないように、最低1MHz分のガードバンドが必要となる。

モバイルWiMAXに使える周波数帯と、ガードバンドの概要

モバイルWiMAXに使える周波数帯と、ガードバンドの概要

現在のスケジュールでは、2007年第2四半期に総務省から周波数帯割当計画を含む免許方針の案が示され、モバイルWiMAXの事業者公募を行なう。公募に申請した事業者に対する実際の割り当ては同年第3四半期から行なわれる予定で、割り当てを受けた事業者が実際にサービスを開始するのは、2008年後半になると見られている。インテルでも2008年を目標に、ノートパソコンやUMPC、携帯電話機へのモバイルWiMAX機能の内蔵化を目指すとしている。また、国内の携帯電話事業者4社はいずれも、モバイルWiMAXの実証実験用無線局の免許申請を行なっているなど、サービス化を前提とした取り組みが進んでいる。2008年後半には、モバイルWiMAX機能内蔵のノートパソコンで、移動中でもブロードバンドインターネット接続を利用できるようになるかもしれない。

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