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勝つための10のポイント

中国オフショア開発、勝ち組の証言(中編)

2007年04月18日 17時00分更新

文● 松本佳代子

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(7)通訳を介さない 〜言葉の誤解を生まない〜

 日本語でコミュニケーションを取れるPMとPLがこんなにも重要なのは、ITスキルのない一般の通訳を通すと大いに誤解が生じるからだ。

 しかも毎日の連絡を取り合うときに、いちいち通訳を通してはいられない。通訳を通さなければならないと、面倒なので自然とコミュニケーション回数が減ってしまい、意思の疎通が難しくなる。

 かといって、お互いに外国語である英語なら大丈夫かというと、どちらかに英語のネイティブがいないと、さらに複雑に誤解が生じるので難しい。



(8)人を大切にする 〜日本式接待で仲良く〜

 中国のITエンジニアたちは超エリートで上昇志向も強いため、欧米よりも離職率が高い。開発の納期が近づいたので残業や土日出勤を強要したら、契約期間が終わったと同時に転職してしまったという失敗例も多い(プロジェクトの途中で不義理をしていなくなることはないが)。

「これをがんばれば休んでいい」などの言い方で理解を得て、がんばった後にはねぎらいの態度を取ることが大切。アジェンダでは欧米企業にはないやり方で誠意を見せるため、一緒にカラオケを楽しんだり、GRESSO発売後にはキーとなっているPMを特別に日本に招く予定だという。

 「日本に興味を持ってくれる人を大切にしなければ」と千葉氏。プロジェクトの成功/失敗の明暗を分けるのは、やはり人材なのだ。



(9)セキュリティには要注意 〜一人ずつと秘密保持契約も〜

 アジェンダのオフショア開発先の“浪潮(ランチャオ)世科信息技術”は、マイクロソフトの戦略パートナーなので、MSスタンダードのセキュリティレベルをクリアしないと仕事にならない。そういう点では、そこらの日本企業よりよっぽど厳しい。

 ただし、社員が会社を辞めた後のことも含めて、プロジェクトの参加者全員とランチャオの間で秘密保持契約を結んでもらい、さらにランチャオとビジネス・インフィニティ、ビジネス・インフィニティとアジェンダという間で機密保持契約を結ぶという体制を整えた。



(10)成功している他社から学ぶ 〜勝ち組ルートを探す〜

 以上、アジェンダが始めての中国オフショア開発で成功した要因をピックアップしてみたが、最も重要なのはビジネス・インフィニティのようなオフショア開発の経験豊富な企業の協力が得られたということだろう。

 ビジネス・インフィニティは中国オフショア開発を約4年前から始めており、成功事例も多く、ノウハウも貯まっていた。また、NTTデータやマイクロソフトの資本が入っていることから、現地の優良企業に強いネットワークを持っていた。

「いきなり自分たちだけで中国に行ったとしても、ランチャオほどのレベルの企業を探し出せなかったでしょう。公的機関が友好都市の企業を紹介することもありますが、そちらのルートではあまり成功した話を聞きません」と千葉氏。

 優良企業との強いパイプと、成功のノウハウを教えてもらうことが成功への近道なのだ。これこそが、一番大事なのかもしれない。


(後編に続く)


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